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その鳥が言うことには魔物は普通の生物にとっては有害な物質、精気と呼ばれるものをエネルギーとする。魔物はそれを取り込むほど強くなる。魔物なら精気は皆持っており、基本的には魔物を食べることで
精気を取り込む、ということらしい。
「でもそれは結構効率が悪くてねー。ま、だから裏技も教えといてあげるよ」
わたしは森の中の少し開けた場所に案内された。
「うわぁ」
思わず感嘆の声を上げる。そこには、たくさんの鉱石があった。それは飲み込まれそうなほどの漆黒の色、所々に真紅の斑点がある、とても綺麗な鉱石だ。
「こんな場所があったなんて……」
「いい場所だろ。これは精気が結晶化したものなんだ。精晶石っていう名前だ」
いつの間にやら背中に乗っていた鳥が答える。
試しに精晶石を舐めてみる。これはすごい。身体に力が流れ込んでくるのがわかる。
と、急に気分が悪くなった。
「うう、なんか気持ち悪い」
「一気に精気を取り込んだから身体が追い付いてないんだ。言っただろ、裏技だって」
それを先に言ってほしい。鳥に恨みがましい視線を向ける。
鳥はそれをさらっと受け流すと、背後に視線をやる。私もつられてそちらに目を向ける。
「げ」
以前襲ってきた豹がこっちに向かってくるのが見えた。
ひとまずは退散だ。
はー、まったく寿命が縮んだ思いだ。全力で逃げたせいで乱れた息を整える。
背中に乗っていた鳥は悠々としている。
「あそこって長い間いても気分が悪くなるし、魔物はあんまり寄り付かないけど、物好きな魔物がたまに
来るんだよねー」
「そういう大事なことは先に言って欲しいんだけど。それよりも次の話。私の種族のこと教えてよ」
私の親ってかなり強そうだったし。私もいつかはあんな風になれるのかな、なんて期待しながら答えを待つ。
「ああ。君の種族はマーナガルムって言う。かなり上位の種族さ。でも、最初はとっても弱いんだよね」
そう言って私の尻尾に視線を向けてきた。
「君、一尾だろ。最終的には九尾にまでなるんだけど、そこまでが長いんだ。おかげで成体はここだと2体しかいなかったはずだ」
舞い上がった気分が一気に地に落ちた。あと8……。気が遠くなる。
「……もう寝る。今までありがとう。じゃあね」
未だに気分が悪い身体を引きずりつつ、私は鳥と別れた。