番外編:再び挙式します~二度目の正直。幸せになります!
と、まあ「結婚式あげよ!」と決めてから半年後――ここキルトワでの教会で本日、私とレノンは夫婦の誓いをたてます!
この半年の間、大変だった……。
まず、会場になる教会建て直し――は間に合わないので、内装と外装を工事。
というか、このキルトワは保養地として他貴族も利用しているのだから、普段から教会などの公の建築には気をかけているわよね?
なのに工事をするということは、派手目にしたということ。
お洒落な内装になって神父さんが目を回していたけれど。
そして、レノンは森の奥の自宅からエリソン家の別荘へお引っ越し。
でも、仕事上危険な薬物を扱うし、職業柄秘密な仕事もこなすということで、お隣に仕事部屋を建てた。
「地下室も造らなければ」とういうことで、小さな小屋なのに結構時間を要した。
別荘は私とレノンの新居になるので、内装も手を加えた。
二階は客室以外、私とレノンの居住区になった。
それから結婚式の出席者確認やら、披露宴会場になる別荘の飾り付けの材料の発注やら、料理の選択やら。
そして新調するウェディングドレスのことで、デザイナーとの相談に何度も続く試着。
「二度目になると面倒」とか思ったけれど、進めていくうちに楽しくなっていったのは否めないかな。
驚いたのは、案外レノンのお友達が多かったということ。
職業に関連した人たちがほとんどなんだけれど、新たな一面を知って見直した限りです。
対して――私は、義理でおつき合いしていた友人ばかりだったので、今回の出席の少ないこと!
以外だったのはエミリーが出席するということ。
あそこの親御さんとうちの両親はおつき合いがあるので、出席するとは思っていたけれど、娘のエミリーとは仲良くないので(まあ、舞踏会を思い出していただければ……)絶対にこないと思っていた。
(あっ……! もしかしたら、私が意趣返しに言った『気になるご令嬢』のことを気にしてる?)
スチュワートの時にエミリーに挨拶した後、私に戻ったのだけど異性と同性との態度が全然違うから、腹立って仕返ししたのよね……
親戚という設定だったから、挙式に参加すると思っているのかしら?
(まだ、スチュワートが自分を探していると思っているかも……)
これは兄に報告して当日、さりげなくスチュワートのことを話してもらおう……
(他国の令嬢と結婚してアーデンにはいません、とでも言ってもらえれば良いわよね)
お茶会の時のネタを探しに出席の方がマシかも。
そう懺悔しながら出欠席の確認をする。
「あのさ……」
一緒に確認をしていたレノンが、遠慮がちに口を開いた。
「お忍びで父が、出席したいと言うんだけど……」
「良いんじゃない……………………はい!?」
思わず声を大にしました。
「父って。レノンの父って、国王様でしょ!? 陛下でしょ!? 仕事は? 公務は? って、お忍びでこれるの? いやいや! で、でもレノンのお父さまだし! あやややっ! な、何かあったらどうするの?」
「その日は異母兄に仕事を任せるって。でもやっぱり焦るし、問題だよね」
ふー、とレノンも溜息を吐き出す。
「手紙で何度も『出席したい』って書かれて。密使の人も『泣かれて困ってるんです。良いお返事をください!』って頼まれちゃって……」
「あー……うん、泣いているところ、想像できる」
でも話に聞くに陛下は、レノンの平民のお母さまをとても愛していらっしゃったらしいし。その子のレノンに対してもすごく愛情深いことは知ってる。
といっても、グライアス殿下に対してそうじゃなかったわけじゃない。彼にも愛情を注いでいたらしい。
亡き王妃様とはあまりわかり合えなかったようだけど。政略婚の弊害よね。
「でも……お忍びだと護衛も手薄になって心配だし、かといって公にきても大騒ぎになるわよね……」
「そうなんだよ。公然とくると後継者問題で面倒が起きそうだし」
うーん、と二人で頭を抱えていると、バン! と勢いよく扉が開いた。
