ウィザードアーツ
スピード感溢れる戦闘って、書くの難しいですね。
色々な作品を参考にしたんですが、中々上達しないですね。
魔術師対策会議。
それは国のトップたちが魔術による犯罪をどう処理するかを話し合い、決議する会議。
世間一般にはこの会議の存在はおろか、魔術の存在すら知られていない。
その会議では、ドール教団たちによるテロ行為が一向に解決せずに焦りを見せる政治家たちがいた。
「クソッ、また奴らは民間人を人形のように操り、殺人を犯させている! しかも逮捕したら情報を聞き出す前に、捨て駒のように殺す。奴らに倫理というものはないのか! 」
「民間人だけではない。我々の家族まで既に何人も殺されている。要望を呑まなければ、さらに殺すと圧力をかけてきている」
「しかも、その要望も平和協定などと言いながら、どれも向こうの都合の良い要求ばかりだ」
苛立ちを隠しもせず、テーブルを両腕で叩く。
周囲が慌てている中、1人だけ冷静を保っている男がいた。
「皆、まずは落ち着こうではないか。冷静さを失ったまま各々の感情をぶつけるだけでは話は進まない。もっと生産的に会議を進めないか」
その男の言葉で、先ほどまで動乱状態だった空間はシーンと静まり返った。
その男は那由多 黎人議員。
この会議の責任者であり、次期総理大臣の有力候補という実力者。
「しかし、このままでは我々の家族も殺人犯という汚名を着せられてから殺されてしまいます! 」
「その前に手は打つ。心配することはない、すぐに奴らは統率不能になるさ」
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ある日の、放課後。
その日はコウのバイトが休みのため、ツバキとマリと一緒に下校しながら魔術に関する話をしていた。
「前にも話しましたが、今世間を騒がせている胸から血を出しながら死んでいった事件。これは精神干渉系の魔術で人を操り殺人を犯させ、逮捕されると〈処刑人形〉という魔術を使って口封じに殺されたものです。精神干渉系魔術は、僕が使う〈催眠術〉と同じようなもので、これを上手く使うと、相手を操ったり心を読んだりできます。〈処刑人形〉というのは殺したい人間の骨の一部を特殊な素材で作った人形と、錬金術で合成することにより準備が整います。あとはその人形に与えたダメージをそのまま本人が受けるようになります」
「えぇ、言ってたわね」
「ですが、骨の一部を入手するといっても、相手から爪とか歯を奪うのは困難な場合があり、それを補うために〈ダンテの儀式〉と組み合わせて使うのが一般的です。この〈ダンテの儀式〉と言うのは、骨に含まれているDNAを別の人のDNAに変換することができる儀式です。変換したい人のDNAは直接入手しなくてはいけませんが、髪の毛や唾液、血などなんでも構わないので骨よりかは比較的簡単に入手できます。17時00分ちょうどに呪文を詠唱する事によって、儀式を行います。儀式に使用した骨のDNAが、儀式に使用した髪の毛や唾液などのDNAに変換され、その骨を〈処刑人形〉に使用すると、その髪の毛や唾液の持ち主を殺すことができるわけです」
「ドール教団はどうして何十人も人を殺してるのかな? 」
とマリ
「政府に圧力をかけて、テロ行為を止めるための条件を提示している。もしその要求を呑まなかったら、全面戦争ってところかしらね」
手を顎に当てながら答えた。
どうやら、考え事をするときの癖のようだ。
だが、考え事をしていても、ツバキは歩くスピードを緩めない。
なぜか逆に歩くスピードが速くなっていた。
「ちょっと、ツバキちゃん歩くの速いよー」
2人よりも背が低いマリは歩くペースが少し遅く、必死に抗議した。
しかし、ツバキはマリの意見を無視し
「コウ、気づいてる? 」
「はい、こちらが気づいた事に向こうも気づいていると思います」
コウとツバキの表情はかなり険しく、一向に歩くペースを緩めようとしない。
2人の異変を感じ取ったマリが疑問を口にする。
「なに? どうかしたの? 」
するとコウは小声で伝える。
「誰かに尾けられています」
「えっ! どうして2人とも気づいたの? 」
コウはもともと賢者に仕えていた時に、敵の偵察や情報収集などをすることが多かったため、こういった事態には慣れていた。
ツバキに関しては、本人が持つスキル〈見切り〉がLv5のため、周囲の人間の気配や殺意を敏感に察知することができる。
「尾けられてるのなら、人の少ない所には行かない方がいいんじゃない? 」
しかし、ツバキは首を横に振る。
「ただ尾行をしているだけにしては殺意を剥き出しにしすぎてる。これは民間人を巻き込んででも始末すると警告しているに等しい。だとしたら、人のいない所に移動する方が、コウが周りを気にしなくて済む」
マリが「そっか」と言い、必死に2人のペースに合わせる。
