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神の財産とファミリア〜あなたの家族でよかった〜  作者: 飾神 魅影
第1章:ドール教団と人類
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「入るな」って言われたらそりゃ入るでしょ

「押すな」って書かれたボタンあったら押したくなります?

ツバキは焦っていた。

時刻は18時頃。


とある森の中で道に迷い、帰り道がわからずにいた。


さらに悪い事に、雨が降り始めたのである。

場所が場所だけに、車で迎えに来てもらうわけにもいかない。


理由はわからないが、スマートフォンのナビを使うと現在地の表示がバグってしまい、正確な位置がわからないでいた。


仕方なく、ツバキは木の下で雨宿りをしていた。

「はぁ、これからどうしよう」


辺りを見渡すが、どちらに向かえば森から出られるのか見当もつかない。

そうして、見渡しているとふと気がつく。


見たことのない植物が生えている。

黄緑色の茎と葉を持っており、花は無く、先端に実がなっている。

茎は実の重さで少し垂れている。


長さは約20センチほど。

そして極め付けは、実がうっすらとパステル調の光を放っているのである。


このような植物はツバキも初めて見た。

(持って帰ってとことん調べたいところだけど、今はそんな場合じゃない)


ふと、前を見てみると傘を差して歩く女性がいた。

カジュアルな服の上にエプロンを付けている。

右手にランタンを握り、籠を下げている。


その女性がツバキに気づくと、側まで寄って来て

「このような場所に人が来るなんて珍しいですね。道に迷われたのですか? 」


ツバキは一瞬、話すのを躊躇ったが何故か対人恐怖症の発作が出なかった。

「はい、困った事に日も暮れて雨も降ってきてしまいました。視界も悪くどちらに行けばいいのか皆目見当もつかなくて」


すると女性は

「貴女が何処を目指しているのかは存じませんが、私のところで雨宿りして行きませんか? 」


女性はとても物腰が柔らかく、人と話し慣れていないツバキにも、とても話しやすく感じた。

(こういうのを文化資本というのだろう)


物腰が柔らかいという点から、コウを連想させた。


「できれば、そうさせてもらえると助かります」


女性はツバキの隣に来ると、ツバキを傘の中に入れてくれた。


「私はレムと言います。ここから2〜3分ほど歩くと着きます」


ふと、レムが下げている籠が目に付いた。

その籠の中には先ほど見つけた植物がたくさん入れられていた。


ざっと見るだけで40本はあるだろうか。


「すみません、その植物は? 」

「これですか? これはファフト草って言うんですよ」


聞いた事のない植物だった。


「どのような植物なのですか? 」

「私も詳しくは知らないんですよ。ただ、ご主人様に頼まれて集めていました」


(ご主人様という事は、誰かに仕える使用人という事だろうか)


ツバキは本当にお邪魔していいものか少し不安になった。


「本当にお邪魔になってもいいのでしょうか? 」

「いいんですよ、この森はよく人が迷い込んで来るので、そのような人を見つけたら助けてあげるようにとご主人様に言われているので」


そうこうしている内に、大きな屋敷に付いた。

かなり年季の入った風格をしている。しかしボロいわけではない。


築200年と言われても疑いはしないだろう。

幽霊屋敷、魔女の家、そのような言葉を連想させる見た目をしていた。

しかし決してボロいわけではない(2回目)


門を潜ると、まず目に付いたのは庭だった。

薔薇園があるのかと思えば、そこにも見た事のない植物が何種類も植えられていた。


(一体何が植えられているのだろう……後で時間があったら聞いてみよう)


2人が正面の扉に近づくと、「ガチャ」と解鍵音が響き、扉が重たい音を立てながら勝手に開いた。

先ほどまで照明の点いていなかった玄関は、ドアが開いた瞬間に明るくなる。


(待って、今の間に何が起こった⁉︎ アンティークな見た目には不似合いなユニバーサルデザインを目撃した気がする!)


