EPISODE5-3【謎の女と切り離した闇】
アザミのもとへ向かおうと事務所の扉を開けた瞬間——その前に、一人の見知らぬ女性が佇んでいた。
風になびく赤い髪に、透き通るような白い肌。瞳は赤色に輝き、どこか遠くを見つめるような、それでいて鋭い観察眼を湛えている。身に纏うのは黒い服、その姿は街の喧騒とは完全に切り離されたかのように静かだ。
「……どなたですか?」レイトキは一歩足を踏み出し、声をかける。
「ここはクロノギアの事務所だ。何の用だ?」女性はゆっくりと視線を上げ、二人を見つめる。その瞬間、レイトキと星玲奈は彼女の身から放たれる不思議な気配に息を飲む——威圧的ではないのに、誰も踏み込めないような、神聖で厳かな空気が辺りを包む。
「はじめまして」女性の声は、澄んだ泉のように涼やかで、それでいて心に深く響く。
「突然に失礼しました。私は——」彼女が名乗ろうとしたその時、星玲奈の蒼銀の瞳がわずかに見開かれる。祖龍とワーウルフォックスの本能が、彼女の正体に反応しているかのように——。
「あなた… もしかして…」レイトキはメロダックを手に、警戒を緩めずに問う。
「用事は何だ? 俺たちは今、急いでいるんだ。アザミのところへ向かう途中でな」すると女性は、アザミの名を聞いても動じることなく、むしろ真剣な面持ちで告げる。
「アザミの件——それで、あなたたちが向かう先は『紫影の研究棟』ですね。だったら、少し話を聞いてください。そのまま向かえば、あなたたちは罠に嵌まります」こうして——クロノギア事務所前に、正体不明の謎の女性が出現! アザミの罠を予言するかのような警告——彼女は何者なのか? そして紫影の研究棟に待ち受ける罠とは——!? 新たな来訪者が物語に波乱を呼ぶ——!レイトキは眉を上げ、真剣な面持ちで問いかける。
「何か知ってるのですか?」謎の女性は赤い瞳を真っ直ぐに向け、はっきりと答える。
「情報を持ってると知ると態度を変えますね。でも、今回のそれは聡明な判断です」その鮮やかな赤い瞳が真剣に輝く様子に、レイトキは一瞬、見とれつつも改めて彼女に向き直る。
「罠だと言ったな。詳しく話してくれ。俺たちがこれから向かう紫影の研究棟に、いったい何が待ち受けているんだ?」女性は静かに頷き、周囲に警戒がないことを確認してから続ける。赤い瞳の光が鋭さを増す。
「アザミはあなたたちが来ることを予測し、施設全体に結界と封じ込めの陣を敷いています。中に入れば外へは出られなくなり、時間経過とともにゾンビウィルスの濃度が上昇する仕掛けになっているのです。つまり——戦いながら、徐々に自身も蝕まれていくことになる」星玲奈は蒼銀の瞳を険しくさせる。
「そんな… 私たちを生け捕りにするためだけに、そこまでの準備を…!」
「彼にとっては、それだけあなたたちが重要だということです」女性は赤い瞳を二人に向け、真剣な眼差しを崩さない。「特に星玲奈さん。あなたのヒュージノイドとしての力は、彼の計画の核心部分にあたる。だからこそ、あなたを確実に捉えるための罠が、研究棟のあらゆる場所に仕掛けられている」レ イトキは拳を握り締め、感謝と警戒を込めて告げる。
「…教えてくれてありがとう。だけど、どうしてそこまで詳しく知っているんだ? あなたはいったい何者なんだ? その赤い瞳も…」女性はわずかに口元を緩め、だけど名前も正体も明かさずに告げる。赤い瞳が一瞬、柔らかく光る。
「それはまだ、お話しする時期ではありません。ただ——私は、この世界が滅ぶのを見たくないだけです。あなたたちが正しい道を選ぶことを願って、情報を届けに来ました。さあ、時間がありません。行くなら、罠を回避する別のルートを案内しましょう」こうして——赤い瞳が印象的な謎の女性、アザミの仕掛けた罠の全貌を明らかに! その瞳の色も正体の謎を深める一つの鍵となり… 案内を申し出た彼女と共に、一同は緊迫の別ルートへ! 果たして無事に研究棟へ辿り着けるのか——!? 謎の女性は赤い瞳を真っ直ぐに向け、はっきりと名乗る。
