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偽主  作者: シュカ
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プロトネ祭一般公開(2)

お昼になる頃にはプロトネ祭来場者数もピークに達していた。人々の間を潜り抜けてシドとティムは散策を続けていた。

 

 「そろそろ軽音部のライブかな?」

 

 「ホールだよね!いこいこ!」

 

 すぐ横を女子生徒が二人小走りでかけていく。

 

 「ママー。たこやきたべるのー」

 

 「あらあら、じゃあ買いに行きましょうね」

 

 「うん!」

 

 たこ焼きの出し物のそばで小さな男の子が母親におねだりをしていた。母親は愛おしそうに子供と手を繋ぎ、たこ焼きの出し物の列に並ぶ。


 「カード屋行きたいな。掘り出し物あるかも…」

 

 「えー、占いしたいー。」

 

 「占いの後でいいから付き合って」

 

 「んー、分かった」

 

 通路の端によった中学生くらいの男女が並んでパンフレットを見ている。

 皆それぞれにプロトネ祭を楽しんでいるようで良かったなとシドは思う。

 

 今、二人は後頭部の一年生の教室があったエリアから二年生の教室があるエリアに向けて移動していた。小腹が空いてきたので、軽食があるところを探していた。

 

 ここに来るまでの間にも、たこ焼き、お好み焼き、綿菓子、チョコバナナ、焼きそば、フランクフルト、ポテト、カップケーキ等々、たくさんの食べ物屋が出ていて二人して悩んでいた。

 

 「あ、これいいなー」

 

 階段の壁には出し物の宣伝ポスターが所狭しと貼られていた。そのうちのひとつを見てティムは足を止める。

 

 「ハンバーガーか。行ってみるか」

 

 ポスターはボリュームがありそうなハンバーガーがドンッと描かれている。ポスターの下部に料理部が二年五組でやっていると書いてある。これを見てたら余計にお腹が空いてきた。二人はやや足早に二年五組を目指した。

 

 「混んでるねー」

 

 「人気なんだなー」

 

 二年五組の前には教室からはみ出すほどの長い行列ができていた。料理部の生徒が何人かで通行の邪魔にならないように列の整理を行っている。

 

 「料理部特製ハンバーガーお買い求めのお方ー。最後尾はこちらになります」

 

 二人は最後尾と看板を掲げている生徒がいるところまで行き、列に並んだ。

 

 「そういえば、シド君のクラスもすごかったねー。水粘土って言うんだっけ?」

 

 「ああ、クラスの皆で頑張った成果が出ていて良かったな」

 

 ティムのクラスに行ったすぐ後に二人はシドのクラスにもよっていた。シドのクラスの水粘土は特に女性や子供を中心に人気を集めていたようだった。

 

 特に水粘土のブランコは子供達に人気があり、順番待ちをしているくらいだった。その様子を見てシドもクラスメート達も満足していた。

 

 「俺のクラスもシド君のクラスもそれなりに成功していて良かったよー」

 

 「そうだな、ひと安心だ」

 

 「あー、そういえば、あのふたりはどうなったんだろーねー」

 

 「フォクスター姉弟か?」

 

 「そうそ」

 

 そんな雑談をしながら行列が進むのを待っていた。思いの外回転率が早いようで、長い行列は少しずつだが着実に消化されていく。

 

 「連絡も来ないし、大丈夫なんだろう」

 

 「だねー。来ないことを祈っとくよー」

 

 シドは制服のポケットの中に入れてある通信機の感触を確かめる。昨日フォクスター姉弟からもらったものだ。

 

 「にしてもさー、いくらなんでも人多すぎない?」

 

 「それは僕も思う。今までのプロトネ祭もこんなに人が来てたか?」

 

 「いやー、ここまでじゃなかったよー。区切りの年って効果かねー。」

 

 「そうかもな」

 

 なんてことを言っているといよいよシド達の順番が回ってきた。料理部の女子が接客をしてくれる。

 

 「いらっしゃいませ。2名様ですね。ご注文がお決まりでしたらお申しつけください。」

 

 接客の連続で大変だろうに女子生徒の笑顔の接客は完璧なものだった。シドとティムは例のハンバーガーを一つずつと飲み物を注文する。

 

 「教室内でのお召し上がりでしたら少々お待たせしてしまいますが、どうされますか?」

 

 料理班の生徒が二人が注文したものを用意している間、接客役の女の子が口を開く。教室内には何組かのテーブルと椅子がセットされており、この場で食べていくこともできるようになっているが、あいにく今は満席となっていた。

 

 「んー、適当なところで食べるからテイクアウトで!いーよねシド君?」

 

 「ああ、それでお願いするよ」

 

 「かしこまりました」

 

 二人の返答を受け、女の子は手早く二人が注文した商品を紙袋に入れていく。料金と引き換えにそれを受けとる。

 

 「ありがとう、お疲れ様」

 

