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蟻が侵略者達を食らい尽くすまで  作者: 未来
3章 北の国へ
19/19

19 救済する神

「かみ、さま…たす、けて…」


 少年の言葉を聞いて、貴族の少年と護衛達が嗤った。


「馬鹿かてめぇ!? 神なんてこの世にいねぇんだよ!! 」


 貴族の少年は親に甘やかされて欲深く悪意に満ちていた。


 金で雇われた護衛達も貧民たちを暴力や性欲を満たすための道具と弄んできた。


 神なんていない。金と権力がある奴だけが生きていい。


 ブタ貴族が笑ながら引き金を引こうとした時、銃を持つ手に蟻がいた。


「あぁ、なんだこれ…っ、いてぇぇぇ?」


 蟻がブタ貴族の手にかみつき血が地面に流れた。


「ど、どうしました? ぼっちゃん…て、うぁぁぁぁ!?」


 神を嘲笑った者達の体に蟻達がまとわりついた。


 手足の皮膚を食われ、骨や肉を強酸で溶かされて男達は騒ぐ。


「いでぇぇ!! いだいよぉ!! 助けて、助けて!! 母様!! 父様!! 」


 ブタ貴族の少年は銃を落とし泣き叫んだ。


 蟻達は男達の体を食らいながら、耳の中へ進む。


 鼓膜を食い破り脳へと進み激痛に襲われて次々と倒れてく。


 頭の中を異物が食い破って進み苦痛と恐怖で気絶する者もいた。


「お、お前ら!! 俺を、たすげろぉ!!」


 自分を守る護衛達が倒れて、ブタ貴族の少年は周囲を見渡した。


 周りにいるのは死体と餓死寸前の少年だけ。


 体中にまとわりつく蟻達が脳に入ってくる。


「うぁぁぁぁ!! あぁ、やめろぉ!! いやだぁ!! たずげで、だずげでぇ!!」


 ブタ貴族の少年は倒れながら助けを請うた。


 これまで狩りで命乞いしてきた者と同じように地面に這いつくばりながら叫ぶが、全員蟻に脳を支配されて白目を向いた。


 蟻達に支配された男達は黙ってしまい、倒れている少年は困惑していた。


 あの黒いのはなんだろう? 


 どうして、あの人達は血を流しているんだろう?


 そんな事を考えていると、数匹の蟻が少年を囲った。


 口や肛門から黒い液体を出し、地面が溶けた。

 あらゆる生物を溶かしてきた強酸を体内から全て出すと蟻達は少年の口の中に自ら入ってくる。


「ぐぇ…」


 突然口の中に入ってきた異物に少年は驚くが空腹で意識が遠のく中、口をモゴモゴと動かし蟻を食べた。


(美味しい……)


 口の中で甘い果物の味が広がる。


 強酸を抜いた蟻達の体はこれまで同族や動植物を食らい栄養が溜まっていて美味だった。


 奥歯で噛んだ蟻の血からイチゴ味がした。


 両親が死ぬ前に自分に食べさせてくれたイチゴの味を思い出し少年は嬉し涙をながした。

 クチャ、ペチャ


 蟻達の肉体をかみ砕き、血が舌を濡らす。


 腹が膨れて力が湧いてくる。


 死にかけていた少年の心と体に活力がみなぎる。


 この蟻達は何なんだろうか? と疑問があったが、餓死寸前だった少年は


「ありがとう、神様…」 


 大粒の涙を流し、蟻達に感謝するのであった。


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