第48話 仲間呼んでくるぞ
ロウのアジト。
カタリナ、サクラモカ、ジーナ、ロウが地図を囲んでいた。
ちょうど先ほど領土分けをしたばかり。
ロウがふと眉をひそめて問いかけた。
「なぁ」
少しだけ首を傾げる。
「なんでルキウスを狙うんだ?
お前らみたいな若い女の子らは、
ああいうの好きなんじゃないのか?」
少しの間。
三人が同時に口を開いた。
「ムカつくからぶん殴る」
「嫌いではない」
「酒以外興味ない」
ロウが一瞬固まる。
「おい」
額に手を当てた。
「一人ずつ話せよ。
何言ってるかわかんねーよ!
自由すぎるだろお前ら」
三人、同時に黙る。
「……」
「……」
「……」
ロウがため息をついた。
「今度は揃って黙るのかよ。
協調性どうなってんだ」
少しだけ笑う。
「とにかくあれだ。
ムカつくんだな?」
3人をゆっくりと見渡した。
「分かるんだろ?
あいつらの胡散臭さ」
また同時に口を開いた。
「見るからに胡散臭い」
「胡散臭さは確かにある」
「酒以外興味ない」
「だから同時に喋んなって!」
ロウのツッコミが部屋に響いた。
カタリナが腕を組んで逆に問いかけた。
「じゃあさ」
顎でロウを指す。
「お前はどうなの?」
ロウは少し視線を外した。
「俺たちか?」
軽く肩をすくめる。
「まぁ……なんだ。
ちょっとした因縁があってな」
少しだけ声が低くなる。
「あいつらを対賊局に突き出すために、
この星系に追って来た」
モカが即座に反応した。
「海賊が対賊局に?」
ちらっとカタリナを見る。
「おねーちゃん。
こいつもちょっと胡散臭くない?」
カタリナが頷く。
「超胡散臭い。
でも悪党ではなさそう」
ロウが肩をすくめた。
「胡散臭くて悪かったな」
軽く笑う。
「俺たちはお前らと違って、
本当は海賊じゃねーのよ」
指で自分を指す。
「舐められないように、
海賊名乗ってるだけだ」
少しだけ焦らして答える。
「賞金稼ぎだ」
モカの目が少しだけ鋭くなる。
「おねーちゃん」
声を落とす。
「ヤバくない?
こいつ、私たちを対賊局に突き出すとかしない?」
ロウが手を振る。
「そうして欲しいならやるけどよ」
あっさり言った。
「別にその気はない」
少しだけ真面目な顔になる。
「悪党は散々見てきた。
お前らは……まぁ」
軽く笑う。
「そこまで悪そうじゃねぇ」
そして。
「どうせ貴族の道楽か何かだろ?」
カタリナのこめかみがぴくりと動いた。
「(カチン)」
小さく呟く。
「モカ、やっぱりこいつ悪党だわ」
にっこり笑う。
「タコ殴りにして、
身ぐるみ剥いで宇宙に捨てよう」
モカが即座に止める。
「待って待って」
小声で。
「ここカチンするとこじゃない」
ロウをちらっと見る。
「こいつ馬鹿そうだから、
利用しよう。
人が良さそうで、何かと便利そうだし」
カタリナ、数秒考えて。
「……それもそうか」
ロウが額を押さえた。
「おい……。
そういうのはな」
ため息。
「本人に聞こえないように言うもんだ」
少し間を置いて。
「まぁいいや」
手をひらひらさせる。
「この星は分け合うってことでいいな」
カタリナが頷く。
「いい」
すぐにモカを見る。
「モカ、みんな呼んできて。
アジト作ろう」
モカも頷く。
「うん、わかった」
少しだけ首を傾げる。
「おねーちゃんは?
ここに残る?」
カタリナはあっさり答えた。
「うん」
空を見上げる。
「グラーニャ星系まで二十日でしょ?