「私の名前はアネモネです」その瞬間、レイトキは眉を吊り上げ、一気に警戒を強める。
「植物の名前!? まさか、お前、ストレンジプレデターか!」手にしたメロダックを強く握り、一歩下がって構える。ストレンジの幹部や構成員が、植物や数字・色にまつわる名前やコードネームを使っていることを、彼は嫌というほど知っているからだ。アネモネは赤い瞳を動じずに向け、首を横に振る。
「違います。私はストレンジの者ではありません。確かに彼らの多くが異名を使うのは事実です。だから警戒する気持ちは理解できます。でも、名前が植物だからといって、同じと決めつけるのは早計です」
「だが、それだけじゃ信用できない」レイトキは剣の柄を離さない。「アザミの罠の詳細を知っている上に、ストレンジを思わせる名前… お前、いったい何が目的で俺たちに近づいた?」アネモネは真剣な面持ちで告げる。
「目的は先ほど言った通り。この世界が滅ぶのを見たくない。それだけです。アザミも、衆生解放戦線も、どちらも世界を壊そうとしている。だから私は、あなたたちが彼らを止める力になることを願っている。それを証明するためにも、さあ——早く行きましょう。時間が経てば経つほど、アザミの準備は進んでしまいます」
星玲奈はレイトキの袖をそっと引き、囁く。
「レイ… 話す内容は本当のことを言ってるように聞こえるわ。もしストレンジの仕向けた敵だったら、わざわざ罠の詳細を教えたりしないと思う。少しだけ、信じてみても…」レイトキは星玲奈の言葉を聞き、アネモネを鋭く観察する。赤い瞳の奥には、嘘や悪意とは違う、強い決意のようなものが宿っているのを感じる。
「……分かった。とりあえず、案内してもらう。だけど」レイトキは釘を刺すように告げる。
「もし裏切ったり、何か企んでるのが分かったら、容赦しない。それだけは覚えておけ」アネモネは赤い瞳をわずかに和らげ、頷く。
「承知いたしました。さあ、こちらです——」こうして——名前はアネモネ! ストレンジを疑うレイトキだが、彼女の案内を受け入れることに! 赤い瞳と植物の名前——彼女の正体は何者なのか? そして紫影の研究棟への別ルートは、無事に辿り着けるのか——!? 紫影の研究棟とは別の方向——街の外れの木陰に、ローズマリーの姿があった。携帯端末を耳に当て、マズミとユーカリと通話している。
「君から連絡するなんてねぇ」マズミの声が端末から漏れる。ローズマリーは凛とした声ではっきりと告げる。
「アザミが動き出しました。それに、その動きを利用する者もいます」マズミは冷静に応じる。
「だいたいは予想できてたわよ。でも、両方とも止まらないでしょうね」
ユーカリの声も続く。
「アザミの復讐心、そしてそれを利用しようとするドネイターたち——どちらも、もう誰の言葉も届かないところまで来てるのかもしれないわね。でも、だからといって、放っておくわけにはいかない」ローズマリーは周囲の警戒を怠らず、状況を報告する。
「アネモネがレイトキたちに接触し、別ルートで研究棟へ案内しています。彼女の行動はこちらの予定通り。だが、アザミの罠は予想以上に危険です。ゾンビウィルスの濃度上昇結界——中に入れば、レイトキたちも徐々に蝕まれます」
「それも計算のうちよ」マズミは淡々と告げる。
「彼らはそれでも進む選択をした。それがクロノギアの強さであり、同時に弱点でもある。私たちは私たちの任務を遂行するだけ」
「アザミ、ドネイター、レイトキ——三者三様の思惑がぶつかり合う中、次に何が起きるか」ユーカリが続ける。
「私たちは次の手の準備を進める。ローズマリー、現場の動向を引き続き監視し、異変があれば即座に報告して」
「了解しました」ローズマリーは端末を閉じ、研究棟の方角を鋭く見据える。
