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今はスライム狩りの真っ最中だ。獲物は10匹程度のスライムの群れ。赤、青、黄、紫などなかなかカラフルな色をしたスライムたちだ。兄弟の中でも一際大きな体格をしたやつがそろそろと忍び寄る。
他はスライムたちを遠くから囲む。大きな奴が大きな声を上げ、スライムの群れに飛び込む。
不意を突かれたスライムたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
よし、分散作戦成功だ。私たちははぐれたスライムを狩る。
ばらけてしまえばこちらのものだ。
一番近くにいた紫スライムに狙いを定める。攻撃を仕掛けようとして、悪寒が走った。本能的に右に跳ぶ。どうやら紫スライムが身体から何かを飛ばしたようだ。地面に紫色の粘液が落ちている。見るからに毒々しい色だ。
嘘でしょー。スライム地味に強い。まさかこんな能力があるとは。
げんなりとしていると隣を火の玉が飛んで行った。飛んできた方に目をやると、赤スライムが火の玉を吐き出し、それをよけながら兄妹の一人が距離を詰めようとしていた。
バシュ。右前足に鋭い痛みが走る。紫スライムの放った粘液が掠ったようだ。
よそ見している場合ではない。今は目の前の獲物に集中しなければ。
私とスライムは互いに睨み合い、牽制しあう。私は接近戦に持ち込めればほぼ勝ち。しかし、飛んでくる粘液に気を取られて、なかなか近づけない。
お互い何もできないまま時間が過ぎていく。絶妙に取られたバランス。このままでは埒が明かない。
均衡を先に破ったのは私だった。狙いを定められないようにジグザグに走って紫スライムに肉薄する。
一発、二発、粘液が掠る。
あ、肩にクリティカルヒットした。すごく痛かったけど、我慢して走り続ける。次の粘液が放たれる前に紫スライムに飛びかかり、何とか息の根を止めた。
さっきのは危なかった。恐るべし、スライム……。
緊張が解けて、身体が急に重くなる。粘液を食らったところが熱い。やはり毒があったようだ。
とにもかくにも、やっと食事にありつける。毒を作っていた臓器のみを残して(臭いでかぎ分けた)スライムを平らげた。
苦労して狩った最初の一匹だ。
味のないゼリーみたいだったが、とてもおいしく感じた。
兄妹たちも苦戦したようで、皆身体中に傷を負っていた。しかし、そこまで深い傷の者はおらず、ほっとした。皆初めて自力で手に入れた獲物にがっついている。
魔物に転生して、この薄暗い陰気な森で目覚めた時はどうなることかと思ったが……。
これならなんとかやっていけるかも。そんな希望を抱けた。
しかし、世界はとことん厳しかった。
狩りが成功して、気が抜けたその隙を縫うように、一つの殺気が忍び寄る。
そして――。
バリバリバリ。とても嫌な音がした。弛緩していた空気が一瞬で凍り付く。全員の視線が音の発生した方へ向かう。
そこにはさっきの狩りで最初に攻撃を仕掛けた奴が、頭蓋をかみ砕かれていた。
それを為したのは一匹の豹のような魔物。私たちよりも二回りぐらい大きい身体、長く伸びた牙が印象的だ。
見た瞬間に格の違いを思い知った。
最早先ほどの希望など跡形もない。




