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~ガールズモノローグ~愛はすべからく『奪う』モノ

「愛理ちゃん、ちょっと来て。」


 応援合戦が終わった後、圭人君に名前で呼ばれ嬉しくなってキスをしてぼーっとしていると、圭人君のお母様が私を呼んでいた。


 私は圭人君のお母様に急に呼ばれて驚いたが平静を装いながら近づく。


 ここで落ち着いた女性であることを見せておくのは今後の評価にプラスに働くだろう。圭人君には一番私がお似合いなのだと知ってもらわないといけないから。


「何でしょうか、お母様?」


「お義母様、だなんて積極的ね。私そういう外堀から埋めていくやり方、割と好きよ。」


「いえ、そんなつもりは!!」


「大丈夫よ、私あなたの事気に入ってるから。それにしても人目を気にせずキスするなんてなかなかやるじゃない。あんな事出来るのは雪ちゃん達くらいだと思ってたんだけどね。」


 悪い印象はないようでとりあえず一安心だけど、流石に周りを気にしなさすぎたわね。少し自重しないと。


 それにしても、何でお母様は私によくしてくれるんだろう?


 やっておいてなんだけど普通、人前でキスするようなふしだらな女にいい印象を持たないと思うけど。


「すみません、圭人君には恥をかかせてしまいました…ちゃんと周りの誤解を解いときます。」


「いいのよ。あの子はもう既に恥の多い人生を送ってるんだから。太宰治並みに人間失格よ。」


「ですけど、圭人君はいい子だからあまり周りの人の誹謗中傷に晒したくないんです。」


「なるほど、既成事実を作って周りの人に恋人だと言っていくのね。いい手だと思うわ。」


「そんな事しないですよ!私は…」


 このままだと印象が悪くなってしまうわ!すぐに誤解を…


「大いにやりなさい。」


「えっ?」


「既成事実だろうと外堀埋めだろうとやれること全てをやりなさい。」


 この人は何を言っているの?圭人君が伏見さん達の中から一人を決めることを聞いていたのにどうして私を焚きつけるんだろう…


「今のままじゃ到底雪ちゃん達から奪えないわよ。圭人の事が好きなんでしょう?」


「奪う、だなんて…」


「当然じゃない。圭人は決めてるのよ、3人の中から選ぶって。愛理ちゃんには悪いけど『私がこんなに好きだとアピールしていればきっと振り向いてくれる』、だなんて思ってたら甘いわよ。圭人は決して振り向かないわ。昔から圭人は雪ちゃん達の事になると頑固だから。」


 私は何も言えなくなる。だって、お母様に言われたのは紛れもない事実だったから。


「そんな甘い考えは棄てなさい。本当に欲しいモノならなりふり構わず奪いなさい。雪ちゃん達からも、圭人の心すらも奪って自分の物にしなさい。大丈夫、愛理ちゃんなら出来るわ。」


「どうして…」


「わかるわよ、だってあなたは私と同じだから。」


 同じ?何が同じなの?


 私が混乱している中、お母様は唐突に質問を投げかけてきた。


「愛理ちゃん、問題よ。あなたが圭人の事を初めて好きだと思ったのはいつ?」


 好きになったのはもちろん、あの時。


「部活の勧誘期間の時です。」


「ハズレよ。」


「何を言っているんですか?私の事なのになんでハズレって言えるんですか。」


「だってあなたが圭人の事を好きになったのは4歳の時よ。」


「バカな事を言わないでください!!確かに私達は昔会ったことがあるらしいですけど、そんな昔のこと覚えていませんよ!!間違いなく、私は勧誘期間の時に圭人君を好きになったんです!!」