「アネモネ… あなたはどこまで真実を知っているのか。そして、その赤い瞳の先には何が見えているのか——」こうして——ローズマリーがマズミ・ユーカリと連絡を取り、アザミの動きと「利用する者」の存在を報告! アネモネの行動も含め、すべてが誰かの計画の上で動いていることが明らかに! そして三者三様の思惑が交差する中、紫影の研究棟での決戦が迫る——!? アネモネの案内で、レイトキたちは地上の警戒を避け、街の地下に張り巡らされた古い地下水路へと入っていた。水の滴る音が響く薄暗い通路。苔むした石畳を踏みしめ、冷たい水が足元を流れる中、二人は黙って歩を進める。アネモネは先頭に立ち、赤い瞳を暗闇の中でわずかに輝かせ、進むべき道を示している。
「この水路は研究棟の地下施設に直接繋がっています」アネモネは振り返らず、低い声で告げる。「結界やセンサーもここまでは届いていません。だけど、この先は別です。地下にも罠は仕掛けられている——」レイトキはメロダックを手に、周囲の気配を探りながら進む。件狐の瞳で壁の向こうや先の曲がり角を透かし見るように探り、警戒を緩めない。
「これで直接施設の中に入れるってことか。だが、裏口みたいなものなら、待ち伏せされてる可能性もあるな」
「それも承知の上です」アネモネは赤い瞳を鋭く光らせる。
「だからこそ、気を抜かないでください。この地下水路を出た瞬間から、もう敵の領域です」星玲奈は蒼銀のオーラを薄く纏い、祖龍の気で周囲の邪気を感じ取りながら続く。ワーウルフォックスの聴覚で、遠くの物音まで拾い上げる。
「水の流れる音以外に… 何か、機械の作動音みたいなのが聞こえる…」
「それはウィルスの培養装置の音です」アネモネの表情が曇る。
「近づいてきました。覚悟を決めてください」こうして——レイトキたちは地下水路を進み、紫影の研究棟地下への侵入ルートを進む! だが、すでに敵の領域は目前——! ゾンビウィルスの気配、そしてアザミの待つ研究棟内部は、いったいどうなっているのか——!?薄暗い地下水路の中、アネモネは立ち止まり、赤い瞳を真っ直ぐに向けてはっきりと告げる。
「それと一つ話しておかなければなりませんね。アザミも元は吸血鬼ではないんです。彼も被害者なんです。そう、吸血鬼の因子を入れられた者です」その言葉に、レイトキと星玲奈は同時に足を止め、驚きに声を上げる。
「えっ…!?」星玲奈は蒼銀の瞳を大きく見開く。
「アザミが吸血鬼じゃないなんて… ずっとそうだと思ってた…」
「つまり、彼も誰かに因子を埋め込まれ、変えられたってことか」レイトキは拳を握り締め、複雑な面持ちになる。
「だから復讐に駆られているのか… 自分をこうした者たちへの、怒りなのか?」
「そうです」アネモネは赤い瞳を沈ませ、告げる。「彼は元々、ごく普通の青年でした。だが、何者かによって強制的に吸血鬼の因子を注入され、人間ではなくなった。故郷も、家族も、すべてを失い——その憎しみが、今の彼を形作っているのです。彼が復讐に執着するのは、自分自身がそうやって奪われたから。だからこそ、同じように力を持つ者、特にヒュージノイドである星玲奈さんを、自分と同じ道に引きずり込もうとしている部分もあるのです」星玲奈は胸が締め付けられるような思いになる。
「それなら… 彼も被害者なんだね。私たちと同じように、誰かに利用され、運命を変えられた一人なんだ…」
「だからといって、彼の行いを許せるわけじゃない」レイトキは厳しい声を上げるが、その瞳には同情の色も滲む。
「だけど、話し合う余地がまだ残ってるってことか。彼が何を奪われ、何を憎んでいるのか——それを知れば、止める方法があるかもしれない」
「それを願っています」アネモネは再び歩き出しながら告げる。「だけど、覚えておいてください。今の彼は、その憎しみに飲まれきっている。話を聞いてもらえる保証は、どこにもないのです」こうして——アザミの真実が明らかに! 彼もまた吸血鬼因子を強制注入された被害者であり、復讐の裏には自らの悲劇が隠されていた! レイトキたちは戦いの意味を改めて問われることに——! 果たして彼の心に届く言葉はあるのか!? 地下水路の出口を抜け、紫影の研究棟の最深部——薄暗く、紫いろの蛍光管が怪しく輝く室内に足を踏み入れた瞬間、その正面にアザミが佇んでいた。振動ブレードの剣を手に、紅い瞳を鋭く光らせ、まるで来ることを知っていたかのように、冷ややかに告げる。
