青空の下、君の温かさに触れている
雲一つない青空。日差しは弱く、涼しい風が吹いている。夏にしては過ごしやすい天気だ。
こんなにも良い天気だというのに、僕達は近くの公園でブランコに揺られている。せっかくだから何処かへ遊びに行こうと誘ったものの、具体的に何処へ行くかも決めていなかった為、それを決める為にブランコに揺られている。
「水族館とかどう? 小学生以来行ってないよね」
「嫌。今はシーズンだから、人が沢山いる。そんな場所に君を連れていけない」
「じゃあ、海」
「論外」
「プラネタリウムとか」
「暗闇に紛れて君を襲う輩がいるかもしれない」
「僕って賞金首だったりする?」
「ん~、当たらずとも遠からず」
こんな風なわけで、中々行き先が決まらず、かれこれ一時間はブランコに居座ってる。幸い、公園には僕達以外誰も訪れていない。おかげで変人扱いされずに済んでる。
「逆に聞きたいけど、キリコは何処に行きたい?」
「君となら何処でも」
「じゃあ水族館行こうよ」
「貸し切りなら良いよ」
「そんな贅沢出来ないよ。第一、水族館に二人だけって……怖いじゃん」
「……確かにそうね」
「キリコって、クラスの人から誘われてないの? 何処かに遊びに行こうとか」
「誘われてるよ。あんまりメッセージがくるもんだから、君以外の連絡先を全部削除したよ」
「大胆な解決法だね」
「むしろ、どうして君は消さないのかな? 今朝覗いたけど、まだ木田さんと連絡を取り合ってるみたいだけど。なに? 浮気?」
「だって、返事を返さないと失礼じゃん。挨拶されて挨拶し返さないのと同じだよ」
「携帯貸して」
言われた通り携帯を渡すと、キリコは手馴れた手つきで暗証番号を解除し、何らかの操作をした後、僕に携帯を返した。確認してみると、キリコ以外の連絡先が消されていた。
「そういえば、今年は実家に帰らないの? 毎年二日か三日、実家に帰省してたけど」
「……そうね。おばあちゃんとおじいちゃんに改めて紹介しないと。今までは写真でしか紹介出来なかったけど、やっぱり実際に会わせないとね。それじゃあ、明日からの君の帰省に同行して、次に私の実家に行きましょ」
「え? なんで僕達の帰省にキリコもついてくるの?」
「だって、挨拶しないとだし。未来永劫、君の伴侶となる私のさ」
「時期尚早な気がするけど……じゃあ、今日は帰って、荷物の準備しようか」
ブランコから離れ、キリコの手を握って公園から出た。
「あ、そうだ。ねぇ、キリコ」
「ん?」
「脅迫書? 脅迫文? そういうのって届いてる?」
「急に怖い事言うね。怖いからくっつくね」
キリコは僕の後ろに移動すると、抱き寄せるようにくっついてきて、僕の頭頂部に顎を乗せた。その様子からして、身に覚えが無いのだろう。
じゃあ、木田さんが言っていた脅迫文は、一体誰の仕業なんだろうか。
それにしても……
「……キリコ。歩き辛い」
「ね~。私もそう思うよ」
「……今日、涼しくて良かったね」
「……うん」
夏の青空の下、僕達は心地良い温かさに包まれている。




