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体を封じ込められたイライザの顔色がみるみる青ざめて口の横から泡を垂らしだす。終わりは呆気なく、そのまま落馬したイライザは目を見開いたまま絶命した。
「イライザ様……?」
側近の一人と思しき老齢の兵がイライザを仰向けにしたが、やはり胸が上下することもなければ目を揺らすことすらなかった。
場になんとも言えない緩みを感じ、弓兵たちは弓を番えることをやめ互いの顔を見合わせている。
「アリシャ、大丈夫か?」
ボリスがそっと声をかけて来たが、アリシャはイライザから目を離すことが出来なかった。アリシャが力を使わせなかったことでイライザはあっさり死んだのだ。
視界の端で素早く動く者が居たが、アリシャはそこまで注意を払うこともなかった。すべてが呆気なく終わったことに完全に脱力し、自分たちを覆っていた防御すら解いていた。
ドスっと重く熱いものを押し付けられたことに驚き振り返ると、間近にルクの顔があった。
「アリシャを殺さなければ……アリシャを」
うわ言を繰り返すと、アリシャの体に刺さったナイフを引き抜きもう一度刺そうと天高くナイフを掲げる。アリシャは自分の血液がナイフから落ちてくるのを愕然と見上げていた。
「アリシャ!」
ボリスの叫び声が耳に届いていた。
掲げられたナイフが火に包まれ、それは瞬く間にルクの全身に広がっていった。
「ルク……」
背中は火傷をした直後のように熱を放ち、アリシャは目をギュッと瞑った。
(人を殺めたバツなのかも……)
直接的ではないが、イライザを殺したのはアリシャだ。その報いを受けているのかもしれない。
死を覚悟し始めたら熱かった背中からゆっくりと熱が引いていくのを感じ、アリシャは瞼を上げた。
(力を感じる)
力の源を探りながら振り返ると、手を翳すボリスがいた。
「ボリス……あなたなのね?」
問いには返さずボリスは手を下ろしてアリシャに駆け寄り、背中の傷を確かめた。
「塞がってる」
確かにアリシャの感じていた熱い感覚はなくなっていた。
「力が、力が転生したのね? そうでしょ?」
絶命したイライザの亡骸が地面に転がっている。その横ではルクが転げ回り、襲いくる火に逃げ惑っていた。兵士たちがまたしても外套や砂をかけて火を消した。プスプスと湯気を上げるルクの髪はチリチリに縮れ肌の裂傷も激しかった。
「ルクを治療しよう」
ボリスは宣言し、自分の手をかざした。ボリスの手から何が出ているのか普通の人には感じ取ることは出来ない。時間を遡るように傷口が自らの意思で戻っていくようだった。