「のこのこと来たか」レイトキはメロダックを構え直し、一歩前に出る。
「待ってたのか。俺たちが来るのが分かっていたなら、話を聞いてくれる余地はあるはずだ。アネモネから聞いた——お前は元々、吸血鬼じゃないんだな。お前も被害者なんだな」その言葉を聞いた瞬間、アザミの瞳が一気に険しくなり、周囲の空気が凍りつくように重くなる。
「誰から聞いた?……アネモネか」アザミは低く、牙を剥くように呟く。「余計なことを話してくれたものだ。だが——それが何だ。過去がどうであろうと、今の俺はこうだ。俺をこうした連中、そしてこの世界全てに復讐する。そのためにお前たちの力が必要なんだ」
「復讐のために、誰かを傷つけるのは違う!」星玲奈は蒼銀の瞳を真っ直ぐに向け、祖龍のオーラを静かに高める。
「私は同じように力を与えられた者として、あなたの気持ちが分からないわけじゃない。だけど、それで人を襲ったり、ゾンビウィルスをばらまいたりしたら、それは奪った連中と同じことになっちゃう!」
「同じだと!?」アザミの声が響き、闇の気が一気に膨れ上がる。
「俺は何も奪ってはいない! 奪われた分を、取り返そうとしているだけだ! 黙れ! 俺の気持ちなんて、お前たちに分かってたまるか!」剣を高く掲げ、赤い光が刃を覆う。
「話は終わりだ。力ずくで奪うまでだ。覚悟しろ——!」こうして——ついにアザミとの直接対決! 彼の悲劇を知り、話し合いを試みるも、復讐の念は深く、戦いは避けられない! 紫影の研究棟で、決戦の火蓋が切って落とされる——! レイトキはメロダックを構えたまま、真っ直ぐアザミを見つめ、心からの言葉をかける。
「失ったのは悔しいよな…、そして、理由なく滅ぼされて怒るよな! 失うのも滅ぶのも誰も望んでないよな! 確かに理不尽だな!」その言葉は、アザミの心の奥にある痛みをまっすぐに刺した。アザミの剣の動きが一瞬、止まる。紅い瞳が大きく揺らぎ、怒りの奥に隠していた悲しみがわずかに滲む。
「……っ!」歯を食いしばり、拳を強く握り締める。
「理不尽だと…? 知ったような口をきくな! お前は何も知らない! 俺は… 俺は何も悪くなかったのに! 何もしていなかったのに、すべてを奪われた!」
「ああ、そうだ! 理不尽だ!」レイトキは声を強め、共感を込めて続ける。
「だけど、その怒りで新たな犠牲を生むのは、本当に正しいのか? お前が味わった痛みを、また誰かに味わわせるのか? それじゃあ、お前を滅ぼした連中と同じになっちまう!」星玲奈も一歩前に出て、蒼銀の瞳を柔らかく向ける。
「アザミ… あなたの悔しさ、悲しみ、全部本当のものだと思う。だからこそ、それを繰り返してほしくないの。怒りで怒りを消すことはできないの。それでは、いつまでも痛みが連鎖するだけだから…」アザミは二人の言葉に動揺し、剣を震わせる。闇のオーラが乱れ、怒りと戸惑いの間で揺れ動いているのが見て取れる。だが、次の瞬間、彼は首を振り、再び瞳を険しくする。
「きれいごとだ…! それが言えるのは、何も失っていないからだ! 俺はもう、戻れないんだ!」こうして——レイトキの言葉がアザミの心に届き、一瞬の隙を生む! だが復讐の鎖はまだ断ち切れず… 怒りと悲しみの狭間で、アザミはどうするのか——!? レイトキは真っ直ぐアザミを見つめ、はっきりと告げる。
「俺も奪われた者だよ。ストレンジによって因子を入れられたことによって、家族と過ごす時間、平凡な日常などをな」その言葉に、アザミの剣が完全に止まる。紅い瞳が大きく見開かれ、信じられないというようにレイトキを見つめる。