暇だからパス」
ニヤリと笑う。
「それよりもロウとジーナと一緒に賞金稼ぎして待ってる」
ロウが即座にツッコむ。
「いや待て。
俺の許可なしで勝手に行動決めるな」
カタリナが舌打ちした。
「チッ……面倒くさい奴だな」
「舌打ちすんなって!」
ロウがツッコむ。
「ところで」
少しだけ視線を変える。
「お前らの海賊団って、
あの壊れたコルベット一隻だけか?」
モカが答える。
「いや、一応……。
ここの海賊から奪ったコルベット三隻ある」
ロウが頷く。
「そうか、欲しかったらだが……」
軽く言った。
「三番ドックの巡洋艦やるよ」
一瞬、空気が止まる。
「それもどうせ、ここの海賊から奪った船だ。
売る予定だったしな」
モカが目を見開く。
「え?いいの?巡洋艦だよ!?
コルベットでもなく」
「あぁ」
ロウはあっさり頷く。
「実は俺たちはもうそれなりの艦隊を持ってる」
ニヤッと笑う。
「どうせお前らコルベット海賊団だろ?」
カタリナが口を開く。
「は?私たちは――」
がしっ。
モカが口を押さえた。
「ありがとう!」
満面の笑み。
「予想外に太っ腹なのね!」
そしてカタリナに向けて小声で呟く。
「いいの!おねーちゃん黙ってて。
貰えるものは貰おう!」
カタリナがぼそっと言う。
「それもそっか……。
モカ、
こいつモテなさそうな顔してるし、
美女姉妹に囲まれて、のぼせてるんじゃない?」
「うんうん」
ロウが盛大にツッコむ。
「だから聞こえてるってーの!!」
指を差す。
「やるのやめるぞ!?」
カタリナが即答する。
「モカ、早く乗り込んで。
みんな呼んできて」
モカが敬礼する。
「了解!」
振り返る。
「バッカニア号の乗組員借りるよ」
ジーナを見る。
「ジーナ、おねーちゃんお願いね」
ジーナがふらっと敬礼した。
「うぃっく……任せてくださいっス」
ロウが呆れた顔で呟く。
「……本当に調子いい奴らだな」
「アジト作るまで、私とジーナの部屋貸してね。
一番綺麗な部屋」
「……調子良すぎだろ」
あとがき
…ふぅ、ようやく一段落ね。副団長のサクラモカよ。
ねぇ、聞いた?あのロウって男、海賊じゃなくて「賞金稼ぎ」だったんですって。
おねーちゃんの悪党センサーが反応しなかったのも納得だわ。
でも、私たちのことを「貴族の道楽」なんて言うから、おねーちゃんの逆鱗に触れちゃって……止めるのが大変だったんだから!
でも、そのおかげで大収穫よ。
見てよ、あの巡洋艦!
コルベットしか持ってなかった私たちに、タダで巡洋艦をくれるなんて、ロウって本当にお人好し……というか、チョロすぎない?
おねーちゃんの言う通り、私たちの美貌にのぼせてるのかしらね。
グラ―ニャに戻れば弩級戦艦持ってるって知ったら……。
もう返さないけど。
貰えるものは病気以外なら何でも貰うのが赤毛猫海賊団のモットーよ。
おねーちゃんとジーナをロウのところに押し付けて……あ、失礼。
「預けて」いくのは少し不安だけど、今のうちに私はグラーニャ星系に戻って、みんなを連れてくるわ。
二十日間の船旅、おねーちゃんがいなくて静かなのは嬉しいけど、あの「おバカと酔っ払い」のコンビがロウのアジトを壊してないことを祈るしかないわね。
じゃあ、私は本隊を呼びに行ってくるわ。
アジトが完成する頃には、もっと賑やかになるはずよ。
みんな、私が戻ってくるまでおねーちゃんの暴走を見守っててね!




