235 ウィルの真意
オーウェンの話を聞いてようやく僕は理解した。
オーウェンがたまたま卵を壊されるところに遭遇したのではなくて、ウィルの方から助けを求めていたということを。
僕は隣にドラゴンの姿でちょこんと座っているウィルの背中に軽く触れた。
僕が触れた途端、ウィルは一瞬身体をピクッと反応させたが、それ以上は動かなかった。
僕はゴツゴツとしたウロコを軽く撫でた。
「ごめんね、ウィル。まさかウィルの方から助けを求めていたなんて知らなかったんだ。卵の状態のまま、親と離れ離れになったから、ほんの少しでも両親と会えたら嬉しいかなって思ってしまったんだ」
ウィルは相変わらずドラゴンの姿のままで、その表情からはどんな気持ちでいるのか想像も出来ない。
ウィルも感情を読まれたくないからこそ、こうしてドラゴンの姿のままでいるのだろう。
すると、ドラゴンの姿のままだったウィルが不意に人間へと姿を変えた。
「…ウィル?」
戸惑いながらウィルに声をかけると、ウィルは僕に顔を向けるとにっと笑顔を見せた。
「ありがとう、エドアルド。僕の事を気遣ってくれて。だけど大丈夫だよ。あの二人は確かに僕の両親だけど、僕の生みの親というだけでそれ以上でもそれ以下でもないからね」
そう言うなりウィルは僕に抱きついてきた。
予想外のウィルの行動に僕は思わずバランスを崩しそうになったが、何とか持ちこたえた。
「それに僕にはこうして僕を気遣ってくれる優しいエドアルド達がいるからさ。これからは捨てられた者同士、仲良くやっていこうぜ!」
ウィルの言葉に僕は目を丸くした。
『捨てられた者同士』?
確かに僕も実の両親から捨てられた存在ではあるけれど、ウィルにそんな話をした覚えはないぞ。
ウィルに抱きつかれたまま、向かいに座るオーウェンに目をやると、相変わらずのキラキラスマイルを僕に向けた。
やはりこいつが犯人か。
「エドアルド君に卵を渡すまでは私が温めていましたからね。その間にエドアルド君についてお話をしていたんですよ。だからウィルはエドアルド君の事は何でも知っていますよ」
何でもって、一体どこまで喋ったんだろう?
そもそも、オーウェンは僕の事をどのくらい知っているんだろう。
詳しく問い詰めたいけれど、逆に質問攻めに合いそうなので深く掘り下げるのは止めにした。
それよりもあのドラゴン族の国王夫妻がウィルを取り返しに来たりはしないのだろうか?
僕は抱きついているウィルの身体を無理やり引き剥がして座らせた。
ウィルは不満そうにちょっと口を尖らせているが、今はそんなのは無視だ。
「オーウェン。あの二人がウィルを取り返しに来たりはしないのかな?」
僕の不安が伝わったのか、オーウェンは安心させるようなふわりとした笑みを僕に向けた。
「大丈夫ですよ。あの二人にもドラゴン族の国王夫妻としてのプライドがありますからね。一度手放した物を返せとは言ってきませんよ」
オーウェンの言うように確かに他人に知られては外聞が悪い話ではあるし、先に卵を処分しようとしたのは向こうだからな。
それに後から取り戻そうと思うくらいなら、最初から捨てずに両方とも育てれば良かっただけの話だ。
その上でどちらかを後継者に選べば良かったのに…。
そこでふと、僕の両親やエドワード王子の顔が浮かんできて、僕は頭を振って頭の中から彼らを追い払うのだった。