「……お前も、か?」
「ああ」レイトキはメロダックを構えたまま、だがその身から殺気を抜いて応える。
「何の前触れもなく、突然に。自分の身体が自分のものではなくなり、周りの人たちとの当たり前の時間が、二度と戻らないものになった。俺はその気持ちが痛いほど分かる。理不尽で、悔しくて、世界全部を憎みたくなる時がある」星玲奈も頷き、続ける。
「私も同じ。突然に運命が変わって、戸惑って、悲しくて… だからアザミの気持ち、全然分からないわけじゃない。だからこそ、その怒りを違う形に変えてほしいの。同じ痛みを誰かに与えるんじゃなくて、その痛みを分け合って、前に進むことだってできるはずだから」アザミは唇を噛み締め、剣を震わせる。怒りの奥にあった孤独と絶望が、同じ体験をした者の言葉によって、一気に押し寄せる。
「お前たちも… 同じように奪われたのか… なのに、どうしてそんなに平気でいられるんだ? どうして復讐しようとは思わないんだ?」
「思わなかったわけじゃない」レイトキは静かに、だか強く告げる。
「だけど、復讐したって、奪われたものは戻ってこない。それよりも、今自分の側にいてくれる人たちを守りたい。同じ目に遭う人を増やしたくない。そう思ったからだ」こうして——レイトキ、自らの過去を明かし、アザミとの共通の痛みを示す! 同じ被害者同士、心の距離が一気に縮まる中、アザミの復讐の心は揺らぎ、ついに変化の時が——!? アザミは突然、嘲るように笑い、声を荒げる。
「だが、お前は恵まれてるだろう!? 仲間に、環境に、だが、俺は違う!」
その笑い声は、怒りと絶望が混ざり合った痛ましいものだった。紅い瞳には嫉妬と悔しさが渦巻き、剣を強く握り締める指は白くなるほど力が込められている。
「お前には星玲奈がいて、支えてくれる仲間がいて、帰る場所もある! 俺には何もない! 奪われたのはものだけじゃない、心から信じられる人も、安らげる場所も、全部——! お前の痛みなんて、俺の痛みの浅いところに過ぎない!」レイトキは動じず、真っ直ぐに応える。
「恵まれてる、か…。俺はそうは思わない。俺だって最初は一人だった。何も分からず、怖くて、誰を信じればいいのかも分からなかった。だけど、諦めなかった。前を向いて、手を伸ばしたから、今の仲間たちがいるんだ。お前だって、諦めなければ——」
「違うっ!」アザミは叫び、闇のオーラが激しく沸き立つ。
「お前は何も分かってない! 俺の場合は… 俺の場合は、どうしようもなかったんだ! 誰も俺に手を差し伸べてはくれなかった! だから、俺はこの道を選ぶしかなかった!」星玲奈は一歩踏み出し、蒼銀の瞳を潤ませながら告げる。
「アザミ… 今からでも遅くないよ。私たちがいる。今、手を差し伸べてくれる人が、ここにいるの。一人で背負わないで…」
「偽善者め…!」アザミは歯を食いしばり、感情が爆発しそうになりながらも、その言葉を拒絶する。
「俺は俺の道を行く。たとえ誰が何と言おうと、俺は復讐を成し遂げる! 邪魔をするなら——容赦しない!」こうして——アザミの深い孤独と絶望が明らかに! レイトキたちの言葉が届きかけるものの、彼の心の傷はあまりにも深く、復讐の道を選び続ける! 果たして、彼の心を救う道は残されているのか——!? 緊張が最高潮に達したその瞬間——アネモネが素早くアザミとレイトキの間に割り込み、両手を広げて戦いを遮る。赤い瞳を真っ直ぐアザミに向け、叫ぶように、だが心からの声で告げる。
「これ以上はやめて! まだ失ってないものはあるよ、思い出してよ、優しかったあの頃に戻って!」その言葉に、アザミの剣がピタリと止まる。紅い瞳が大きく揺らぎ、まるで遠い記憶を辿るように、アネモネを見つめる。
「……アネモネ… お前、なぜそれを…」
「忘れないで」アネモネは一歩近づき、真剣な眼差しで続ける。
