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ザラザラした感触がして目を覚ますと目に入ったのは、私を舐めている舌と白い狼の顔。既視感がする。
ぼんやりとした頭で記憶を辿ろうとして、死ぬ間際の記憶がフラッシュバックした。
「キャン」
悲鳴をあげたつもりなのに変な鳴き声が出た。
ペロッと、またザラザラした舌で舐められる。すると昂ぶっていた気分が落ち着いた。なんともいえぬ安心感がする。
あれ、なんで食い殺された相手に親しみなんか覚えたんだろ?
そこで、ふさふさしたものに囲まれていることに気づく。周りを見てみると大きい狼のミニチュア版(尻尾は一つだ)が6匹いた。
ということは……自分の手を見てみるとそこには狼の足があった。
どうやら私は異世界転生し、更に魔物に転生したようだ。
何回死んでんのよ、私。
自分に呆れていると、突然兄妹の一匹が飛びかかってきた。それを素早くかわすと仕返しとばかりに飛び乗ってやったものの、すぐに反撃されて二匹は地面をゴロゴロと転がり取っ組み合いを始めた。
それをきっかけにあちこちで追いかけっこなど、じゃれあいが始まった。
って、なに戯れてんだ、私。
しばらくするといつの間にか姿を消した親狼が何かをくわえて戻ってきた。それを地面に落とす。
あれは……ゲームでお馴染みのスライムだ。兄妹たちは競うようにスライムに食らいつく。私は呆然としてその様子をだだ眺めていた。うう……スライムの内臓が見える。ミジンコの中身と似てる。
自分の身体より大きいそれは兄妹たちの食欲の前にあっという間に平らげられた。
満腹になった兄妹たちは身を寄せ合いそれを包み込むように親狼も身を丸めて寝てしまった。一人は心細い。仕方なしに私も一緒になって寝た。
次に目を覚ますと親狼の姿はなかった。前は酷い目にあわされたが、今はいないと心細い。兄妹たちも同じ様な心境だったようで戸惑っているのがわかる。
待てど暮らせど親狼は帰ってこなかった。
兄妹たちはそれぞれ思い思いな方向に散っていった。諦めて狩りに向かったのだろう。
私はまた取り残された。
思い返せば、前世でも要領悪かったよなー。この世界に来てからも色々失敗したっけ。
だが、自力で生きていかねばならないこの状況でこれは不味い。よし、今からは心を入れ替えて頑張ろう!
身体をぶるぶるっと震わせると気合を入れ直して狩りに向かった。
意気揚々と狩りに向かったものの、全く獲物が見つからない。何もいないわけでわないがどれも自分より強そうだった。おそらく最弱のスライムも、集団で行動していて迂闊に近づけない。迂闊に近づけば絶対集団リンチにされる。
結局は無駄に体力を消耗して終わった。
最早空腹が飢餓に変わりつつある。
地面に生えている草でさえ美味しそうに見えてきた。
フラフラと彷徨っていると、元の場所に戻って来てしまっていた。
おや?先客がいた。そのうちに他の面々も疲れた様子で戻ってきた。みんな狩りに失敗したようだ。あー、なんか兄妹たちと謎の絆を感じる。
それから自然と、協力してまずはスライムを狩ろうという流れになった。
一応同族なのだ。態度や鳴き声から言わんとすることが何となく伝わってくる。
さあ、リベンジマッチだ。
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