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桃太郎の独白
「私たちは大丈夫だから、鬼と戦うなんて言わんでおくれ……」
眉を寄せるおじいさんを横目に、二人と向き合う。
「誰かが立ち上がらないと、次の冬は越せない。ならば、俺はその誰かになりたい」
手を膝に置き、構える。
説得の言葉なら、いくらでも用意していた。
剣を奮った事は、一度も無い。
誰かに暴力を振るったことも――
鬼が島を前に、体は強張り、足は震えていた。
相手は鬼だ。説得は通用しない。
既に被害は甚大で、剣には剣で対抗するしかなかった。
逃げたくとも、声が震えようとも、
ゆっくり、足を動かし、船へ乗り込む。
付き従うのは、道中雇ったつわもの達。
彼等の命をも背負い、硬直していた肩を動かす。
真っすぐ、鬼ヶ島を見据えた。
拾われ、命を救われた赤ん坊の時から、
俺は、返す側の人間になっていた。




