計画は十全じゃなきゃ
「ほお。意外と早かったな。で、どうするんだ?
僕は水晶柱の上に、ギロマさんとファコラさん、それとナイベさんを呼んだ。
一番最初にナイベさんが口を開く。
「おい、本当にあいつらを一掃できるのか?」
「無理。」
無理だ。今の僕の体力的にも、時間的にも。
「おい…じゃあ、」
「別に倒す必要は無い。」
「はあ?」
ギロマさんが静止する。
「おいおい、お前は人の話を黙って聞けねえのか!」
「…っ!」
僕は深呼吸をして、計画に変えた思いつきを話す。
「倒せないなら、街を動かして回避するしか無い。」
「!?」
慌てた様子でファコラさんが喋る。
「待って待って!今なんて言ったの?」
「街を移動させる。一時的にだけど。」
「そんなことが出来るの!?」
僕はコマンドで呼び出した道具を見せる。4本の地面に刺すマーカーだ。
「これを使うんです。」
僕はこれを範囲キーと呼んでいる。
「このうちの4本を転送元を囲む様に四角くに刺して、空間ごと転送させる。転送先については、僕が事前に土台を作っておく。みんなには、このマーカーで街を囲って欲しいの。」
ファコラさんがおどおどと聞く。
「ルー…貴方一体…」
ギロマさんが笑いながら止める。
「今はそんな話は無しだぜ。はっはっは。久々に楽しそうな依頼じゃねえか!」
ナイベさんが不安そうに聞く。
「…でも、あと一人足りないぞ。」
「それは大丈夫。」
それと同時に、最後の一人が二本の大槌を奮ってアムムトを屠り現れた。
「やあ。西側の援護に手こずってしまってね。 ルーから話は聞いてるよ。」
「ギルドマスター!?戦えたんですか!?」
「人相だけで採用されると思った?」
ファコラさんを軽くあしらって、ギルドマスターは早速マーカーを一つ手に取る。
「ギルドマスターは教会、ファコラさんは岩場、ナイベさんはギルドの広場、ギロマさんは議事堂をお願い。」
「ああ。楽勝だな。」
みんな一つづつマーカーを持って、それぞれの場所に向かっていった。
僕はキーボードを出して、久し振りに大規模なコマンドを打ち始めた。
ーー ファコラ ーー
アムムトの攻撃部隊を、あたしは鎖で倒し続けた。
「邪魔!チェーンフィールド!」
近くのアムムトは、私の周り円状に吹き飛んだ。
敵がはけた隙に、ルーが手品みたいに出した水晶製の針を刺す。
『ウィーン…』
聞いたことの無い不思議な音がして、針はほのかに光を放つ。
ルーインは…本当に特別みたいだ。あたしとは違って…
ーー ナイベ ーー
「はあ!」
数がいくら集まったって、俺様に勝てる訳が無かろう!この爬虫類共め!
このなよっちそうな針は絶対に守って見せる!
「やあ!」
と、あいつの…ファコラの方に結構な数の敵が向かうのが見える。
俺様はすかさず…助けに行くような事はしない。俺様はあいつを信じてるからな。あいつも俺様を信じてる。
だから…絶対に此処を離れる様な事はしない!
ーー ギルドマスター ーー
あの子は本当に凄い。あの子は敵勢の緩やかな場所をナイベとファコラに、前線に近い場所を僕に、敵の密集する場所をギロマに割り当てた。
あの子の特別な部分は、何も能力だけでは無い様だ。
子供とは思えない、まるで100戦練磨の英雄の様な気迫が、それを物語っていたんだ。
「よいしょ!」
とは言え、防御力の高いアムムトは、僕の双剣とは少々相性が…
「あれ?」
思いの外敵は直ぐに倒れた。
そして直ぐに、僕に防御力無視のバフがかかっている事に気づいた。
ーー ギロマ ーー
右手には酒、左手には使い古しの杖。アムムトの亡骸に腰掛けながら月見酒か。
幸い、先兵の一隊を全滅させてからは、奴らは此処には寄り付かなかくなった。
ルーとは、初めて会う気がしなかったな。
親父の日誌にも、同じ名前の奴が出てきたからかも知れないな。
『オオオオオオオ!』
向こうの方に山の様な影が見える。
アムムトの移動で舗装された道を歩く巨獣、ヒルボだ。
「丁度良い。酔っ払いのおっさんが相手してやるよ。」
おっと。こいつを地面に刺すんだな。