「そこからして、可笑しいのよ。」


 何が可笑しいのか全くわからない。


「愛理ちゃん、あなた自分の一族の事を全くわかってないのよ。」


「私の一族って…」


「『私達』の一族はね、先天的に記憶力に優れていて生まれてからの記憶すらずっと覚えていられる程なの。私もそうよ。」


「私って…お母様、まさか…」


「そう、私も愛理ちゃんと同じ血が流れてるわ。」


 ちょっとだけだけどね、と付け加える お母様。


 まさかお母様も私と同じ血が流れてるとは思わなかったわ。


「…あれ、と言うことはお父様とはもしかして…」


「大丈夫、近親婚って言えるほど、近い血縁じゃないの。流れているのは何十分の一くらいだと思うわ。私のは先祖帰りみたいなものらしいの。」


「そうなんですか…」


「それを踏まえて考えると愛理ちゃんが圭人を覚えていないのは可笑しいのよ。」


「でも、圭人君だって覚えて無いじゃないですか。一概にそう言える訳じゃない筈です。」


「そう、二人とも忘れてるの。忘れさせられた、と言えるのよ。」


「………」


 もう、訳が分からない。この人が何を言っているのか全く分からない。


「さっき届けてもらった物よ。見てみなさい。」


 お母様が取り出したのは、写真だった。


 小さい頃の私と男の子が手を繋いでカメラに向かってピースサインをしている。


 …この子、見たことある。


 いや、見ただけでわかる。これは圭人君だと。


 でも、それとは別に、知っている。この光景、ここは公園で私とこの子はよくここで遊んでいて、この子は私の初めての友達で、私の初めての…


「痛っ!」


 急に頭が痛くなって、もう立っていられなくなりその場でしゃがみ込んでしまった。


「耐えなさい、思い出しなさい。あなたの大切な記憶よ。」


 お母様はキツい口調で言い放ってくる。


 痛い、痛いけど…少し思い出してきた。


 そう、確かこの子に会ったのは私の4歳の誕生日の時だった…




☆★☆★☆★☆★☆


 きょうはあいりの4さいのたんじょうび。パパがたくさんのひとをよんだからたくさんプレゼントをもらえた。


 だけど、おぎょうぎよくしていないといけないからすぐつかれちゃう。おへやにもどりたいけど、まだパパとママはおはなししているからはなしかけられない。


 パパのおはなししているひとをみると、すこしパパににているきがする。なんでだろう…


 よくみたら、パパににているおじさんのあしもとにあいりとおなじくらいのおとこのこがいた。


 そうだ!このことおはなしすればいい だ!!


 おはなししてたらきっとママがきづいてくれる。


 そうだ、このこもついてきてもらえばいっしょにあそべるわ!!


 さっそく、はなしかけてみよう。


「はじめまして、わたしはふうがいんあいりです。あなたのおなまえは?」


「ぼくはさいがけいとです。おたんじょうびおめでとうございます。」


 ぺこりとあたまをさげてくる。


「あら、圭人君はお行儀がいいわね。」


「いえいえ、愛理ちゃんの方こそ4歳なのにしっかりしていて羨ましいですわ。うちの圭人は…」


 ママたちはまたおはなしをはじめちゃった。


 いま、のがしたらまたいいづらくなっちゃうよ!


「おかあさま、わたしすこしつかれてしまいました。おへやでやすんできてもいいでしょうか?」


「あらそうなの?すみません、うちの愛理が少し疲れたようなので部屋に連れて行きますね。」


「いえ、子供には少し辛かったでしょうから仕方ありませんわ。」


「けいとくんもいきましょ、わたし、けいとくんとあそびたい!!」


「こら、ダメよ愛理。すみません、うちの子がわがままを言ってしまって…」

 ママにだめっていわれちゃった。うまくいくとおもったのに…


「ぼくはいいですよ。」


「え?」


「ぼくはあいりちゃんにプレゼントをもってきていないので、かわりにいっしょにあそびたいです。」


「ほんと!!じゃあいきましょう♪」


「愛理!!」


「いいですよ、圭人も一緒に遊びたいと言ってる事ですし。」


「そうですか…すみません。暫くの間、圭人君を預からせてもらいます。愛理、圭人君に失礼のないようにね。」


「はい、ありがとうございます、お母様!!」


「…凄いですね、愛理ちゃん。あの笑顔は反則ですよ。」


「そうでしょう?あれで何件契約が有利に進んだことか…」

 パパたちはあいりをみながらなにかはなしてるけど、いまはけいとくんといっしょにあそぶからいいや!!


