四つの診察列
【本文】
病院へ患者を集中させれば、通常の診療と三避難所の急患が止まる。
封鎖率九十六%という数字だけを見れば、災害は終わったように見える。だが避難所では、食事、水、薬、睡眠、葬送が一日も止まらない。
由香は黒線、外傷、疲労、睡眠不足の四列を作り、重複する者は最も危険な列から診た。氏名ではなく受付番号を用いる。
記録には成功と失敗を分けず、時刻、担当者、中止条件、翌日へ残る負担を書く。作業できない者の配給を減らさず、代行者だけへ負荷を集めない。
中央隊員三人も診察を求めた。所属で後回しにせず、同じ観察基準と隔離手順を適用する。薬の使用量も中央側へ返した。
世界の声は早い回復や所有権交換を勧めたが、町は即決しない。本人同意、地上の手順、再検査を先に置く。
治療は味方への褒美ではなく、同じ山から戻った者を生かす共通手順になった。
代表会議は結論だけでなく、分からない点と見直す時刻も掲示した。勝利の後だからこそ、疲労を勇気、沈黙を同意、空欄を余裕に読み替えない。
設備と人間のどちらかを使い潰して日数を延ばす方法は選ばなかった。
受付番号の対応表は由香と病院事務の二人だけが持ち、中央への報告は人数と症状に限定した。四列を移る患者は新しい番号にせず、治療履歴が途切れないよう同じ票へ追記する。待ち時間の長い者へ水と横になれる場所も用意した。
変更後の担当者は、実行したことだけでなく、見送った作業と理由も次の交代へ伝えた。誰かが戻れば元どおりになる暫定措置ではなく、その人が不在でも続く手順として試す。
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