瑠
この年の最終戦は、ちょっと感傷的になった。
サッカーに置いていかれた私にサッカーを続けさせてくれたチームから離れることが決まっていた。
一歩歩み出すことができたのも、ここでサッカーを続けていたおかげだ。
そして、
サッカーが好きなこと、楽しいことを思い出させてくれた場所だ。
優勝は逃したものの好成績で終えられる。
でも、最終戦は負けない。勝ってこのチームを終えるんだ。
このメンバーで試合をするのも最後。絶対に勝ってやる。
相変わらずボコボコの土のピッチ。
公式戦ギリギリのサイズ。
ベンチ以外に観客はいない。
でも、
熱はある。
鈴が入ってから、このチームは変わった。
いや、私が変わった。
私の中の「できない」が壊れていった。
さぁて、鈴!
最後に「ストライカー瑠」のストッパーぶっ壊して!
この日はハットトリック。
勝利した。
最後の挨拶には、相手チームも参加して円陣を組んで私を送り出してくれた。
周囲が引くほど律が大泣きしてて、おかげで私は泣けなかった。
大きな花束をチームからもらった。
最初、私は花束をもらえるような選手じゃなかったよね。
わがままなプレイで、怒りをみんなにぶつけて。
キャプテンシーなんてなかったよね。ごめん。
私はこの年、リーグ得点王になった。
今なら心から言える。
みんなのおかげだよ。ありがとう。
私は、来週には契約を済ませてチームを去る。
律にはホント、ごめんだけど、サッカー選手の旬は短い。
私、今やんなきゃって決めたんだ。
律の計算は狂わせたけど、律がやってくれてるチーム作りってサッカーを本気でやりたい私たちには必要な場所作りなんだよね。
大好きだよ、律。
あとは頼んだ!
・・・っと、キレイに別れたつもりだった。
なんと、契約に律がついてきた。。。
理由は2つあって、
ひとつは、私が契約書の内容を理解できるか心配だという。
いやいや、確かに読むのは苦手だけど、律に言われたくない。
もうひとつは、契約の仕方を勉強したいとのこと。
・・・最後の親孝行のつもりで了承した。
確かに契約書はなかなか手強かったけど、律が理解していたかと言うと、
「どう?律?」
「あ、いいんじゃない」
ぜーったい、わかってないね。
「あんな感じなんだなー契約って」
帰り道に律が言った。
「俺も頑張らなきゃ」
「おぅ。頑張れ、律オーナー」
「お前もな、わがままキャプテン」
「うるさい。もう、キャプテンじゃないから」
そうだ。明日からは1からスタート。キャプテンじゃない1選手だ。
入ってきた時の鈴のように、自分がチームで何ができるかを考えながら、自分のプレイを押し出していこう。
あいつからドイツ移籍の話を聞いた時(また、置いていかれるのか)と、思った。悲しいとか、喪失感ではなくて「離れてしまう」距離を感じだんだ。
兄の時とは全く違う、サッカーの格差ではなくて・・・言葉では、難しい。
遠回しに言ってもわからなそうだし、私もそういうの苦手だから。
「でもさ、ひとつ困ってることがあるんだ」
「何?」
「私さ、君のこと好きなんだよ」
これなら伝わるよね。うん?困ってる?
いいんだってば、私が言いたいだけなんだから。勝手に距離詰めてるだけだから。
「お互いさ。サッカーをやりきろう。その上で、お互いの気持ちが変わらなかったら、やり切ったほうが先に会いにいくってどう?」
お互いって言った?好きって言えばいいのにw
よーし!先にやり切ってドイツ行ってやる!
待てよ、ドイツでもサッカーやろうかな。
そんなこんなで公園でボールを蹴るっていう私たちらしいデートを重ね、
その年のクリスマスは、鈴のマンションに律を招待した。なんか気まずいから私が律を呼んだのだ。私の家じゃないけどね。
「ケーキとか久しぶりー」律が浮かれている。
「律って鈴のダンナさんの親友なんだよね?」
「あーその話、泣くぞ。いいか?」
「わかった!もう言わない」
そっか。その話には触れない方がいいんだな。気をつけよう。
「でさー!昼休みに俺たちはいつもサッカーしてたわけよ!」
・・・結局、律が酔って親友自慢して泣くという結末だった。
鈴は大笑いして、あいつと私はちょっと静かだったかもしれない。
年が変わったら、それぞれのサッカーを歩み始める。
いつかまた、こんなクリスマスを過ごせたらいいな。
1月。
私は新しいチームのキャンプに合流した。
いよいよだ。
明日につづく