 けいとくんのてをとって、けいとくんをあいりのおへやにつれてってあげた。


「けいとくん、おままごとしよ!!あいりがママで、けいとくんはパパね。」


「いいよ。」


 けいとくんはたちあがって、とびらをひらくまねをした。


「ただいま~」


「おかえりなさい、あなた。きょうはこひつじのこーそーやきとしたびらめのむにえるよ♪」


「こーそー?よくわからないけど、あいりちゃんのつくるりょうりはいつもおいしいね。」


「まぁ、うれしい♪はやくめしあがってみてください、あなた♪」






 たのしいじかんはすぐにおわっちゃう。


 けいとくんがかえっちゃうじかんになっちゃった。


「…またあそんでくれますか?」


「はい、またあそんでもらえたらうれしいです。」


 ママたちがいるからおぎょうぎのいいことばをつかってるけど、けいとくんは 『ともだち』だからおぎょうぎのいいことばはつかわなくていいっていってくれた。


「しつれいしました。」


 そういって、けいとくんはけいとくんのパパとママにつれられてかえっていった。


 けいとくんといっしょにいるときは、おぎょうぎよくしてなくていいからとってもらくでたのしかった。


 それに、ころびそうになったときたすけてくれたし、おかしもすきなのをえらばせてくれた。


 あいりのはじめてのおともだちはとってもやさしいこでよかった♪





◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 きょうはけいとくんとあそぶやくそくをしている。


 パパとママにおねがいしたらなぜかパパがよろこんでいた。


 つながりができるとかいってたけど、むずかしいのはまだよくわからない。けいとくんとあそべるならそれでいい。


 きょうはこうえんであそぶことになってて、けいとくんをむかえにいってからすぐにいくってめいどさんがいってた。


 くるまがつくとめいどさんはけいとくんのママにあいさつをしていた。


 あいりもけいとくんにちゃんとあいさつしないとあとでママにしかられちゃう。


「けいとくん、こんにちは。きょうはなにしてあそぶ?」


「えっとね、すべりだい!」


「じゃあ、すべりだいからね♪」


 けいとくんとてをつないでくるまのなかにはいると、けいとくんのママがてをふっていたのでけいとくんといっしょにてをふりながらいってきますといってこうえんにしゅっぱつした。





 またけいとくんとさよならのじかんになった。


 どうしてたのしいときはすぐにおわっちゃうんだろう?


 でも、きょうはけいとくんのかっこいいところをみれた。

 おっきいわんちゃんがこっちにはしってきて、こわくてなきそうになったけど、けいとくんがあっちいけってしてくれた。


 わんちゃんはおっきかったけどとってもおとなしくてしっぽをふりながらかおをいっぱいぺろぺろされた。


 さいしょ、わんちゃんこわかったけど、けいとくんがわらいながらなでてるのをみてるとあいりもさわりたくなって、さわってるとだんだんこわくなくなった。


 けいとくんといっしょにいるとこわいこともたのしくなってとてもふしぎ。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 あれから、けいとくんといっぱいあそんだ。


 けいとくんはどうぶつがすきでこうえんにいるとすぐにわんちゃんやねこちゃんとなかよしになる。


 けいとくんはあいりよりも1さいとししただけど、あいりよりけいとくんはなんでもできてすごい。


 あいりのほうがおねえさんなのに…


 でもでも、あいりのほうがけいとくんよりもえはじょうずにかけるんだよ!!


 けいとくんがかくとわんちゃんなのかねこちゃんなのかわからない。う~ん、ていいながらこまったかおをしてるからあいりがかいてあげるとうれしそうにわらってくれる。


 やさしいけいとくん。


 かっこいいけいとくん。


 どうぶつがすきなけいとくん。


 なんでもできるのにえがへたなけいとくん。

 いつのまにか、あいりはけいとくんがだいすきになってた。


 つぎはいつあそべるのかな?


 そうだ!!つぎあそぶときはけいとくんにたしざんとひきざんをおしえてあげよう。


 なんでもできるけいとくんにあいりのほうがおねえさんですごいところをみせるんだ!!


 そうときまったらおべんきょうをしなくちゃ!!


