波乱と安定のパジャマパーティー
「たーいちょ、お呼ばれ感謝っス。」
スカイブルーの長い髪の毛をポニーテールでまとめぶかぶかの黄色のワンピースのパジャマを着たヘルガが私の部屋に入ってくる。
久々に私用で会うヘルガ。仕事では副長を務めてくれているので、毎日顔を合わせてはいるが業務に追われてまともに会話もできていなかった。
あの歴史に残る戦いから一ヶ月、我が魔法騎士団は優れた対応力を認められ竜鬼人達の生活の向上に尽力した。
魔獣の多い北の大地で身を守れ、かつ魔術による柔軟な対応が可能な部隊はとても重宝された。
剣や武装での武力行使の他、魔術への高い理解力がある者で構成されている為、魔獣退治から生活インフラの充実までどんな仕事もできる。
その為、極寒の冬が来る前に住居の整備を特殊工作部隊の赤霧とも連携を取り働きずくめだった。
先日ようやく一段落付き、本国に戻り書類関係を片付けたので本日から三日間休暇となった。
というわけで、終戦したあの日のうちに約束をしたヘルガとルヴェリーを呼んでのパジャマパーティーなのだけれど…………
「私単純だからさ、いきなりでごめん。ヘルガは蜘蛛神様なの?」
聞いたら今までの関係が無くなるかも知れないけど聞かずにはいられない。
色々悩んだ結果、直球で聞くのが一番だと私の中のモコモコしていてフワごろっとした何かが叫んだの。
「そうっスね、その解釈で合ってるっス」
あっさり認めるヘルガ…………じゃあもう一つ確認しないといけないこと…………
「私が知っているヘルガは…………嘘なの? 演技なの?」
言ってしまった…………認めたくない…………今までのヘルガが演技だと信じたくない…………
ヘルガは悲しそうな顔をすると姿を変貌させる。見慣れたスカイブルーの髪が見事な銀色になり漂う雰囲気もガラリと変化する。
目の前には別人…………あの時見た、護りの蜘蛛神様様…………でも、ヘルガなんだ。
「グライシアよ、謀るつもりは無い。信じてもらえぬかもしれぬが、おぬしの知る姿も、紛れもない妾なのじゃ」
ヘルガはまた変貌し、何時もの姿に戻る。
「アチシはヴァルグランの民と明るく接する為にダーリンが遺した人格っス。欺く為ではなく民に寄り添えるようにダーリンが用意してくれたっス」
え~と…………
「つまりは…………もしかするとなんだけど…………素直に聞いたら教えてくれるくらいは信頼してくれてる?」
疑問を口にする。
「そうっスね、基本的に妾の方は歴史の影に隠してはいるっス。でも、軍では暗部の最高責任者もやってるんで知ってる人間もいるから隊長に聞かれたら教えたと思うっス」
なんか私考えすぎてたのかな? と頭を悩ましていると。
「私も知ってるし」
いつからいたのか、ベットにピンクでリボンがたくさんついたパジャマを着たルヴェリーが呟く…………えっ?
「わっ、ルヴェリーちゃん。いつからいたっスか?」
ヘルガも動揺してる。
「んっ、私単純だからさ、ぐらいからかな?」
なっ
「始めからじゃないっスか、でなんで知ってるっス? 今聞いたからじゃないんっスよね」
えっ、ルヴェリーそんな前からいたの?
「あのですね。マリア師匠の真っ黒お手紙を私、翻訳するじゃないですか。あれ、本文の他に雑談パート、日記パート、愚痴パート、惚気パートに分かれていて雑談や日記、惚気にヘルガさんよく出てくるんです」
はっ? マリア師匠って大賢者様のお手紙…………一度頂いたことがあって白い紙のはずが文字で真っ黒だったやつ…………ルヴェリーに解読してもらったけど…………
クリスメッサーの魔導炉運用のコツだったのだけれど…………そんなことまで書いてあったの?
「なっ、もしかしてじゃが…………あの、その色々主殿とのあれやこれやとか…………姉御の事だから、かなりはっきり書いてあったり………」
顔を真っ赤にしたルヴェリーが小さく、イエースと応える。
「い〜〜やぁ〜! 忘れるっス、忘れてなのじゃ〜」
ヘルガがルヴェリーの肩を持ち前後に激しく揺らし、首がもげる程頭がガックンガックンとする。
なんか、色々考えすぎてたのか…………ヘルガはヘルガだね。
さて、ルヴェリーを助けて楽しいパジャマパーティーを始めよう!