「どうぞお入りください」


恐る恐るツバキは足を踏み入れる。

玄関に入ると、今度は扉が自動で閉じられ施錠された。


ロビーの内装は派手さは無いが清潔感があり、淡い色の照明がとても心を落ち着かせてくれる。


「雨で濡れてしまっていますので、先にシャワーをお使いください」

「助かります」



そしてツバキは風呂場へと案内された。

脱衣所とお風呂場だけでなく、そこに通じる廊下も全て自動照明、自動ドアだった。


バスルームの広さは、3人で入っても余裕があるくらいの広さだ。

何故かバスルームに入った瞬間に、浴槽に湯が貯められた。


ツバキは自分の目を疑った。

ものの10秒もしない内に浴槽に湯が溜まり終える光景は、圧巻と言う他ない。


そのような光景があった事も忘れて、ツバキは今シャワーを楽しんでいる最中である。


(シャンプーは……)

シャンプーを探していてツバキは気になるものを見つけた。


(猫用シャンプー? 猫を飼ってるのかしら。それより人間用のシャンプーを……)


ツバキは人間用のシャンプーを手に出し、泡立てて髪を洗う。

(人の家だという事を忘れてしまいそう……浴槽にお湯溜まってるけど、浸かるのは止めておこう)


ツバキはシャンプーを終えると、次はボディーソープで身体を洗う。


(それにしても、森の中にこんな屋敷があるなんて)


身体を流し、バスルームを後にした。


脱衣所に戻り、服を着ようとして気がつく。

(雨で濡れていた筈なのに乾いている。しかも、心なしか石鹸の香りがする)


ツバキがシャワーを浴びていたのはせいぜい20分程度だ。

さすがに洗濯をして乾かすほど時間はない。


(ドライアーで乾かしてフ◯ブリーズでもしてくれたのだろうか)



着替えを終えて、先ほどのロビーに戻ると、レムが男性と話していた。

ツバキに気がつくと会話を中断し、男性が話しかけてくる。


「はじめまして、本日は災難でしたね。私はマヒトと申します。しばらく嵐が止みそうにありません。今夜は泊まっていかれてはいかがでしょう」


また対人恐怖症の発作が起こらない。

「さすがにそこまでお世話になる訳には」

「この辺りの森は危険です。特に夜は。嵐が止むまではここでお休みください。ご心配しなくとも、こういった事は初めてではございません。時々道に迷った人を泊めているのです」

「はぁ……そうですか」


ここにいる人は皆物腰が柔らかいのだろうか、ツバキはそう思った。

1人でも言葉遣いの丁寧な人がいれば、それに習いみんな丁寧な言葉を使うようになるものだ。


(そういえば、主人がいると言っていた。この人がこの家の主人なのだろうか)

「貴方がこの家のご主人ですか? 」


すると、マヒトは両手を振り「とんでもない」と否定する。

「私はただの使用人でございます」

「できればご主人に挨拶をしておきたいのですが」


するとマヒトとレムは「うーん」と困ったような顔をする。


「ご主人様は今は忙しく、会う事ができません。明日になれば会う事ができると思います」

「そうですか、でしたら今夜はお言葉に甘えて泊まらせていただきます」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ツバキは屋敷に泊まる事になり、今はレムに屋敷を案内してもらっているところだ。


「朝食の時にはこの部屋にお越しください」

そう言ってダイニングルームへと案内された。


当然そこも自動照明&自動ドアだ。


(ドアノブを捻って押し開けるタイプのドアで自動ってどういう事よ! テコの原理に全力で逆らってるじゃない)


