所有者の休職
【本文】
所有者を休ませれば入口が開かないという不安が広がった。
封鎖率九十六%という数字だけを見れば、災害は終わったように見える。だが避難所では、食事、水、薬、睡眠、葬送が一日も止まらない。
澪は第二所有者として避難通路を担当し、入口の日常操作は安西と奈々の承認表へ移す。緊急解放だけ湊の《帰還標》を残す。
記録には成功と失敗を分けず、時刻、担当者、中止条件、翌日へ残る負担を書く。作業できない者の配給を減らさず、代行者だけへ負荷を集めない。
湊の寝床から無線と管理票を外し、面会は家族と医療担当に限定した。罰や失権ではなく、四十八時間の休職として掲示する。
世界の声は早い回復や所有権交換を勧めたが、町は即決しない。本人同意、地上の手順、再検査を先に置く。
町は所有者一人が倒れれば止まる構造を、自分たちの手で一つ減らした。
代表会議は結論だけでなく、分からない点と見直す時刻も掲示した。勝利の後だからこそ、疲労を勇気、沈黙を同意、空欄を余裕に読み替えない。
設備と人間のどちらかを使い潰して日数を延ばす方法は選ばなかった。
緊急停止権まで奪えば不安を強めるため、《帰還標》の発動条件だけを紙で確認した。湊が眠っている場合は澪、安西、医療担当の三者で避難解放を行う。休職期間を延ばす判断も湊本人ではなく、小春と代表会議が症状を見て決める。
変更後の担当者は、実行したことだけでなく、見送った作業と理由も次の交代へ伝えた。誰かが戻れば元どおりになる暫定措置ではなく、その人が不在でも続く手順として試す。
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