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瀬戸内マリンドラゴン  作者: 井田雷左
序部 マリンドラゴン現る
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第1話 過激派の殺し方教えます Act.1 炎の剣 4



    4



♪心無い三角形が邪魔をしている生活が成立している

 真ん丸の頭の中の人生を解除した先する前わたしが

 剥き出しの逆再生を味見して牛乳みたいな声が出た

 工程を用いる道理を音が避け踊り違えるわたしの魂


♪くらい せまい あたたかい

 顔を洗う水 踊る 踊る 蹴る

 きづいて ほしい


♪からだの 中のわたしの 中

 つくられる模様 色 かたち

 うれしそう 誰かが嬉しそう

 何処へ向かうだろう


11時開店の街道沿いのカラオケボックス。

夏休みだから元同級生が集団で来ていてもおかしくない。

だから、ゆったりとした紺のワンピースに、つばの広い帽子に、マスクといういでたちでくみ子はここにいた。

この土地にはチェーン店のカフェというものがないから、個人営業の喫茶店を使うよりと四谷雛が青のカローラでこのカラオケ屋まで送ってくれた。

くみ子は自分の部屋でいいです、と答えたのだが、雛は「いいじゃん、たまには外、出ないと。ついでに歌っちゃおう」と彼女の部屋の玄関で云った。

雛と名乗った女性は30代後半だろうか。

ショートカットにきれいな瞳、スニーカーで快活に動き、笑顔を決して絶やさないひとで、くみ子は共感をした。

そして店に着くと、緊張をほぐさせるためか、くみ子にマイクを渡した。

曲の間奏中に雛はくみ子に好みや食べられないものを聴いた。

そして、銃数分後にはこの個室のテーブルはピザ、フライドポテト、唐揚げ等の軽食、パンケーキ、パフェ、わらびもち等のスイーツにアイスティーが2杯と、これらでそのテーブルは埋め尽くされた。

高校に行かなくなったふた月、朝はパン1枚かご飯半合に数品のおかず、昼は冷食か袋麵、夜は遼斗が持ってきてくれる弁当というローテーションを繰り返していたので、この料理の数々は多分、本部からのパックか冷凍食品だろうが、豪勢さを感じることができてくみ子の気持ちは久々にアガった。

