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ドラゴンマスクより ーふたつのゴールー  作者: 福本 美憂


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9/29

この年の最終戦は、ちょっと感傷的になった。

サッカーに置いていかれた私にサッカーを続けさせてくれたチームから離れることが決まっていた。

一歩歩み出すことができたのも、ここでサッカーを続けていたおかげだ。

そして、

サッカーが好きなこと、楽しいことを思い出させてくれた場所だ。

優勝は逃したものの好成績で終えられる。

でも、最終戦は負けない。勝ってこのチームを終えるんだ。

このメンバーで試合をするのも最後。絶対に勝ってやる。


相変わらずボコボコの土のピッチ。

公式戦ギリギリのサイズ。

ベンチ以外に観客はいない。

でも、

熱はある。


鈴が入ってから、このチームは変わった。

いや、私が変わった。

私の中の「できない」が壊れていった。


さぁて、鈴!

最後に「ストライカー瑠」のストッパーぶっ壊して!


この日はハットトリック。

勝利した。


最後の挨拶には、相手チームも参加して円陣を組んで私を送り出してくれた。

周囲が引くほど律が大泣きしてて、おかげで私は泣けなかった。

大きな花束をチームからもらった。

最初、私は花束をもらえるような選手じゃなかったよね。

わがままなプレイで、怒りをみんなにぶつけて。

キャプテンシーなんてなかったよね。ごめん。


私はこの年、リーグ得点王になった。


今なら心から言える。

みんなのおかげだよ。ありがとう。


私は、来週には契約を済ませてチームを去る。

律にはホント、ごめんだけど、サッカー選手の旬は短い。

私、今やんなきゃって決めたんだ。

律の計算は狂わせたけど、律がやってくれてるチーム作りってサッカーを本気でやりたい私たちには必要な場所作りなんだよね。

大好きだよ、律。

あとは頼んだ!


・・・っと、キレイに別れたつもりだった。

なんと、契約に律がついてきた。。。


理由は2つあって、

ひとつは、私が契約書の内容を理解できるか心配だという。

いやいや、確かに読むのは苦手だけど、律に言われたくない。

もうひとつは、契約の仕方を勉強したいとのこと。

・・・最後の親孝行のつもりで了承した。


確かに契約書はなかなか手強かったけど、律が理解していたかと言うと、

「どう?律?」

「あ、いいんじゃない」

ぜーったい、わかってないね。


「あんな感じなんだなー契約って」


帰り道に律が言った。


「俺も頑張らなきゃ」

「おぅ。頑張れ、律オーナー」

「お前もな、わがままキャプテン」

「うるさい。もう、キャプテンじゃないから」


そうだ。明日からは1からスタート。キャプテンじゃない1選手だ。

入ってきた時の鈴のように、自分がチームで何ができるかを考えながら、自分のプレイを押し出していこう。


あいつからドイツ移籍の話を聞いた時(また、置いていかれるのか)と、思った。悲しいとか、喪失感ではなくて「離れてしまう」距離を感じだんだ。

兄の時とは全く違う、サッカーの格差ではなくて・・・言葉では、難しい。

遠回しに言ってもわからなそうだし、私もそういうの苦手だから。


「でもさ、ひとつ困ってることがあるんだ」

「何?」

「私さ、君のこと好きなんだよ」


これなら伝わるよね。うん?困ってる?

いいんだってば、私が言いたいだけなんだから。勝手に距離詰めてるだけだから。


「お互いさ。サッカーをやりきろう。その上で、お互いの気持ちが変わらなかったら、やり切ったほうが先に会いにいくってどう?」


お互いって言った?好きって言えばいいのにw

よーし!先にやり切ってドイツ行ってやる!

待てよ、ドイツでもサッカーやろうかな。


そんなこんなで公園でボールを蹴るっていう私たちらしいデートを重ね、

その年のクリスマスは、鈴のマンションに律を招待した。なんか気まずいから私が律を呼んだのだ。私の家じゃないけどね。


「ケーキとか久しぶりー」律が浮かれている。

「律って鈴のダンナさんの親友なんだよね?」

「あーその話、泣くぞ。いいか?」

「わかった!もう言わない」

そっか。その話には触れない方がいいんだな。気をつけよう。


「でさー!昼休みに俺たちはいつもサッカーしてたわけよ!」

・・・結局、律が酔って親友自慢して泣くという結末だった。

鈴は大笑いして、あいつと私はちょっと静かだったかもしれない。

年が変わったら、それぞれのサッカーを歩み始める。

いつかまた、こんなクリスマスを過ごせたらいいな。

1月。

私は新しいチームのキャンプに合流した。

いよいよだ。


明日につづく

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