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高倉くんのカワイイを応援したい!  作者: 志熊みゅう
最終章 やっと見つけた私の『好き』

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2. 楠くんのアドバイス

 なんとなく教室に身の置き所がないような感じがして、トイレへと席を立った。


「染谷さん、ちょっといい?」


 トイレから教室に戻ろうとすると、楠くんの声をかけられた。いつも柔和な楠くんが、今日はなんだか少し真剣な顔つきをしていた。


「うん、大丈夫だよ。」


「――染谷さんって高倉のこと好きなの?」


「いきなりどうしたの?楠くん。」


 紬も楠くんも、今日はみんなそればっかり聞く。


「余計なお節介かもしれないけど、俺ちょっと他人事とは思えなくて。」


「他人事?」


「いや俺さ、陽菜が和田と付き合い始めた時すごい後悔したから。――俺と陽菜は家が近くて、物心ついた頃から一緒によく遊んでたんだ。思えばその頃から陽菜が好きだったのかも知れない。それでなんか勝手に陽菜はずっと俺のそばにいてくれるって思ってた。」


「……楠くん。」


「でも中学に入学して、ダンス部に入部した陽菜は学校中の人気者で、いつのまにか俺なんかが近くにいるのが、申し訳ないような存在になっちゃった。」


 楠くんが、深くため息をついた。


「それでも、陽菜は今まで通りだった。だけど俺の方が、陽菜に遠慮するようになっていった。――それで、いつの間にか陽菜と和田が付き合い始めて、余計距離が離れちゃって。」


「うん」


「でも、和田と一緒にいるようになって、陽菜がいつもみたいに――天使みたいに笑わなくなった。そんな陽菜をみて……俺、悔しくて悔しくて。どうして、陽菜のとなりにいるのが俺じゃないんだって。」


 思わず、息をのんだ。


「だから、陽菜が和田と別れたって聞いて、チャンスだと思って告白したんだ。高倉のメイクで自信がついたっていうのもあるけど。」


「……高倉くんのメイクって、人を変える力があるよね。」


「染谷さんも、もし高倉のことが好きなら、ちゃんと伝えないと――A組には結構あいつのファンがいるんだ。あの子たち、本気っぽいよ。俺、染谷さんには、自分と同じような後悔をして欲しくない。」


 高倉くんのファン、さっき話してたツインテールの子かな?背筋にゾッと寒気が走った。


「……うん、考えてみる。ありがとう、楠くん。」


 短くそう答えたけど、胸のざわつきはますますひどくなっていった。


『あの子たち、本気っぽいよ』――その言葉が頭に残って離れない。教室から漏れ聞こえるざわめきが、なぜかいつもより騒がしく聞こえた。胸の奥に、実体のない焦りが広がっていった。


 教室に戻ると、A組の女の子たちがまだ高倉くんとメイクの話で盛り上がっていた。なんかちょっと頭にきて、思わず割り込むように言った。


「高倉くん、部活の時間!」


 女の子たちは蜘蛛の子を散らすように去っていった。高倉くんは少しキョトンした表情だ。部室までの廊下を歩いていると、耳元で話しかけられた。


「もしかして、ヤキモチ焼いてくれたん?……ごめんな。安心しとき、俺はあかねだけやで。」


 聞き慣れた低い声が耳にやさしく響いて、少しほっとした。


「――なぁ、あかね、ヤキモチ焼くんやったら、はよ俺のこと好きになってくれや。」


 高倉くんが冗談っぽく笑った。胸がドクンとして、顔が熱くなるのが分かった。


「も、もう!」


 ぽっと赤くなった顔を見られないように俯いて、部室までの道を急いだ。胸のドキドキが止まらなかった。

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