 料理部の出し物を後にして、二人は多目的室を目指した。多目的室はプロトネ祭の間は休憩室として解放されており、休憩や買ったものの飲食が出来る。多目的室もやはり混んでいたものの、少し待っていると席が空いた。

 

 その席に座り買ったものをテーブルに広げる。飲み物はシドが紅茶でティムがソーダだ。

 

 「じゃ、いただきまーす」

 

 「いただきます」

 

 包み紙を捲ると、あのポスターと変わらないボリューミーなハンバーガーが顔を出した。中にはスライスされた肉とレタスやトマトなどの野菜が挟まっている。

 

 豪快に一口噛みついてみると、香ばしいパンズとフレッシュな野菜の歯応え、そしてジューシーな肉の旨味がいっぺんに口のなかに広がっていく。甘辛い味付けがさらに食欲をそそり、二人はあっという間にそのハンバーガーを食べきってしまった。

 

 「これ、すごく旨かったな」

 

 「ねー、並んだ甲斐があったよー。俺これ好きだなー。もっと作ってもらえるように、料理部の予算アップしたいくらいだよー」

 

 「いや、それはまずいだろ」

 

 「まーね」

 

 飲み物を飲みながら食後の休憩をとっている。お昼の時間も過ぎて、休憩室の混雑も収まっている。

 

 何気に午前中は歩きっぱなしだったからこれが今日初休憩でもある。少々長居しても問題ないだろう。

 

 「だから、この席は俺のもんだって言ってんだろーが!」

 

 「す、すみません。す、すぐ退きますので…」

 

 いきなり響いた大声に二人は声のした方を見る。そこには、ガタイのいい青年と、うちの制服を着ている男子学生が三人いた。声の主はガタイのいい男の方で、男子学生達に対し声をあらげている。

 

 「いんや、断りもなく俺の席に座ったんだ。チャージ料払ってもらうぜ」

 

 「そ、そんな。」

 

 ニヤニヤと下品な笑顔で男子学生達を見下している男に彼らは怯えてしまって動けないでいる。

 

 「僕が行ってくる」

 

 「気を付けてー」

 

 その光景を見たシドは立ち上がり、ティムは飲み物のストローから口を放し、片手をあげた。

 

 「俺が目をつけていた席なのになぁ。横取りなんて兄ちゃんら度胸あんじゃねーか」

 

 男子生徒達はすでに席を立っているのに執拗にからむ青年。というか目をつけていたって、席取りもしていなかったんじゃないのか?だとしたら完全に因縁だ。

 

 「お兄さん方どうされましたか?」

 

 「ああん、なんだ兄ちゃん?」

 

 微笑みながらシドは彼らに近づいていく。周りのお客さんはただならぬ雰囲気に場所を開けて成り行きを見守っている。

 

 「プロトネ学園生徒会、シド・クローバードです。なにかお困りごとがございましたか?」

 

 「あぁ、生徒会かぁ。いやーな、この兄ちゃん達が俺の席を横取りしたもんだからよ。ちょっくら注意していたところよ」

 

 「そうでしたか。それは申し訳ございません。」

 

 ここはとにかく相手の怒りを収めて穏便に済ませよう。シドは頭を下げる。が、ここで男子生徒達が口を開いた。

 

 「ち、違うよ。僕らが座っていたのに因縁つけてこられたんだ」

 

 メガネをかけた生徒がいい。

 

 「そ、そうだ。席取りもしていなかったくせに!」

 

 ノッポの生徒が続く。

 

 「ああん?なんだとー!」

 

 まずいな、頼むから余計なことは言わないでくれと思ってももう遅かった。青年の顔はゆでダコのように真っ赤に染まる。

 

 「ひぃぃ、あ、あとは頼むぞ!」

 

 それを見た小柄な生徒がシドの肩を叩くと三人連れだって光の早さで野次馬達の方へ消えていった。

 

 「生徒会さんよー。席の横取りと因縁つけられて、俺は気分がわりぃな。どう落とし前つけてくれんだよ。」

 

 この男もなかなかのものだが、あいつらも相当なものだ。僕が来たとたん態度を変え、挑発したのち逃げるとは。本当に余計なことをしてくれた。


 「黙っていちゃーわかんねーぞ」

 

 「本当に申し訳ございません」

 

 「おいおい、ただ謝るだけってか。芸がないねー。誠意見せてくれや?」

 

 「誠意とは」


 固唾を飲んで見守るギャラリー。誰もその場を動けない雰囲気に教室内が染まる。

 

 「これだよ」

 

 やはり金か。指で金のマークをシドに示してくる。だが、その要求は無理だ。

 

 「申し訳ないですが、それは無理です。」

 

 「ほー、じゃあしょうがねぇな。憂さ晴らしに付き合ってもらうか」

 

 ボキボキと指を鳴らし下品な笑顔で舌なめずりをする。小さな悲鳴がギャラリーから聞こえた。

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