「――話は聞いた! この兄に任せなさい!」
兄のクリフが意気揚々と登場した。
「兄さま、何かいい案をお持ちなの?」
「クリフさま」
「レノン、今後は『義兄さん』と呼んでくれ!」
何か妙案でもあるのか、兄は自信たっぷりにキラキラ輝いてる。
「それでな、公に堂々と陛下を呼べる方法があるぞ」
「本当に?」
「本当ですか!? クリフさま」
「『義兄』だ、レノン」
「義兄さん!」
「いいから、早く言ってよ」
「ステラ、おまえ冷たいな」
私の態度に少々むくれた兄だったが、気を取り直し、私達に話してくれる。
「教会の視察という名目で来て頂ければいいのだ」
「教会って、キルトワの教会のこと?」
「当たり前だ。陛下は国の教会建築の補修のための補助金制度案を今年、成立させている。何せ古い建築が多くて打ち捨ててしまうことも多い。そうなるとそこに住んでいる神父達が一から寄付金集めに奔走して、本来の仕事をおろそかにしてしまう。それに孤児院も一緒に設立している教会も多々ある。古くなった教会の一角に住まわせるのは危険だ。だから、補修、改修の工事の申請したら補助金を出すことになったのだ」
「へえ……そんな法案が通ったのね」
「そして――私はその補助金制度を利用して、キルトワ教会の修繕をした第一号というわけさ。『きちんと正当に使用しているかどうか、第一号であるこの教会を視察にお呼びした』という名目でご招待すればいい」
――おお! なるほど!
「兄さま、頭いい!」
「だろう?」
「めざとく懐を痛めない方法を模索して利用する迅速さ! 商魂たくましいわ!」
ふふん、と自慢げに胸を張って威張る兄が私の台詞を聞いて、ガッカリする。
「おまえな……もう少し言い方ってあるだろう?」
ごめーん、と舌を出す私。
でも、やっぱりあの父と母の血を受け継いでいるだけある。
(私ももしかしたら、商才あったりする?)
なんて考えてしまう。
「いえ、僕は本当に感謝しています。義兄さん」
そうレノンは立ち上がり、兄の手を握る。
「父の件、ずっと悩んでいたんです。出席してほしいけれど世間の目がある。公に招待してしまえばどうしても噂になって、僕やステラを巻き込んで政権争いが勃発するかも知れない。かといってお忍びできてもらって、薄い警護に乗じて父の身に危険が及ぶかもしれない。――どうしようか決めかねていたから、義兄さんの提案がすごくありがたい」
「レノン……」
兄の目頭が熱くなったのか、しきりに擦っている。
「君がステラの婿でよかったよ。ステラはああ、その貴族とか関係なく変わった子だし、物言いに気をかけないから敵を作りやすくて」
――貴族の令嬢が裏表ありすぎるのよ!
(裏ではもう、口汚く罵りあってるのを男どもは知らないんだから!)
私は兄の台詞にぶーたれる。
「ステラは素敵な女性です、僕はそう思っています。僕は彼女と出会えて幸運だった。ステラとステラの家族と出会えた。このキルトワで式を挙げる幸せを父にも知ってもらいたかった――ありがとうございます」
「レノン……」
私も鼻がツン、としてきちゃった。
私は感極まって後ろからレノンに抱きつく。
「これから、いっぱいいっぱい幸せになろう? レノン。二人で」
「うん」とレノンが頷き、前に回した手を握る。
消毒液の匂い。
薬品の調合でちょっとだけ荒れている手。
温かいぬくもり。
私の生活の一部になる彼の体温に浸った。
――そして、式当日。
教会の鐘の音が鳴る。
父の手に引かれ私は、神父の前で待つレノンのところまで進んでいく。
招待客の中にはレノンのお父さまである陛下もいて、慈愛の籠もった眼差しで式を見守っている。
彼の目の前まできて、父の手が離れ私は差し出されたレノンの手を取った。
いつだって私を「愛してる」と囁く瞳。
レノンの瞳の奥にある想いに気づくまで、随分と回り道をしてしまった。
けれど――もう、そんなことはない。
私はレノンと手を取り合い生きていく。




