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夏休み。

「夏休みは、引きこもりしていたいな。」

夏休み限定でラプンツェル生活をしたいと言いだした。九月から元通りの規則正しい生活ができるのであれば構わないと伝えると、大喜びしていた。が、その割にはよく出かけていた。花火大会を見に行ったり、修学旅行の班のメンバーで大きなプールに出かけたり、映画を見に行ったり、誰かの家にワイワイと集まっていた。元気そうだし、多少の自覚はしているようなので、特に何も言うつもりもなく、食事が要るのか要らないのかだけを確認する程度の毎日の

そんなある日、翔兵が言い出した。

「ガラケーからスマホに変えてほしい。」

中学生になる頃にスマホを持つ子供はけっこう多く、璃子はそのタイミングでスマホに変えているのだが、翔兵は中学入学の頃は専用のパソコンが欲しい、スマホは要らないと要ったので、ガラケーのままだったのだ。

「高校に入る頃に変えるって約束だったよね?」

「そうなんだけど。友達がスマホでラインができないと連絡が取りづらいって言ってて。お年玉から少し払うから、少し早いけど、スマホに変えてほしい。」

確かに。パソコンにラインをインストールしているので、そこで連絡を取り合うか、ガラケーなのでメールで連絡を取り合うようにはしているが、パソコンをずっと立ち上げているわけではないし、まわりにしてみたらやりづらいだろう。メールよりも話しやすいのは、私だってわかる。グループトークもできるのでかなり便利だ。保護者同士でも、色々とラインが活躍しているのだから。


そして、夏休みといえば、翔兵にとって少々高いハードルが用意されていた。それは、日ごろは塾ではなく家庭教師に勉強を見てもらっているのだが、この家庭教師の本部が、夏と冬に模試と講習を開催していて、それを受けることになったのだ。模試と夏期講習なぜハードルが高いかというと、電車で片道一時間前後の会場まで出向かなければならないからだ。電車に乗りなれていない上に超がつくほどの方向音痴の翔兵には、かなりのミッションである。本人に聞いたところ一人は不安だということなので、私が付きそうことにした。ただ、その二日間のスケジュールというのは送ってから一回家に帰ってまた出向くには短く、現地で時間をつぶすには長い、というスケジュール。現地周辺でのんびりとウインドーショッピングでもしてゆっくりと時間をつぶすことに決めた。今の翔兵に必要なのは、無事に現地に到着して、模試や夏期講習を受けること。まず、それを達成させたい。一人で電車に乗ることは次のミッションにしておけば良いだろう。普通の中学三年生ならできるのに、などと恥ずかしがるのは違うと思った。状況は人それぞれなのだ。

そう予定を決めた矢先に、夫が帰省してくることになった。夫と相談の結果、夫が付き添うことになった。か、しかし。

「俺は小学生の頃から、あちこち電車で出かけていたぞ。お前は過保護だ!」

などと言い出したのだ。

「まだ電車に乗り慣れていないんだから。会場に着くことが優先でしょう!これで外出が怖くなったら、どうするの?そんなに気に入らないんだったら、私が付き添うから、夕飯の支度、してくれる?」

普通に生活している中学三年生なら、一人で行かせても良いだろう。しかし、小さい頃に海外にいたこと、帰国後は塾と病院の往復がほとんど、そして友達と出かけたりすることで電車に慣れる時期にラプンツェル生活などという要因が重なって、電車は全くと言っていいほどの未知の領域なのだ。付き添いなしという選択は私にはなかった。それはリハビリ中の人間のギプスや松葉づえをいきなり取り上げるに等しいと感じていたのだ。しかし状況は知らせてあっても現場を見ていない夫との温度差は激しい。夫は「男の子なんだから。」という意識ばかりが前に出ているようだった。しかし、やっと元気になってたところなのに、杖を外す時期ではないと思ったので私は譲歩できなかった。過保護?言いたきゃ言え。今は一人で放り出す時期ではないんだから。


「俺が付き添うから。留守番よろしく。ついでに買い物してくることにした。」

結局、文句を言いながらも夫が付き添うことになった。

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