「敵の正体はわかりますか? 」
「おそらくドール教団。私たちが嗅ぎ回ってることに向こうは気づいていただろうから、必ず始末しにくると思ってたけど、まさか今日だったとはね」
そうしてツバキたちがやって来たのは、寂れた商店街。
「10年前はここも人がそれなりにいたんだけど、近くに大きなショッピングモールができてから全然人が来なくなり、今では店を出している人もいないわ」
ここなら、人が来ないため魔術を使用しても見られる心配がない。
だが、そう判断したのはツバキたちだけではなかった。
突如、3人を強烈な光と音と爆風が襲った。
見ると、黒いローブを着た男がそこには立っている。
背はコウより少し高く。
右手には直径2センチくらいの球体を4つ指に挟んで持っている。
男がコウたちを見据えると
「〈魔術痕の探知〉」
(先に情報を得られた! )
コウもまた同じ呪文を詠唱する。
「〈魔術痕の探知〉」
安藤 瑞樹
魂の価値〈魔術師〉属性 〈審判〉
性別〈男〉年齢 〈21歳〉
HP 120 MP 200
STR 110 DEX 140
INT 110
スキル
魔術の基礎知識Lv5
隠密Lv3
魔術士の武道Lv3
魔力自然回復Lv1
冤罪Lv4
魔術
錬金術Lv4
……爆破物の錬成Lv4
魔術痕の探知Lv2
召喚術Lv2
精霊術Lv2
一通りステータスを見終えた頃にはコウの背中に汗が滲んでいた。
(安藤 ミズキ……こいつは今までの敵と比べ物にならないくらい強い。勝てるかどうかもかなり怪しい)
するとユヅキは
「ほう、使い魔にしては強力な魔力だ。だが、所詮は使い魔か……」
刹那、脳に激痛。
コウは耐え切れずその場に蹲る。
「ッ!……これは、精神干渉系魔術の拮抗状態」
拮抗状態とは、精神干渉系魔術の上級者に精神干渉系魔術をかけた時に起こる現象である。
精神干渉系魔術を扱う者は自身の精神に魔力障壁を張ることができるため、ただ魔術をかけるだけでは干渉されない。
だが、魔力障壁は冷静な状態でなければ維持できず、動揺してしまうとたちまち干渉されてしまう。
しかし、拮抗はかけた側も同じ状態になる。
そのため、精神干渉系魔術を扱う者同士の戦いは先に動揺した者が負けとなる。
その性質上、拮抗状態では精神攻撃を主とした戦闘が多い。
(そういえばデパートで謎の爆発が起こっていたが、トオルは爆発を起こせる魔術を使えない)
「精神干渉系魔術……なるほど、お前が例の事件の黒幕か! 」
次の瞬間、ユヅキは手に持っていた4つの球体をコウに向け投げる。
「ッ! 〈物質の複製〉」
4つのうち、3つは全て粉々に砕け散る。
しかし残った1つは破壊しきれず迫る。
すぐにツバキは球体の落下地点から距離を取る。
しかしマリは逃げ遅れている。
すでにコウは動いていた。
跳躍し、マリの身体を突き飛ばす。
球体が地面に落下した瞬間、爆発が起こった。
マリは爆発に巻き込まれなかったが、コウは爆風により数メートル吹っ飛ばされる。
一瞬身体が浮遊感を覚え、次の瞬間には耐え難い熱が襲いかかる。
「グハァッ! 」
「流石にこの程度では障壁を解かないか」
障壁を解かないのは数々の激戦を乗り越え培われた精神力ゆえ。
そして、死にさえしなければいくらでも傷は治すことができるという余裕。
幸いにも直撃ではなかったため、傷は浅い。
しかし、至近距離であの爆発を受けたら重賞は間違い無いだろう。
「コウ……! 」
「コウくんごめんなさい、私のせいで」
膝でどうにか立ち上がるコウ。
その背中からは血が流れていた。
「これくらい大したこと無いです……」
殺す気でやらなければこちらが殺される。そう覚悟したコウは右手に1本のナイフを顕現する。
「ほう……精神力の刃か、良い神々の陶芸品を持っているな」
精神力の刃は、持ち主の魔力を毒として刃から染み出させ、その毒は身体的には害は無いが、精神的に耐え難い苦痛や恐怖を与えるものである。
そして生き物は精神的なストレスによってショック死する事がある。
刃に流す魔力の量によって効果の度合いが変わり、多く流すと死に至る。
神々の陶芸品とは、魔術の込められた特殊な武器や道具の事である。
コウは精神力の刃を握りしめ、ミズキとの距離を詰める。
手が届く距離まで接近するとダガーを斬り上げる。
ミズキは済んでのところで回避。
続いて左脚による回し蹴り。
突き、切り、蹴り。
躱しても躱してもコウの連撃は止まることを知らない。
止むを得ずミズキは大きく跳躍し、距離を取った。
この時を待っていたと言わんばかりにコウは口の端を吊り上げる。
「〈物質の複製〉」
コウの手から鎖が精製され、ミズキの手足へと伸び拘束した。
「ッ!……この鎖は! 」
コウとツバキが鉄を操る魔術士、羽田 正志に襲われた時に複製した魔術を吸う鎖。
