修学旅行とその後。~お友達の影響~
修学旅行中は学校のホームページで随時、写真がアップされ、元気な生徒たちの姿を見ることができた。その中の数枚には、照れ臭そうに友達と肩を並べる、例の黒子か不審者のような翔兵の姿が見られた。班のメンバーは、学校側の配慮があってか、小学校の頃から良くしてくれていた友達が同じ班になっていて、彼らと肩を並べていたのだ。
「お兄ちゃんだ!ママ!お兄ちゃん、出てる!」
私も気にしていたが、璃子も心配だったのだろう。見つける度にスマホを持ってきては私に見せてくれた。
「元気そうだね。」
「ね。」
璃子と二人でホッと笑みをもらした。きっと今回は笑顔で帰ってくる、と確信した。
帰着日は夜に学校の体育館まで迎えに行った。帰着式をして解散ということらしい。いったんクラス毎に整列をしている間に友達とワイワイ話している翔兵の姿があった。みんなと仲良く過ごせたのだろう。よかった。今までずっと心配していただけに、こんな何気ないことにも目頭が熱くなった。
家に帰ってきた翔兵は、たくさんのお土産とお土産話を持って帰ってきた。
行き先は関東だったのだが、横浜中華街にも行き、そこで食べたシウマイとゴマ団子がよほど気に入ったらしく、私たちへそれぞれのお土産のほかに、そんなものまで買ってきた。よかった。修学旅行、ちゃんとい行けてよかったね。
代休日が明けて、また普通に学校に行く日々が始まった。この時期から、休日になると時々、修学旅行の班のメンバーと集まったり出かけたりするようになった。今まで出かけることがなかった分、帰りが少し遅くなったりすると色々な意味で心配になったが、元気に帰ってくる様子を見て、私も徐々に慣れていった。
そんなある日のこと。
「服を買ってほしい。」
「修学旅行前に買ったばかりじゃないの。」
「だって、今日のメンバーに服装が黒すぎるって言われたんだもん。アキラっていう奴がいてさあ、頭もいいし、すげーオシャレなんだよ。そいつに言われてさあ。」
不審者ルックについては私よりも友達に言われるほうが耳に入ったらしく、やっとコーディネートを工夫する気になったようだ。
「なるほどね。それで、何がほしいの?」
「よくわからない。上も下もリュックも靴も黒はおかしいって言われたんだよね。あ。リュックのストラップが一本で、斜めがけするバッグがほしい。」
「ああ。ワンショルダーね。」
「一緒に選んでほしい。できれば璃子も一緒に選んでほしい。」
次の週末、三人で買い物に行き、手持ちの黒と合わせやすい上下、靴、ワンショルダーを選び、「お兄ちゃんばっかずるい!」と主張する璃子のものまで買わされ、翔兵は不審者ルックを卒業した。




