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5、招待状が届きました

昼食を終え、くつろいでいると呼び鈴が鳴りました。

「はい、なにかご用でしょうか?」

ドアを開けるとそこには、城の兵隊が一人立っていました。


「レイズ嬢はいらっしゃいますか?」

「はい、私ですが」

「王子から、この手紙を届けるよう言われました」

私は兵から手紙を受け取りました。

「ありがとうございます」

「それでは失礼致します」


部屋に戻り封筒を開けると、その中にはお茶会の招待状が入っていました。

<二週間後の午後に宮殿のテラスでお待ちしております。 ロイ・レイモンド>

私は早速、仕事のスケジュールを前倒しにして、二週間後に備えました。


仕事に集中しておりますと、あっという間に二週間が過ぎ去ってしまいました。


私は約束の時間に間に合うよう馬車を手配し、紺色のドレスを身にまとって王宮を尋ねました。

招待状を門番に見せると、奥からメイドが慌ててやって来ます。

「レイズ様、お待ちしておりました」

「ごきげんよう、お招きありがとうございます」

「こちらへどうぞ」


王宮の中は広く、メイドから離れたら迷子になりそうでした。

「こちらでお待ちください」

「ありがとうございます」

メイドはテラスに置かれたテーブルに私を案内すると、椅子を引きました。

私は腰掛けて、庭を眺めました。

綺麗な薔薇が咲き誇っています。


「おまたせいたしました、レイズ様」

「おまねきありがとうございます、ロイ様」

ロイ様が席に着くと、すぐにアフタヌーンティーのセットが机に置かれました。

小さなケーキやキューカンパーサンド、可愛らしいテリーヌなどが乗っています。


執事がやって来て、紅茶をロイ様と私のティーカップに注ぎました。

「薔薇の美しさも、レイズ様の前ではかすんでしまいますね」

「そんなことをおっしゃられると、恐縮してしまいますわ」

ロイ様は、メイドに何か言いました。

すると、メイドは小さな箱を持ってきました。


「これは貴方へのプレゼントです」

「開けてもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

私がそっと箱を開けると、中にはピジョン・ブラッド色のルビーの指輪が輝いていました。

「こんな高価なもの、受け取れませんわ」

ロイ様は首を振りました。

「貴方の誕生石です、お受け取り下さい」

「何故、私の誕生日をご存じなのですか?」


ロイは薔薇を眺めてから、私の手を取りました。

大きな手に綺麗な指が並んでいて、私は息が止まりそうでした。

「貴方は忘れてしまったのですか?」

「何を?」

「幼い頃、森で泣いていた子どものことを」


私は思い出しました。

たしか10才くらいの頃、私の誕生日にひとり森で過ごしていたことを。

そこで、褐色の肌の男の子が一人、泣きながら歩いていたことも。

「思い出しましたわ、褐色の肌が美しかった男の子がロイ様でしたの?」

「ええ、僕は肌の色が何故か褐色だったことがコンプレックスで、よく泣いていたんです。貴方に会うまでは」


ロイは私から手を離し、紅茶を一口飲んでサンドイッチをつまみ終えた後、話を続けました。

「絵画の神様みたいに綺麗な肌ね、と貴方がおっしゃってから自分の肌が美しいと思えるようになったんですよ」

ロイは私の顔のそばで囁きました。

「私、そのようなことを申し上げたのですね」

「ええ、とても嬉しかったのを覚えています」

私は心臓が口から飛び出してしまうかと思いました。


「紅茶がさめてしまいますよ、お菓子もどうぞ」

「はい、いただきます」

私は震える手でケーキを取り、紅茶を頂きました。

「貴方に会えるなんて、奇跡はあるものですね」

「そうですね」

私は動揺を隠しながら、ケーキを一口食べました。

「クリームがついていますよ」


ロイは人差し指で私の口元をぬぐうと、指に着いたクリームを舐めてしまいました。

そして、机の上に置いていたルビーの指輪を、ロイ様は私の左手の薬指にはめました。

「ルビーは情熱的な貴方にぴったりですね」

「ロイ様、これは一体?」

「わかりませんか? 僕は貴方にプロポーズをしているんですよ」


私は驚きながらも頭から足の先まで、真っ赤に染まってしまいました。


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