第二十話
ノニウスについてきてもらって本当に良かった。
図書館と彼らは軽く言ったが、建物は別棟であり警備も厳重だった。一人で入ることはできなかったに違いない。
実際に入館の際は、ノニウスが身分を証明する書類を提出していた。
私一人だと証明するものがない。そう思ったのが彼に伝わったのか、外見でわかると一蹴された。
中に入ると、司書なのか役人らしき人が近づいてきて声をかけた。
「わー異世界の人なんて初めて見た」
それ、こちらのセリフです。
ノニウスに親しげに近づいてきた青年は手を振って話しかけてきた。
私が警戒したのを察したのか、ノニウスがさっと背後にかばう。
「キケロ、悪いが閣下からいくつか依頼がある。対応を頼む」
キケロ、と呼ばれた彼は両手を広げ、ため息を吐く。
「閣下の人使いの荒さには慣れているけれどね。少しは間隔を開けてほしいのが正直なところだよ」
「わかっている。とんでもなく迷惑をかけていることは承知している。閣下にも伝えておく」
「その言葉はうれしいけれど、もう少し優しい言葉で伝えてくれることを願うよ」
私の見たところ、ノニウスは遠慮なく、そのまま伝えるような気がします。
彼の横顔がそういっている。
しかし、悪い感じはしない。嫌味を言っているが、ただの挨拶に思えた。閣下との距離は近いのだろう。普段から軽口のようなやり取りをする間柄というところだろうか。
キケロとノニウスは書類のやり取りを行い、一緒に奥に入るよう手招きをされた。
ついていった先は、四方壁一面の書棚の部屋である。
学校の体育館くらいの広さがあるだろうか、壁の中央には隣の部屋へ入るような扉があった。その先も同じような部屋があるらしい。
中はいくつか書棚で区切りがされてあり、その間を幾人かの役人が渡り歩いていた。
中央には4人くらいつくことができるテーブルがざっと置いてあり、その上には書物が散らかっている。
ここも片付いていない。
それでも、何を置いているか把握しているようでキケロは進んだ先のテーブルから書物をノニウスに差し出す。
「相変わらず、よくわかるな。そこだけは感心する」
一言、多い気がしますノニウス。
胸の内で突っ込まずにはいられない。
「それが俺の仕事だからね。ミキも何かあったら遠慮なく聞いて」
気安く言われたが、頷くだけで応える。
なんか、軽いぞ青年。良いのかこんな重要な役職がこれで。
若干、不安を覚える。
しかし、整理されていない図書館の中を彼は迷いなく進み、閣下やノニウスが希望する書物や書類を次から次へ掘り出していった。




