炎狐
ここは負傷者の治療のために設置されたテント。
「ダリヤ!アナタも来てたのね!」
寧々の声に反応し振り返るダリヤ。
「先輩……!?うっ、うっ、先輩、来てくれたんですね」
寧々の顔を見るなり、大粒の涙を流すダリヤ。
「うわぁ~ん、せんぱ~い」
「まさかアナタもニューモート派兵に来てたなんて……怪我をしてるようだけど、無事で良かった」
ダリヤは左腕に包帯を巻いてはいるが、それほど大きな怪我では無かった。
「……いえ……ビリーさんが私を庇って……あんな重傷を負ってしまいました」
ボロボロと涙をこぼしながらも、寧々の目をシッカリと見据え顛末を話すダリヤ。
「……そうだったのね。大丈夫よ、ビリーはあの程度の怪我じゃ折れないわよ。それに、アナタはビリーと私の妹みたいなものよ。同じ状況なら、私も同じ事をしていたわよ」
ダリヤの手をギュッと握り、落ち着かせる寧々。
「それと、キュウちゃんが重傷って聞いたから様子を見に来たのだけど……」
「はい、スージーさんならコチラです。付いてきて下さい」
ダリヤに連れられ、スージー・9の元へと案内される4人。
「失礼します。先輩……いえ、音之羽特隊員と、そのお仲間が面会に来ています……ってスージーさん、何やってるんですか!ダメですよ寝てなきゃ!」
一同の目に飛び込んできたのは、坐禅を組むスージー。
そして、その目の前には燃え盛る火の玉が浮いていた。
鎖玖の炎狐・《スージー・9》、隠密部隊の中隊長を務める八輝星。
オリジン四戒のロッテン・みかん、元隠密の中隊長のペトリコール・フロウとは、まるで姉妹のように親しい仲であった。
「……ん?あぁ、ダリヤか。大丈夫、問題ないわ。それと……寧々と透流太、それにナンバーズの双子ちゃんたち、お久しぶりね」
「ちょっとキュウちゃん!アナタ、重傷じゃなかったの!?」
「えぇ、でももう大丈夫よ。奴らを……このままタダで済ます訳には行かないからねぇ」
炎がより一層激しく燃える。
「スージーさん、テントが燃えちゃう!落ち着いて、落ち着いて下さい」
思っていたよりも元気そうなスージー・9を見て安心する寧々。
「良かった……フロウに何て言ったら良いか考えてたのよ~」
「フフフ、ワタシが重傷なんて言ったら、みかんもフロウもすっ飛んで来ちゃうかもね」
「へぇ~、3人は仲が良いんだな」
「そりゃもう、いつも3人一緒だったからね」
「慌てて連絡しなくて良かったわ~。ねっ、キュウちゃん」
*****
それと同時刻——写世。
ニューモートへ派兵していた隠密が数名、写世へと帰還した。
「大隊長……敵の奇襲で……みんな襲われて……スージー中隊長と、ビリー中隊長が重傷です」
「「「「!?」」」」
そして、そこに居合わせたロッテン・みかんは、その報告を受け、我を忘れて取り乱す。
「キュウちゃんは!キュウちゃんは無事なの!?」
「慌てるな、みかん!……報告、ご苦労だった。至急応援を向かわせるから、お前たちは少し休め」
サニーの指示のもと、急遽援軍が組まれる。
「それならまず、かの地へ連絡してジョーとリリーを向かわせる。二人の足なら一日もあれば着く距離だしな……となると写世からは……」
サニーの指示を待たずにロッテン・みかんが名乗りを上げる。
「アタシが!サー兄、アタシが行く!」
「待てみかん。そんな精神状態で突っ込んだら、かえって足手まといだ。まずは落ち着け」
「だって……だってキュウちゃんが……」
オロオロと取り乱し、今にも泣きそうなみかんを見て、ソフィアが手を上げる。
「サニー、私が一緒に行くわ。良いわよね?」
「ったく……オレはここを動く訳にはいかん。ソフィア、行ってくれるか?」
「もちろん!みーちゃん、アレを出すわよ」
*****
直後、かの地へと緊急の連絡が飛ぶ。
ビィーーー!ビィーーー!
「こちらサニー。アッシュ、緊急事態だ。ジョーとリリーを至急呼び出してくれ」
サニーからの連絡を受け集まる一同。
「どうしました、大隊長。緊急事態って、なんかあったんですか?」
「ジョー、リリー、至急ニューモートへ向かってくれ。大至急だ!ビリーとスージーがやられた」
「はぁ!?ビリーがやられたって……そんなまさか……」
その通信を横で聞いていたフロウが割って入る。
「大隊長、横からすみません!キュウちゃんが……スージー・9がやられたって、生きては居るんですよね!?」
「大丈夫だ、命に別状はない……が、重傷らしい」
「そんな……だったらアタシも!アタシもニューモートへ行きます!」
「ダメだ!かの地の守りはどうするんだ!」
今度はそこへアルカイド・ラスティが割って入る。
「よぉサニー、横からスマンな。こっちにはオレが居る。退役したとは言え、ちったぁ頼ってくれても良いんじゃね~かい?それによ、特殊個体のアイツ……龍夫って言ったか。ヤツも居るし、安心しな」
「ちょっと、ちょっと、大隊長。重傷者が出てるんなら、それこそオレの出番でしょうが。オレも一緒に行かせて下さい」
一呼吸置いてサニーから指示が飛ぶ。
「ジョー、リリー、フロウ、ニューモートへ向かってくれ。それとアッシュ、オマエの足では追いつかん……アレを出せ、許可する」
こうして2拠点から援軍が送られた。
かつて無い戦いが待つニューモートへ。
「ほ~んと、慌てて連絡しなくて良かったわ~」
「でも、安心は出来ないわよ。ニューモートには……」
—to be Next world—