コウは1度見たものなら何度でも複製する事ができ、この鎖のように魔力の込められた物質、神々の陶芸品も複製する事ができる。
ただ、物質に込められている魔術もコピーするにはその物質に触れて、どのような魔術が込められているかを確認するという工程が必要だが、コウは1度この鎖で拘束された際に触れているため、いつでも複製する事ができる。
「なるほど、拘束した相手の魔力を吸収する鎖のようだな」
鎖の能力を知っても動揺したりはしない。
(この程度で魔力障壁を解かないことくらいは予想通り。なら、このまま魔力を吸い尽くして障壁を張れなくすればいい! )
ミズキは「ふん」っと鼻で笑ってみせると先程のものよりもひと回り小さな球体を鎖に取り付ける。
刹那、その球体が爆ぜ、鎖は粉々に千切れた。
だが、それがどうしたと言わんばかりにまた鎖を精製する。
今度は拘束される前に破壊し防ぐ。
だが、コウの攻撃は止まらない。
1本、2本、10本と精製する。
一回で駄目なら何度でもと数で攻める力技。
攻撃を好きなタイミングで繰り出す事ができる攻め側に対して、守りはどうしても後手にまわるため、攻めよりも集中力も技術も必要とされる。
そのため数によるゴリ押しというのはある意味有効的と言える。
徐々に押され始めるミズキ。
だがミズキはここで、精密に破壊をして防ぐ事を放棄する。
先ほどよりも大きめの爆弾を精製すると、コウが放つ鎖に向け投げた。
その球体から放たれる爆発は、コウの生み出した全ての鎖を破壊し、辺りに煙を立ちこませる。
煙で視界の悪くなった瞬間を狙い、コウは一気に距離を詰めた。
煙の中から姿を現すコウを見据えると、ミズキはカウンターの体制をとる。
真っ直ぐと懐に飛び込んでくるコウに右手の突きを繰り出すが、そのカウンターは不発に終わった。
「なにっ!……」
そのままミズキに向け精神力の刃を突きつける。
ミズキの身体に深々とダガーを突き刺す光景を頭に浮かべたが、実際にはそうならなかった。
コウが右足を地に下ろした瞬間。足元が小さく爆ぜ、大きく転倒する。
さらにミズキは爆弾を4つ投げ、追い討ちをかける。
堪らず、爆発に巻き込まれなかった左足で地を蹴り回避。
「コウっ! 」
ツバキが駆けつけようとするが、マリがそれを阻止する。
「今行っても、コウくんの邪魔になるだけだよ」
「でも! 」
「それに見て」
マリはコウのいる付近の地面を指差す。
「あそこ、微妙に地面のタイルと色が違う。多分だけど、あの男が作った地雷なんじゃないかな」
それこそ、ミズキの狙いだった。
ミズキは地面のタイルに似せた爆弾を精製し、コウとの戦闘中に気づかれないように設置していた。
コウの攻撃に押されていたように見えたのも、防御だけでなく設置を同時にこなしていたため。
攻撃、防御、設置をほぼ全て同時に行うその手際の良さは流石としか言いようがない。
「賢者とその使い魔は変わった魔術士の武道を使うと聞いていた。単調な動きに見せかけて何重にも罠を張る。確かに面倒な動きだ」
魔術士の武道。それは魔術士達が戦闘時に効果的に魔術を発動できるようにと編み出された体術である。
どんな強力な魔術も発動には詠唱が必要である。
特に接近戦では詠唱を行うその一瞬の隙が勝敗を左右するため、魔術を扱う事を想定した体術が必要となり、編み出された。
魔術士の武道の種類は使う者によって十人十色だが、コウは特別だった。
動きのスローとクイックが不規則に切り替わり、攻撃のタイミングや角度が予測しづらいという特徴を持っている。
「だが、近づかれなければどうという事はない」
既にコウの周囲にはタイルに似せた地雷が何個も設置されている。
下手に動けばただでは済まない。
(流石に腐っても実力者。自他の力量を測るだけでなく、そこから有効な策を講じる)
コウが得意とするのは近〜中距離戦。
対してミズキは純粋な中距離戦闘向き。
機動力を奪われては互いに中距離でしか交わらず、消耗戦になる。
そうなれば魔力の多いミズキの方が圧倒的に有利。
(クソッ、どうすればいい。何か策があるはずだ。思考を止めるな。だが心を乱してはいけない。考えろ、逆転の一手を! )
次の瞬間、コウに向けて1つの爆弾が飛んできた。
周囲には地雷。
避ける事は出来ない。
〈物質の複製〉で破壊するのも間に合わない。
その爆弾はコウの腕へと当たり
ーー大きく爆ぜた。
マリ「やめて! 爆弾を生み出す魔術で焼き払われて魔力障壁を解除しちゃったら、精神干渉系魔術で拮抗状態になってるコウくんの精神が支配されちゃう! お願い、死なないでコウくん! あんたが今ここで倒れたら、ツバキちゃんはどうなっちゃうの? 魔力はまだ残ってる。ここを耐えれば、ミズキに勝てるんだから。
次回「コウ死す」賢者に仕える者の名の下に!」
コウ「勝手に殺さないでください!」