 おべんきょうをするようになったらパパとママはほめてくれた。


 けいとくんにおしえてあげるんだというとパパとママはうれしそうにけいとくんのおかげだね、ていっていた。


 いっしょうけんめいおべんきょうしたら、かけざんとわりざんもできるようになっちゃった。


 かてーきょーしのめいどさんはびっくりしてたけど、けいとくんにおしえてあげることがふえるのはいいことだとおもう。


 つぎにあうのがほんとたのしみ♪





☆★☆★☆★☆★☆


「…っあ、私…」


「大丈夫、愛理ちゃん?」


 圭人君のお母様が心配そうに私を見ている。


「お母様、私、少しだけ思い出しました…」


「そう、よかったわ。これから少しずつ思い出すといいわ。…で、どうだった?さっきの問題の正しい答えは解った?」


「はい、私は小さい時から圭人君のことが好きでした…でも、なんでわすれちゃったんだろう、あんなに大切だった時間を…」


「そこからは愛理ちゃんのお父様に聞きなさい。とても、大事な事だから…」


「わかりました、父に聞いてみることにします。…お母様、ありがとうございます。お母様のおかげで大切な記憶を思い出せました。」


「お礼は言わないで。もしかしたら、思い出さなかった方がよかったかもしれないから…」


「お母様…」


 きっと、お母様は全部知ってるんだと思う。


 私の記憶がないのにお父様も関係しているからこそ、親子で話し合うように促したんだと思う。


「…でもね、これじゃあフェアじゃないわ。だから、私は愛理ちゃん、あなたに味方する。小さい時のあなたたちの気持ちを知っているからこそ、ね。」


「お母様…私、圭人君が好きです。昔の私も圭人君のことを大好きだったけど、今の私の気持ちは昔の私よりもずっと、ずっと、強いです。だから、私…」


 一拍置いて、私はお母様の目をしっかりと見据えて、答える。


「圭人君を奪います。あの子達からも、圭人君の心も身体も全て奪って私のモノにします。」


「…いい目よ。私と同じ、奪う者の目よ…」


 お母様はニヤッと笑いながら私を見る。


 あぁ、この人もきっと奪おうとしたんだろう。


 そして今も奪いきれてないからこんな目をしてるんだろう。


 欲にまみれた薄汚れた目。


 欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて仕方がない、薄汚れた野良犬のような、誇り高い狼のような、餓えた野獣の目。


 今の私にぴったりだ。


 さぁ、踊ってあげよう。この人の手の平の上で踊り狂おう。


 踊る代わりにもらうモノはもらう。


 圭人君は私のモノだ。




☆★☆★☆★☆★☆


 体育祭が終わり、家に帰ると同時にお父様とお母様に連絡をいれた。


 お父様達は酷く驚いていたが構わない。


 私は真実が知りたいのだ。


 真実を知った上で圭人君を奪ってやるのだ。


「お父様、話してもらえますね?」


「…愛理、なんでお前があいつらと同じ目を…」

 変なお父様?なんで怯えてるんでしょう?


「さぁ、知っているんでしょう?私の記憶がなんで無くなったの?」


「…わかった、話そう…」


「あなた…」


「仕方ない、愛理はもう思い出しかけてる。手遅れだよ…」


 お父様は語り始めた。


 お父様曰わく、私達はもともと雅集院と言う一族から別れて独立した者達のうちの一人で、その際、雅と言う字を頂いて風雅院と名乗ったことが始まりで、そのうちの一つに才雅家も入っていた。


 その後、大企業にまで成長した才雅家と繋がりを持とうとトップである才雅雅人を私の誕生会に呼んだ。才雅家には一人息子がいて、あわよくば自分の娘と仲良くなれば深い関わりを持てるのではと淡い期待を抱いて。