その部屋の棚に1つの写真が立てかけられている。

写真にはツバキと同い年くらいの女性が猫を抱き抱えている。


大きな瞳に、左右で整った顔。

写真越しでもその女性が美人である事がわかる。


ふと気になったのは、女性の左目が緑色だという事だ。


「どうかされましたか? 」


いつの間にか写真に釘付けになっていたツバキにレムが声をかける。


「いいえ、なんでもないわ」



次にツバキは今夜寝泊まりする寝室に案内された。

「こちらが本日お使いになってもらう部屋でございます。部屋を出て右の突き当たりにお手洗いがありますので」

「案内ありがとうございます」


寝室はベッド、テレビ、ソファ、テーブル、クローゼットなどが置いてあり、急な来客に備えられているのか、ベッドメイキングも済まされている。


「この部屋にあるものはご自由にお使いください。コンセントやエアコンも使っていただいて結構です。今から夕食をお運びしますが、何がよろしいでしょうか」

「あるもので大丈夫です」


するとレムは自慢げに

「この家ではどんなものでも揃います。ですので、ツバキ様が願う食事もお運びする事ができます。さぁ、どうぞお申し付けください」

「……ならオムライス」


レムはツバキの前で一礼すると

「かしこまりました」


そのまま部屋を出ようとするレムをツバキは引き止めた。

「待って」

「どうかされました? 」


ツバキは少々言いづらそうに口を開く。

「あの、えと……大盛りで……」


その様子を見たレムは笑顔で返事をした。

「ただいまお持ちします」

そしてレムは部屋を後にした。


待っている間暇なので、ツバキはソファに腰掛け、テレビの電源をつけた。


何か面白い番組はないかとチャンネルを変えていると、気になるものを見つけた。


『3日以内に作れる猫用簡単レシピ♪ NUCO's キッチン』


「ぬこずきっちん? 何これ 」

興味半分でツバキはこの番組(?)を見る事にした。


『最近、飼い猫が猫缶に飽きてしまったようです。まだ買い置きが沢山あるので、なにか手軽にできるアレンジなどないでしょうか……というわけで、今回は猫缶を使って簡単イタリアン風猫まんまを作っていきたいと思います』


(どうしよう、意味がわからないけど思いの外面白い)



テレビを見ながら20分ほど経つと、部屋のドアがノックされる。

「どうぞ」と言うと、ドアが「ガチャ」と解鍵音を鳴らし、1人でに開いた。

どうやら自動で鍵がかかるようだ。


しかし、中の人が許可をしたら解鍵するというのは、どういう仕組みなのかツバキには見当もつかなかった。


レムが盆を手に入ってくる。

「オムライスをお持ちしました」


レムが盆をテーブルの上に置く。

盆の上にはグラスに注がれたオレンジジュースと、皿に盛られた大盛りのオムライスが湯気を立てている。


デミグラスソースを使っているのか、ワインの酸味を含んだ香りがツバキの鼻腔をくすぐり、食欲を掻き立てた。


「食器は明日の朝回収しますので、そのまま置いておいてください。何かあれば私かマヒトにお申し付けください。何時でも承っていますので」

レムは恭しくお辞儀をした。


「何から何までありがとうございます」


そうしてレムは部屋を後にしようとするが、何かを忘れていたのかドアの前で立ち止まる。

「それと……この屋敷には地下室がありますが、地下室への立ち入りはご遠慮ください」


そう言い残し、部屋を後にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



時刻は22時40分。

食事を終え、やる事もなくなったのでツバキはベッドに入って寝る事にした。


ベッドに入り、10分ほど経った頃。

「……げて」


声が聞こえた。

女性の声が。


はじめはレムの声なのかと思ったが、微妙に違うと感じた。


「……げて」


(まただ。どこから聞こえているのだろう)


ツバキは疲れていたため、気にせず寝る事にした。


しかし


「……げて……ちゃダメ」


(……気になる! )

ツバキは身体を起こした。

ベッドから出て部屋を出る。


(どこから声が聞こえているのか確かめて、レムさんかマヒトさんにどうにかしてもらおう)


声のする方向に向かうと、さらに声がハッキリと聞こえてくる。

「にげて……きちゃダメ」



声のする場所の前まで辿り着いた。

しかしそこは

「地下への階段……」


地下室へは入ってはいけないとレムに言われたのを思い出す。

(引き返した方がいいだろうか……だけど気になって眠れない……)


階段の前で立ち往生してしまう。

そして遂に

(ダメ……知識欲を抑えられない。この先に何があるのか知りたい……)


ツバキは自分自身に「少しだけ」と言い聞かせ階段を下りた。


その間にも声は聞こえ続けた。

一段、また一段と下りるに連れて声が近くなるのを感じる。


「逃げて! 来ちゃダメ! 」


そして、1つのドアの前に辿り着く。

(この先から声がする……)


どうやらここは自動ドアではないようだ。


ツバキはドアノブに手をかけ、ゆっくりと重いドアを押した。


自動照明もない。

代わりに、部屋のいたるところに置かれているキャンドルに自動で火がつけられた。


真っ暗だった部屋にうっすらと明かりが灯る。


そしてそこにあったものは


「……死体⁉︎ 」

女性の死体があった。


しかも1つではなく、いくつも。

軽く20は超えている。


そしてその死体を見てツバキは気づく。

「この死体……ダイニングに飾ってあった女性」


猫を抱き抱えた女性の写真。その写真に写っていた人がそこに転がっているのである。

さらに異常なのは、その部屋にある死体全てが同じ容姿をしていることである。


左右で色の違う目。

しかし異常なほどに整った顔。


その女性が正気のない表情を浮かべたまま転がっているのである。


そしてそれは、ツバキに恐怖心を植え付けるのには十分なものだった。


「なに……この部屋……」


その時

「何をしているのですか? 」


ツバキの背後から声がした。


レムでもマヒトでもない声。


その声の正体は


「ッ⁉︎ ……コウ」





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