「あなたが誰よりも優しく、誰も傷つけることを嫌っていたことを。あなたの心は、そんな闇だけで出来ている人じゃない。憎しみに飲まれたら、本当に大切だったものまで、全部見失ってしまうよ」アザミの手から、剣がカチャリと音を立てて落ちる。彼は両手で顔を覆い、肩を震わせる。怒りも、復讐も、全部押し込めてきた感情が一気に溢れ出す。
「だけど… 俺はどうすればよかったんだ… 何もかも奪われて、一人になって… 俺は…」
「一人じゃない」アネモネは静かに告げる。
「今、あなたを止めようとしている人がいる。あなたのことを想ってくれる人が、ここにいる。過去は変えられない。だけど、これからの未来は、自分で選べる。それに気づいて…」レイトキはメロダックを収め、静かに告げる。
「アザミ。俺たちはお前を倒しに来たんじゃない。止めに来たんだ。一緒に、お前をこうした連中に、報復する道だけじゃなく、別の道を探すことだってできる」星玲奈も頷き、柔らかく声をかける。
「私たちと一緒に来て。新しい居場所を、一緒に作ろう。もう、一人で背負わないで…」こうして——アネモネの言葉がアザミの心の扉を開き、ついに剣を捨てる! 長らく復讐に囚われていた彼の心が、ようやく解き放たれる時——! 果たしてアザミは新たな道を選ぶのか!? アザミは声を震わせながら、だがはっきりと問いかける。
「だけど、殺された者の未練は? 救われなかった者はどうなるんだよ、やはり」その言葉には、復讐ではなく、犠牲となった人々への思いが込められていた。レイトキは真剣な面持ちで応える。
「それは俺も、常に考えてる。無実の人々が奪われた命、その無念は決して軽くない。だけど、その人たちが望むのは、君が同じように人を殺して歩くことじゃないはずだ。彼らが本当に望むのは、これ以上同じ悲しみが繰り返されないこと、そして君が幸せに生きることだと思う」星玲奈も続ける。
「救われなかった人たちのことを忘れないことは大事。でも、その人たちのためにも、憎しみの連鎖を止めることが、本当の供養になるんじゃないかな。彼らの分まで、君が生きて、笑って、それが何よりの答えだと思う」アネモネは静かに頷き、赤い瞳をアザミに向ける。
「そうだよ。復讐では誰も救われない。殺された人たちの魂だって、君が闇に落ちていくのを、きっと喜んではいない。彼らの想いを背負うなら、光の道を選んでほしい。それが本当の意味で、彼らを救うことになる」アザミは拳を握り締め、涙を流しながら呟く。
「だけど… 俺が何をしても、彼らは戻ってこない…」
「それでも、前に進むことはできる」レイトキは一歩近づき、手を差し伸べる。「彼らの無念を晴らすのは、復讐じゃない。この世界を、彼らが望んだような、優しい世界に変えていくことだ。そのために、一緒に戦ってくれないか?」アザミは差し伸べられた手を見つめ、長い沈黙の後——ゆっくりと、その手を握り締める。
「……俺は、これから何をすればいいんだ?」こうして——アザミの心の核心、犠牲者への想いが明らかに! レイトキたちの言葉が届き、ついに彼は復讐の道を離れ、新たな一歩を踏み出す! 紫影の研究棟での決着、そしてアザミの加入——物語は大きく動き出す! アザミが差し伸べられた手を握り締めた——その瞬間、突如として彼の全身から禍々しい黒いオーラが噴き出した。
「ッ! アザミ!?」レイトキは思わず手を離し、後ずさる。黒いオーラが渦巻く中、その姿はアザミと寸分違わぬ容貌——だが、身に纏うのは赤黒く染まった服装で、闇の気が肌から滲み出すように漂い、瞳は深い紅色に輝いている。まるで、アザミの中に眠っていた別の存在が表に出てきたかのようだ。
「何だ… これは…」アザミ自身も混乱し、自分の身体を見下ろす。
「俺の意識なのに、俺じゃない… 何かが俺を、こう変えようとしている…!」赤黒いアザミ——いや、彼は低く笑い始める。それは先ほどの葛藤とはまったく異なる、冷たく、何もかもを拒絶するような笑い声だ。
「甘っちょろい話だな… 救われる? 前に進む? 何が変わるっていうんだ」声は同じなのに、響きがまるで違う。
