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モンスターティーチャー ①

モンスターペアレンツという単語が世間に出て久しいが、モンスターティーチャーという単語もある。

翔兵が五年生のときの担任がまさにそれだった。

若い男性教諭だったが、やたらとヒステリックで、私まで滅入ってしまい、護身用にスタンガンを購入しようかと思った時期もあった。

フタをした辛かった記憶なので書くまでにかなりためらって、やっとこうして書く気になった。


ある日、翔兵がクラスの友達と取っ組み合いになり、口元に小さな引っかき傷を作って帰ってきた。それほど気に留めていなかったが、帰宅直後に電話がかかってきた。聞けば、休み時間にみんなで遊んでいるときに、ルールを守らなかった友達に指摘をしたところからケンカに発展し、最後には相手が椅子を振りかざしてきたらしい。最初は「私の不注意で傷を作ってしまい、申し訳ありません。」という電話だったのが、そこから毎日のようにネチネチと電話をしてくるようになり、しまいには、父親が離れているからしつけができていないのでは、ということまで言うようになった。

小さな傷とはいえ、ケガをさせられた立場であるし、先に手を上げたのは相手である。しかし、本人からの状況を聞いただけでも、相手に手を上げさせるほど憎らしいことを翔兵が言ったということは把握できた。


「翔兵には、よく言って聞かせます。主人にもすぐに知らせて、今夜にでも国際電話なりスカイプなり、主人とも話すようにしますので。ご迷惑おかけしました。」

私は最初に電話を受けたときにそう言った。それにも関わらず、毎日のようにネチネチと30分から一時間の長電話をしてくる。こうなると、在宅での仕事をしている私としては仕事にも支障をきたす。さすがにここまでの頻繁な電話は迷惑に感じてきた。内容としては、夫は知っているのか、とか翔兵は何か変化があったのか、など、毎回同じ会話を長時間にわたって繰り返しているだけなのだ。


「申し訳ないんですけど、わかるまで何度でも話すようにしていきますので、電話は控えていただけませんか?学校からの電話だと気づくと、翔兵の顔が曇るので心配なんです。死にたいとまで言っているんですよ?それに私は仕事中なんです。」

あまりに連日の長電話にとうとう私は言ったところ、逆ギレされ、大声で怒鳴られた。

「大変すばらしいお仕事をされているのはわかりますが、こんなことを言うのは生意気ですが、お子さんと向き合ったらどうですかっ!」

向き合っているからこそ仕事の時間を取るのが大変だというのに。さんざん仕事の妨害をされた上に怒鳴られるとは。

この頃から、翔兵はまたお腹の調子が悪いと言ってはだんだん学校へ行かなくなりだし、だからこそ余計に意地になって電話をしてきているとしか思えない。

そして翌日からも懲りずに電話をかけてくる。私が何かの用事で学校へ行くと見つかって長時間の立ち話に付き合わされる。迷惑としか言いようがない。話の内容は、翔兵の様子を聞くことから始まって、どこのスーパーに買い物に行っているだとか、どうでも良い話までしてくるのだ。

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