「さぁ、食べて、食べて」と雛が云う時にイントロが流れてきた。

曲はプリンセスプリンセスの「ダイヤモンド」。

雛が歌う間、くみ子はそのテーブルに並べられた食べ物を食べた。

ピザを食べた後にパフェ、唐揚げの次にわらびもちとしょっぱいもの・甘いものも交互に食べ、アイスティーで流し込んだ。

雛、ニヤリと笑う。

それに気づいてくみ子、恥ずかしそう。

けっこうパワフルなヴォーカルだったためか、雛は歌い終わると直ぐにアイスティーをストローで吸った。

そしてインタビューが始まる。

テーブルにはいつの間にかUSBポートに差し込めるレコーダー。

そしてくみ子が語るのは生い立ち等の過去から現在。

「お母さんが出ていってから、なんか働いたりしなかったの?」

「バイトとかですか?」

「それもあるけど、何か男の人に関係すること」

雛にそう云われると歌唱と食事でフランクな笑顔となったくみ子の表情は固まったが、直ぐに作り笑顔で態勢を整えた。

「ないですよ。私にそんな度胸もないし」

「でもね、くみ子ちゃんみたいなコ、いっぱい見てきたから、お姉さん判るの。こういうインタビューはウソやはぐらかしは効かない」

くみ子は既に10万受け取り、カラオケ屋の支払いも持ってくれると聴いている。

だから、負い目がある。

「一回だけ、松山で関西から旅行に来たという年上の男の人と会って、そういうところに行きました」

くみ子はしぼり出すように云う。

雛がくみ子の手を握る。

「大丈夫、大丈夫よ」

「でも、四谷さん!直ぐに逃げて来たんです!本当です!信じて下さい!」

―遊園地や焼肉食べ放題と同じなんだよ。

「うん、信じるよ。でもカレシくんはそのことを知っているの?」

「知らないです。話してないし、話す必要性を感じてないし」

「カレシくん、大丈夫なの?信じていい男の子なのかな」

「はい、とても優しいし」

「うん、信じるよ。でもさ、私たちはシェルターも経営しているんだ」

「!」

「そこでは無料で出産から、子育ての仕方を教えて、当面の衣食住はまかなわれる。職業訓練として、職場に行ってもらうけど、その間の赤ちゃんの面倒はこっちで見る。そんなNPO法人。ね?引っ越して・出産して・職探してなんて、いっぺんはムリだよ。まず、うちのシェルターで産んで・準備ができたらカレシくんと合流してはどうかな?その間にカレシくんは新居と新しい仕事を探せるじゃない?」

そんなシェルターを描いた映画をそういえばサブスクで観たことあるような気がした。

確か出産する女子中学校を不二家ミルキーのCMに出ている若い女優が演じていた。

「すごくいい話だと思います。でも、今、あのひと、私のために一生懸命なんで」

「うん、ちゃんとカレシくんと相談するといいよ。仮にね、気を悪くしないでね。そのカレシくんと別れてもそのお腹の子が物心つくまでシェルターは面倒みるよ」

くみ子の気持ちはかなり動いた。

更に今回の取材費として又10万円貰えたからその心に拍車をかけた。


くみ子がいたカラオケ屋から徒歩で20分、高台にある高校では夏休み誰もいないはずの教室に教師の五島が冬月若菜と深い口づけをかわしていた。

―職員室で資料や教材の片づけがあるんだ、手伝ってくれないか。

そう五島に云われて、若菜はやってきた。

こうなるのは二度めだった。

そろそろ初めて、厨多遼斗とそうなるだろうという雰囲気になったのに、そうならなかったのは、遼斗の体臭からなのか・素振りからなのか、他の女の体臭だか・気分を感じたからだ。

「もう私にバレてるって気づいているよね」

そう若菜が云うと遼斗は「ごめん」とだけ云って後、無言となった。

―言い訳を考えているんじゃない。もう私と話すことがないんだ。

「先生はなんで、私とこれ以上先にいかないんですか」

若菜は呼吸もたえだえにそう問うた。

「半年ちょっとで卒業すれば大手を振って付き合える。それまでは二人の関係を汚すようなことをしたくないんだ」

遼斗に裏切られてから、若菜は荒れた。

それを察した五島に呼び出され、名前は明かさず失恋の話をした。

理科準備室にいることが多い五島はそこでパーコレーターで煎れた珈琲を若菜にふるまった。

茶請けのお菓子も出され、いつしか若菜にとってこの部屋が居心地のいい場所になった。

そして夏休みの前、最後の理科準備室で、別れ際、五島に「キスしてみる?」と尋ねられ、若菜が困り笑顔をしている隙に、唇を五島に奪われた。

『私、先生にムリヤリされたっていいますよー』とLINEをかわす仲となり、一週間に1回は人目を忍んでこのように会う関係になっている。

「私、大阪か東京、行きたかったかのに」

「四国にもいい大学いっぱいあるじゃないか」

「先生、結婚しているとかナシですよ」

「見せようか、戸籍」

どこかは二人には判らないが、運動部の一団が、そろぞろ帰ってくる喧騒が聴こえたので、二人は離れた。

「じゃあ、私は帰るね」と若菜は五島に気を遣った。

五島は本日の常駐役なのだ。

グラウンドから戻ってきた生徒たちと顧問やコーチたちと五島は教室で昼ごはんを食べた。

皆、午後の練習に戻ってきて、教室のゴミ箱から中身を回収していると、その五島の背中は女子高生の甘い台詞を聴く。

「五島先生、資料や教材の片づけの手伝いにきました」

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