「現実は何も変わらない。奪われたものは戻らず、犠牲者は増えるばかり。それなら… 壊れるまで暴れるのが、俺たちの正しい道だろう!」
アネモネは赤い瞳を険しくさせ、前に出る。
「これは… アザミの心の闇が具現化したもの… いいえ、違う。誰かが彼の心に仕掛けた『種』が、今芽吹いたのよ!」
「誰かが… だと?」レイトキはメロダックを再び構え、赤黒いアザミを見据える。
「アザミ、聞いてくれ! これは本当のお前じゃない! お前の心が闇に飲まれるのを、俺たちは見過ごさない!」赤黒いアザミは牙を剥き、闇の衝撃波を放つ。
「うるさい! 俺の中から俺を否定するな! これが真の俺だ! 消えろー!」星玲奈は祖龍×ワーウルフォックスのオーラで衝撃波を弾き返し、叫ぶ。
「アザミ! 目を覚まして! あなたは一人じゃない! 闇に負けないで!」
こうして——アザミの心に潜む赤黒き別存在が出現! 和解の瞬間が一転、最悪の事態に! 彼を救うための戦いが、今始まる——!? 赤黒き自分——心の闇が具現化した存在に向け、アザミは声を震わせながらも、はっきりと叫ぶ。
「復讐ならお前一人でしろ!」その言葉は、自分自身の闇を拒絶し、過去の呪縛から解き放たれようとする決意の響きだった。赤黒い影は一瞬、その声に動きを止め、嘲るように笑う。
「甘い。俺はお前だ。お前が俺を切り離すことなど、出来はしない」
「違う!」アザミは一歩前に踏み出し、全身でその闇に立ち向かう。「
俺はもう、お前に従わない。復讐という名の地獄に、俺はもう戻らない。お前はお前、俺は俺だ! 俺の心は、俺が決める!」レイトキはメロダックを構えたまま、アザミを援護するように告げる。
「そうだ! お前は一人じゃない! 俺たちがいる! 自分の心は自分で守れ!」星玲奈も蒼銀のオーラを高め、アザミを支える。
「アザミ、その気持ちが大事だよ! 闇に負けないで! あなた自身を取り戻して!」アネモネは赤い瞳を輝かせ、静かに頷く。
「それでいい。自分の意志で、自分の道を選ぶの。それが何よりも、闇を祓う力になる」アザミは拳を強く握り締め、赤黒い自分に向かって再び叫ぶ。
「俺は前に進む! お前はもう、俺の中にいなくていい! 消えてくれ!」
こうして——アザミ、自らの心の闇を毅然と拒絶! 「復讐ならお前一人でしろ」——その一言が、彼の新たな始まりを告げる! 果たして赤黒き影は消え、アザミは本来の自分を取り戻せるのか——!? アザミの強い意志に応えるように、赤黒いオーラが彼の身体から完全に剥がれ、独立した存在として浮かび上がる。もはや彼の一部ではない——完全に切り離された闇は、自らの名を告げる。
「そうか、ならば、オレは進む。名前はノアザミ!」その姿はアザミと同じ顔立ちだが、赤黒い衣装と闇の気は一層濃く、まるで別個の存在としての存在感を放っている。自らを「ノアザミ」と名乗り、アザミとは完全に道を分かつことを宣言する
「アザミ、お前は光を選ぶ。ならばオレは闇を選ぶ。お前が進む道とは、正反対の道を行く」ノアザミは冷ややかに告げ、周囲の空間が歪み始める。
「だが、忘れるな。オレはお前の裏側。いつだって、お前が弱気になった瞬間、戻ってやるからな」
「それでもいい」アザミは揺るぎない瞳で応える。「
お前が何を選ぼうと、俺は俺の道を行く。もう、お前に従属したりはしない」レイトキはメロダックを構え、ノアザミを警戒する。
「お前がアザミの闇から生まれた存在だというのなら、俺たちはお前を放っておくわけにはいかない。何を企んでいる?」ノアザミは口の端を歪め、笑う。
「企む? オレはただ、自分の進むべき道を行くだけだ。復讐、破壊、それがオレの生き方。誰にも邪魔はさせん」空間の亀裂が広がり、ノアザミはその中へと身を沈め始める。
