表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高倉くんのカワイイを応援したい!  作者: しぐまみゅう
最終章 やっと見つけた私の『好き』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/42

3. 推し活進化論

 部室に行くと、一年女子たちがスマホを見ながら「きゃあきゃあ」言っている。また韓流アイドルグループかな?


「先輩たち、お疲れ様です!」


 いつも通り、元気よく挨拶された。


「今日の被写体モデル、誰だか知ってます?びっくりしますよ。」


 他の1年女子たちも、コクコクとうなずいた。


「え、びっくりってなに?サプライズゲスト!?」


 すると新部長の楠くんが部屋に入ってきた。となりにいる人物をみて確かに驚いた。――彼女の早乙女さんだ!


「みんな、今日の部活動を始める。人物撮影がテーマだ。被写体モデルは2年B組の早乙女さん。」


「ご紹介いただきました早乙女です。今日はよろしくお願いします。」


 早乙女さんが天使のほほえみを浮かべた。まさか、自分が部長になってすぐ、"彼女"をモデルに呼ぶとは、いくらなんでも、公私混同がすぎるでしょ……。楠悠斗、見損なったぞ。


 それでも、最初のうちは真面目に撮影しているように見えた。けれど、段々と雲行きが怪しくなってきた。


「悠斗、こんな感じでいい?」


「今のいい、ちょっと身体捻って。ああ、その笑顔!もう最高!」


「ちょっと、悠斗みんな見ているわよ。」


「問題ないよ。部活のみんな、陽菜が俺の彼女だって知っているし。あ、陽菜の髪、ここちょっと跳ねてる。」


「え、どこどこ?悠斗直して。」


 楠くんが駆け寄って、指先でそっと跳ねた髪を押さえた。陽菜さんは、それをうれしそうに見上げて微笑んだ。――こうなるともう完全に二人だけの世界だ。いちゃつくなら、せめて人目のないところでやってほしい。なんかこう、目のやり場に困る。構えたカメラをそっと下ろした。


「……そういえば、あなたたちは楠ファンクラブを解散しないの?」


 なぜか平然としている1年女子たちに尋ねた。


「いえ。今はカップルで推しているので、何も問題ありません。堅物な楠先輩が、あんなデレデレしちゃって!本命彼女にだけ見せるギャップが最高なんです~!もうよだれが出ます。」


「……え、そういうもん!?」


「はい!推し活って進化するんです!」


 そういうと、後輩たちは、いちゃつく二人を撮影し始めた。――困ったな。こっちもついていけない。


「――高倉くん、私たちはどうしようっか?」


 気まずくなって、一緒に呆気に取られている高倉くんに声をかけた。


「とりあえず、外行こか?」


 外は、まだまだ蒸し暑い。校庭では、サッカー部が練習をしていた。松葉杖の和田くんがピッチの外から声を張り上げている。まるで鬼コーチだ。


「あれ?迫田、うまなっとるやん。」


「それ1年のフォワードの子だっけ?」


「そうそう。」


 11番の背番号をつけた迫田くんがシュート決めた。いい攻めだったけど、わずかにゴール外れた。


「あっ、惜しい!……でも、今のすごくよかったね。」


「前よりめっちゃ前出るようになったんちゃう?」


 和田くんが、迫田くんに何やら熱っぽくアドバイスをしている。フォワードは本来彼のポジション、ピッチに立てないことが、誰よりもつらいはずなのに――声を張る姿は、真剣そのもので、悔しがる素振りは一切見せなかった。


「和田くん、本当サッカー好きなんだね。」


「せやな。」


 その後も高倉くんは、声を張り上げる和田くんや、走り回る1年生たちを見ていた。でも、その目はどこか冷めていて――ああ、もう彼はサッカーをやらないんだ、って分かった。彼の目は、まだグラウンドを向いていたけど、私はわざと話題を変えた。


「――そういえば、今度のお笑いライブだけど、リンクコーデにしない?」


「ええな。あの、原宿で買うたやつ、どうやろ?」


「いいね!あれ絶対、つぎ高倉くんとお出かけする時に着ようと思ってたの!」


「じゃあ、決まりや。」


 そう言うと、私の髪の毛を軽く撫でた。


「どうしたの?」


「……なんでもあらへんよ。」


 高倉くんは少し切なそうな顔で微笑んだ。日が暮れ始めて、少し涼しくなってきた。心地よい秋風がふわりと私たちを包み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