目線
少しだけ肌寒く
ひんやりとした雨が降り続く梅雨の時
「濡れちゃったな」
髪の毛も肩も
身体は少し冷えていた
交わる視線
感じていた
知らないフリして
気づいてないフリして
貴方の視線は
私の胸を突き刺すのよ
また背伸びたのかな
日に日に男の子から男の人に変わって行った
彼は自分も雨に濡れたはずなのに
私の横にタオルを置いて
そそくさと去った
私は下を向いて
目頭がきつくなるくらい
目をつぶった
彼が置いていったタオルで顔を隠して
真っ赤な顔を隠した
手帳を開いて
「これどうしょう....」
手に持ったのは
11個の数字が書かれた一枚の紙切れ
男性に慣れていない私は
もちろんこんな経験もないわけで
そんなこんなであれから一週間も経ってしまったのだ
「かけてみようかな」
番号を押そうとした手をとる誰かの手
「もしかして、僕にかけようとしてくれた?」
上から感じる目線に耐えられずに視線をそらしてしまう
「あっはい」
声が小さくなってしまった
聴こえたのか気になって
彼の方を見てしまった
「やっと、目が合ったね」
視線は確かに重なった
それでも心臓が唸ることはなかった
あの日とは違う
うまくわかんないや
「ご飯でもどう?」
このまま家に帰ってゆっくりするつもりだった
お金もそんなに持ってなかったし
普段ならきっと断ってた
「行かない?」
首をかしげた彼の視線から
また目をそらした
んーこういうのは慣れない
なんとなく縦に首をふった
少しでも気持ちを動かされたのかもしれない
「じゃあ!行こっか!」
伸ばされたその手をとってしまったら
幸せになれるのだろうか
あの時の私は自分の気持ちさえもわからなかった
今でも分からないままだった