「また会う日まで、アザミ。そしてレイトキ、星玲奈、クロノギアメンバーよ——オレは必ず、お前たちの前に再び現れる。その時、どちらが正しかったか、見せてやる」言い残すと、ノアザミは完全に闇の中へと消え去った。室内には、穏やかな空気が戻り、アザミがひとり立っている。こうして——アザミ、自らの闇「ノアザミ」を切り離し、決別! だがノアザミは闇の道を歩み、再び現れることを予告! 新たな脅威が誕生し、物語は更なる局面へ——! 一方、アザミはようやく本来の自分を取り戻し、クロノギアに加わることとなる! アザミがノアザミを切り離し、自らの意志を取り戻したのを確認し、レイトキは周囲の警戒を解きつつも状況を見渡す。紫影の研究棟にはまだゾンビウィルスの気配が漂い、結界も完全には解除されていない。
「ここは一旦、外に出よう」レイトキは全員に告げる。
「ウィルス濃度が上がり続けている。このままいれば、いくら強くても徐々に蝕まれる。外で状況を整理しよう」アザミは自分の身体を確かめるように見下ろし、頷く。
「ああ… ここは俺の作った罠だ。外に出れば、結界の影響も薄まる。案内する」アネモネは赤い瞳を落ち着かせ、通路の先を示す。
「こちらです。地下水路の出口まで、私が先導します。追跡や別の罠がないとは限りません。気を抜かないでください」星玲奈は蒼銀のオーラで周囲の邪気を浄化しながら、アザミの隣を歩く。
「大丈夫。外に出たら、ちゃんと話そう。これからどうするのか、一緒に考えよう」一同はアザミの案内で、先ほどの地下水路へと続く裏口へと向かう。紫いろの蛍光管の光が遠ざかるにつれ、重苦しい空気も少しずつ薄れていく。外に出ると、すっかり日が昇っていた。朝の光が四人を包み込み、研究棟の中では味わえなかった清々しい風が通り過ぎる。
「…外に出たのは、どれくらいぶりだろう」アザミは空を見上げ、瞳に光を取り戻す。
「俺、生きてるんだな」レイトキは肩を叩き、笑顔で告げる。
「ああ、生きてる。そして、これからだ。さあ、一度事務所に戻ろう。みんなも心配してるし、今回のことをちゃんと報告して、今後のことを話し合おう」こうして——危機を乗り越え、一同は研究棟から無事脱出! アザミの心はついに闇を離れ、新たな仲間としての道を歩み始める! だがノアザミの存在、ゾンビウィルス、衆生解放戦線の儀式——未解決の脅威は依然として迫っており、次なる戦いはすぐそこまで来ている——!外の空気を吸い込みながら、アザミは真剣な面持ちではっきりと告げる。
「ノアザミとか言う奴は復讐のまま動くだろうな。そして、そのままにすれば取り返しがつかないことになる」その言葉に、レイトキも重く頷く。
「ああ、その通りだ。奴はお前の中にあった最も危うい部分だ。復讐心だけで動き、何もかも壊そうとする。放っておけば、いずれ大きな災いを呼ぶ」星玲奈も蒼銀の瞳を沈ませ、続ける。
「アザミがそう言うのなら、間違いないわ。彼はアザミの痛みも怒りも全部受け継いでる。だけど、それを解決する方向には向かわず、破壊の道を選んだ。それがどれほど危険か…」アネモネは赤い瞳を鋭く光らせ、告げる。
「ノアザミは自分自身を『正しい』と信じている。だから誰の言葉も届かない。そして彼の力は、時間が経つごとに強まっていく。アザミから切り離された今、彼は自らの意志で更なる闇を求めるだろう。最悪の場合、衆生解放戦線やストレンジと手を組む可能性も——」アザミは拳を握り締め、決意を込めて言う。
「俺が生んだ存在だ。俺が責任を持って止めなければならない。いつか必ず、奴の行く末を見届ける。それが、俺が過去と決別した今、やるべきことだと思う」レイトキは肩を組み、力強く告げる。
「一人で背負うな。俺たちがいる。ノアザミが何を企もうと、クロノギア全員で向き合えば、必ず止められる。取り返しのつかないことになる前に、俺たちは備える」こうして——ノアザミの危険性が明確に! 復讐の化身として独り歩き始めた彼は、今後最大の脅威の一つとなる可能性が! アザミは自らの責任を感じつつも、仲間たちと共に新たな決意を固める——!




