多分起きたのは12時くらいだ
ゆっくりと目を覚ます。
太陽は僕の真上に来ている。真昼まで寝ていたらしい。
『ドンドン!』
『グオオオオオ!』
思いの外、まだアムムトとの戦いは続いていた。
僕は、道のど真ん中でいい加減邪魔な水晶柱を消滅させ、街に降り立った。
やっぱり、多かれ少なかれ街は損壊している。
何より今は天空都市の状態だ。
住人たちは屋内に避難しているため、人気は殆どなかった。
時たま現れるアムムトの残党をキルコマンドで狩りながら、街の端に行ってみる。
地上を見下ろすと、まだ数多のアムムトが大地を埋め尽くしていた。大移動は数日間かけて行われるらしい。
「熱!」
「俺様特製アムムトの姿焼だ!お前、能力使うと腹減るんだろ?」
ナイベさんが、後ろからアムムトの丸焼きを二個持ってやってくる。
「あ…ありがとうございます。」
ナイベさんが、僕の隣にドカリと座った。
相変わらず全身を鎧で包み込んでいて、アムムトの返り血も見受けられた。
『ガシャン!』
重そうな音をたてて、ナイベさんの頭鎧が外れる。
「うむ!美味いな!」
どうやって食べていいのか分からず、何気なくナイベさんの顔を見てみる。
「わ!」
「ん?なんだ?俺様の顔に何か付いてるか?」
ライオンだ…
ナイベさんの顔は、動物園で見かけるような雄のライオンそのものだっだ。
「なんだ、獣人を見るのは初めてか。俺様に惚れるんじゃねえぞ?」
ナイベさんは丸焼きを、骨も皮も無視して丸ごと平らげてしまった。当然参考にはならない。
僕は恐る恐る、アムムトの肉に歯を突き立てる。
「あ…!」
美味しい。皮も柔らかく、骨もクッキーほどの歯ごたえだ。肉は解けるような歯ごたえで、内臓に至っては肉汁と間違えるかと思った。そうだな…叔父さんが昔作ってくれたハンバーグを思い出す。
「これって…」
「アムムトの肉は、普通の方法じゃ食えんくらい硬いからな。美味さの秘訣は、防御力ダウンをかけたまま倒す事だ。」
本当に丸焼きらしく、ほのかな血の香りもいいアクセントだ。
「美味しいです!」
「だろ?それに栄養もあるんだぞ!お前はチビだからな、しっかり食えよ!」
「…そう言えば、他のみんなはどこ?…ですか。」
「もう残党も片ずけて、今は復旧作業だ。よし、俺様も行くか!」
いつの間にか、僕もナイベさんみたいに丸焼きを全部を平らげてた。
「?」
向こうの方に誰か座ってる。女の子かな。
「そんなとこにいたら危ないよ。ん?」
よく見ると、地上に向かって釣り糸を垂らしてる。
「えっと、何してるの…?」
「し!」
かなり集中しているらしい。
よく分からないが、傍で見ている事にした。
『ギイイイイ!』
「よし…」
釣竿が強い力で下に向かって曲がっている。女の子も立ち上がって、力いっぱい竿を引いた。
『………』
音もなく釣り糸の先が振り上げられる。よく見ると妙な物も一緒に上がる。
え…?魚…?
「やった!釣れた!」
女の子は、その艶のある紺色をした魚の様な生き物を目一杯持ち上げる。
「こんにちは。えっと…それは?」
「雲魚。ヤオハライって種類のね。」
屈託のない笑みを浮かべながら、ヤオハライ…の首元に小刀を一刺し。
「ようし…皮は売ってぇ、あとは燻製にしちゃお!」
「どこから釣ったの?」
「雲の中。逆に他にどこにいるのさ。いつもはエドクラウ山に登って釣ってたんだけど、朝起きたらびっくり。その手間が省けちゃった。良かったぁ、あそこに一人で行くの苦手だもん。」
僕よりも年下らしい。
腰まである長くて銀色の髪の毛を揺らしながら、その雲魚とやらを担いで立ち上がる。
「ところでお姉ちゃん、誰?」
「えっと、僕はルー。冒険者ってわかるかな?」
「うん!」
この小さな体でエドクラウ山に通うなんて…並みの冒険者でもソロ潜入は自殺行為だ。
「ねえお姉ちゃん、ジャックって人しってる?」
「ええっと、どっかで聞いたことあるような…」
「良かった!その人が私のパパなんだ!早く帰ってこないかなぁ…。」