 だが、その予想はいい方向で裏切られる。私達がお互いの事をとても好き合っているのがわかったからだ。


 そこで自分の娘を嫁にやれば風雅院の更なる発展に繋げられると思って許嫁にと持ちかけ、見事許嫁にすることができた。


 だが、そこで問題が起きた。


「許嫁の事が決まった次の日、私の元に奴らが来たんだ…」


「奴ら?」


「伏見雪枝、水鳥魅雷、唯前渚、あのイカれた女達がな…」


 その3人は才雅の子との関係を白紙に戻せと脅してきた。


 お父様はその3人に恐怖していたらしい。


 その3人もまた大企業の経営者だった。


 それだけなら何の問題も無く追い返せたが、この3人は一族の中でも一番能力が高く、そして危険視された存在だったらしい。


 なぜならこの3人、自分の目的のために親の地位を奪い、強制的に隠居させたと噂されていたからだ。


 だが、お父様が一番危惧したのはこの3人の会社からは悪い噂が一切出て来ないことだった。


 どの企業も探れば何かしら黒い部分が出るものなのに一切出て来ないのだ。


 それは、一見、健全な会社だと思われるが、違う。


 完全なる情報統制により外部へ情報が漏れる事を防いでいるのではないか。


 お父様はそう予想していた。


「もし、白紙に戻すならうちの会社に多額の出資をしてもいい、その代わりに愛理の記憶を消させてもらう、奴らはそう言っていた。恐ろしかった…奴らの会社にちょっかいを出していた企業が不自然に倒産したり、事故死が起きたりしているのに奴らがやった証拠が一切無く、完全に事故として扱われている事実に。もし、断ったら私達はどうなっていたことか…」


 お父様もお母様も震えていた。


「何よりも、あの目だ…あの目、目的の為なら手段を選ばない、目的のモノを我が物にしようとぎらつくあの狂った目…」


 お父様達の震えが酷くなっていった。


「なるほど、それでお父様達は私を売ったんですね?」


「…すまなかった。恐ろしかったのだ、奴らが、あの目が、…」


「ごめんなさい、愛理、許して…」


 お父様達は涙を流し、土下座をしながら謝ってくる。


「謝らなくてもいいですよ、お父様、お母様。私は怒ってなどいません。」


「「愛理…」」


 お父様達は涙を流しながら私が許してくれた事に安堵していた。


「ただ…一つだけ聞いて下さい。」


「何だい、愛理?」


「私、好きな人がいるの。」


「好きな人?」


「愛理…まさか、あなた!!」


 どうやらお母様は気づいたようだ。でも関係ない。


 お父様達は私を売ったんだから、私のワガママを聞くべきだわ。


「私は、才雅圭人を愛しています。だから、圭人君を奪います。あの子達からも圭人君の心も圭人君の意思すらも歯牙にかけずにね。」


「馬鹿な事を!!あいつらは才雅の息子を自分の娘のモノにするためにこんな大それたことをしでかしたんだぞ!!もしお前が才雅の息子を奪ってしまったら私達は…」


「黙りなさい。私を売ったことを許したのですから、私のワガママくらい聞くべきだわ。」


「やめなさい、愛理!!そんなことさせないわよ!!」


 ふぅ、やっぱりこうなるか…


「仕方ないわね…そんなに怖いんでしたらお父様達には安全な所に避難してもらうことにします。」


「何を言って…」


 お父様が言い終わる前に私は指をパチンと鳴らした。


「オヨビデスカ、アイリサマ。」 


「マーキュリー、お父様達をカナダの別荘に連れて行きなさい。それとお父様達の護衛にあなたの信頼できる腕利きをつけなさい。いい?決して別荘から出さないように。」


「イエッサー!!」


 お父様達の腕を掴んで持ち上げるマーキュリー。


「なっ、何をやっているマーキュリー!!離せ!!」


「無駄ですよ、お父様。ボディガード達は私の護衛として再雇用しましたから。」


「何だと!!」


「それと、お父様の名義の物は全て私名義に代えさせてもらいますからそのつもりで。会社の地位も私が譲りうけますので心配しないで下さい。」


「あ、愛理…」


 お父様達は唖然としている。


「それにしても、圭人君のお母様はすごいわ。あの人がいなかったらこうも上手くいかなかったでしょうね。」


「まさか、才雅圭、あの狂った女が愛理を手引きしたのか!?ちくしょう!!どうしてあの狂った女達は私達を!!」


「ダメよ、お父様。私の未来のお義母様をそんな風に言っては。お父様は仕事、頑張って来たから疲れてるのよ。だから…」


 私は当分会うことのないお父様達に最高の笑顔を送る。


「あ、い、りィィィィ!!!!」


「よい休暇(隠居)を、お父様、お母様。」





☆★☆★☆★☆★☆


 お父様達がいなくなり、静かになった屋敷で私は一人思いを巡らせる。


「あぁ、圭人君。また、愛理と一緒に遊びましょう。今度は帰らなくてもいいの。だって、圭人君が帰る場所はここ【私】なんだから…」


 ふと、鏡を見るとそこには昼間見たお義母様と同じ目をした女が立っていた。


 相変わらず最高ね、この女は。


 鏡の中の女は妖しく笑っていた。

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