6日目、共存の始まり
総合評価100pt突破しました!ありがとうございます
2話に新プロローグ的なお話を割り込み投稿しましたので、そちらもぜひご覧ください。
不気味なほど静かになった大通り。
再び歩き出すゾンビの足音が痛いほどに響く。
僕たちの前に現れて、同胞を見るも無残な姿に変え、そして人間を襲わないゾンビ。
彼は僕たちの前で立ち止まると、手に持っていたナイフを一瞬だけ見せびらかすように手の上で弄び、腰のベルトへと戻す。
敵対する意思は無いという表現だろうか?
取りあえずは安心していいと判断して、なるべく刺激しないようにみんなが構えている武器を降ろさせる。
さて、このあとどうしよう・・・・・。
コミュニケーション力には自信のある僕でもゾンビという未だ経験の無い相手にどうすればいいのか分からず、ゾンビ相手では無意味とは分かっていてもとりあえずお礼を言うことにした。
「あの・・・・・助けてくださってありがとうございます」
頭を下げてから反応を窺っていると、少しして予想外の返事が返ってきた。
「・・・・別に、お前らを助けたわけじゃねェ」
今日何度目であろう衝撃が僕を貫く。
ゾンビが・・・・喋った!?
これまでゾンビが喋るというのは聞いたことも見たことも無かった。意思疎通すらできずにただ襲ってくるゾンビばかり見ていた僕には–––いや、グループ全員が驚愕していた。
しかし新見さんだけはある程度予想していたかのような動揺の無い瞳。僕たちの前に出ると、喉を詰まらせるような声で呟いた。
「たかしくん・・・・・たかしくんだよね?」
戦闘前にも同じことを呟いていた新見さん。
たかし–––、あの時死んでしまった、あるいはゾンビになってしまったはずの彼氏さんの名前。
新見さんの問いにゾンビは何か反応することは無い。しかし、ゾンビらしくない瞳が新見さんに何か意思を伝えようとしている気がした。
それを感じ取ったのだろうか、新見さんはゆっくりとゾンビに歩み寄る。
ゾンビに近づこうとするのを止めなければならないはずなのに、僕たちは金縛り状態になったように動けない。
「たかしくん・・・・・会いたかった」
新見さんはゾンビの顔を見つめると背中へ両手を回し、もう離さないと言わんばかりに強く抱き着く。
新見さんは確信しているようだが、僕はまだイエスかノーかの答えが判らない。新見さんの繰り返しになるのは理解しているが、訊いてみる。
「あの・・・・、九ヶ浜さんなんですか?」
・・・・・やはり、すぐに返事はない。だが10秒ほどしたあとに抑揚のない声が返ってきた。
「・・・・・・そうだと言ったら?」
否定はしない。つまり本人なのだろう。
僕は再度、慎重になってそのゾンビを見る。
確かに生前の彼と今目の前にいるゾンビの身体や話し方の特徴は似ているし、ところどころ破けてはいるが服装もあの時見たのと同じ、ゾンビになっているから顔が変化するのは・・・仕方ないのか。
そう考えていると、風に消されてしまいそうな新見さんの声が小さいが、確かに聞こえた。
「ごめんね・・・・ごめんね・・・・。私がもっと強かったら・・・・・ちゃんとしていたら、たかしくんがゾンビにならなくて済んだのに」
胸に顔を押し付けているために表情は窺えないが、震えている。よほど自分を責めているのだろう。
そんな新見さんに彼は溶けた氷のような目で見る。
「・・・・・・別に気にしてねェよ。だから泣いてんじゃねえ」
「泣いてないよ」
「じゃあ、いつもの笑顔を見せろ」
「・・・・・今は、無理」
そう言って顔を見られたくないために離れようとしない新見さんに九ヶ浜さんは困ったように口を曲げると、ポンポンと新見さんの頭に手を置く。
初めて立ち会う人と人の再会。
2人の感動の再会に、女子たちは「うぅ・・・・ゾンビになっちゃったのは良くないけど、2人がまた会えて良かったぁー」など言いながらとわんわんと泣いている。
それを見ていたら、僕も思わず鼻が赤くなりかけた。
「どんな姿になってもたかしくんが戻ってきてくれて私・・・・すごい、うれしい」
「ああ、こうしてまた話せるとはな・・・・・」
「奇跡だね」
「もしかしたら、お前との未練が俺をイレギュラーなゾンビにしたのかもしれないな」
「みんなの前で言わないでよ。恥ずかしいから・・・・バカ」
「へいへい、どうせ俺はバカだよ」
2人で軽口をたたいていると、新見さんはようやく彼に笑顔を見せる。
彼は彼女から離れると―――さて、と呟いて僕のほうを見つめる。
「俺は未来を守れれば十分だ。だからお前らがどうなろうが知らねえし、もう行くぜ。元々、俺はあの時お前らを助けるつもりはなかったしな」
「え、ちょっ、たかしくん・・・・!」
・・・・やはりそうなるか。
あの時から、彼は好き好んで誰かを助けに行くような英雄気取りでも、見捨てることができない心の意優しい人でもない雰囲気を感じていた。
誰も中学生の僕らを守ってくれないというのは覚悟しているが、こうして直接言われるとやはり不安になる。しかし、それは誰もが同じ状況だ。甘える訳にはいかない。
無意識に拳に力が入る。
「・・・・はい、結果的に助けることになったとしても、僕はそれでもたかしさんに感謝しています。僕たちを置いて行っても文句は何一つとしてありません」
そう言うと彼は少し意外そうな表情を一瞬だけ見せると、苦笑いをひとつ。
「まあ・・・・・、第1は未来だが、俺がこいつを守ることに一切口出ししない・邪魔しないっつうなら、多少のサポートくらいはしてやる。あくまでも自分の身は自分で守れ。それでいいなら勝手に付いてこい」
予想していなかった答えに僕は思わず確認してしまう。
「え、いいんですか?」
「同じことを2度も言わせんな。別にお前らだけで生きていけるなら構わねえけどな」
「・・・・・分かりました。邪魔はしませんので、よろしくお願いします」
僕たちがお辞儀すると、彼は何か難しそうな表情で自分の髪をわしゃわしゃと搔(
か)き乱す。
「よし、ンじゃ行くか」
「「「「はいっ」」」」
こうして僕らはゾンビと行動を共にすることになった。
恐らく今、僕らだけでなく彼–––九ヶ浜さんも思っているだろう。
1歩先の未来ってのは本当に分からないものだ、と。
12話を読んでくださり、ありがとうございます。
今回の話、こんなものでいいのか?と不安になりつつも投稿してみました
(;´・ω・)
次回の内容は未定ですが、1,2日で完成&投稿します!




