EPISODE4-9【レイトキの暴走】
夜も更け、マタラ支部とは別に設けられたレイトキ専用のラボ。薄暗い室内には解析装置の発光と低い駆動音だけが響き、レイトキは一人、データと向き合っていた。彼はスターヴァンプ因子の詳細解析結果を読み解き、低く呟く。
「スターヴァンプの因子の正体は、吸血鬼とアザトース、ウボサスラ、妖精霊の因子を融合させて一つにさせた因子らしいな」画面には複数の系統図が重ね合わされ、それぞれの特徴が一つに統合されていく様子が鮮明に映し出されている。外見的な特徴や吸血の性質だけでなく、外宇宙的な存在の力、そして妖精霊の不可思議な性質までが複雑に絡み合い、単なる種族の枠を超えた存在であることが明らかになっていく。
「だからこそ、あらゆるものを吸収し、自分の力に変えることができるのか…。だけど、これほどまでに複数の強大な因子が一つになっているということは、それだけ負担も大きいということだ」レイトキは自身の胸元に手を当て、その力の根源を感じながら、重い気持ちになる。
「俺の中に眠るこの力… 制御を誤れば、自分自身さえも飲み込まれてしまうかもしれない。だからこそ、正しく理解し、自分のものにしなければならない」その時、ラボの扉がそっと開く。
「レイ… まだ起きてたの?」星玲奈が心配そうな面持ちで入ってくる。彼女は明かりの落ちた室内で、集中しているレイトキの姿を見て、そのまま近づく。
「せーちゃん…? どうしたんだ、こんな時間に」
「レイが戻ってこないから、様子を見に来たの」星玲奈は画面に映る解析結果を覗き込み、眉を寄せる。
「スターヴァンプの因子… 調べてるのね。何か、分かったの?」
「ああ… 俺の中の力が、単純なものじゃないことが分かった。だけど、それは同時に、俺が制御できなくなる可能性も秘めてるってことでもあるんだ」星玲奈はその言葉を聞いて、レイトキの手をそっと両手で包み込む。
「レイ… そんなに一人で抱え込まないで。私がいるでしょ。何があっても、私はレイの側にいる。だから、一人で無理しないで」だがその瞬間——レイトキの瞳が一瞬、鋭く赤く輝く。彼の意識の奥底で、複雑に融合した因子が反応し、突如として制御が揺らぎ始めたのだ。
「っ…! せーちゃん、離れて! 今、俺の中の何かが…!」レイトキは自分でも止められない衝動に駆られ、星玲奈に向かって手を伸ばしてしまう——!こうして——スターヴァンプ因子の正体が明らかになり、その危険性も浮き彫りに! そして突如、レイトキの制御が崩れ、星玲奈との対峙の時が迫る! 二人の絆は、この危機を乗り越えられるのか——!レイトキの全身から、身を裂くような異常な鳴動が轟く。
「ウワアアァーーーーー!!!」骨と血管、そして内なる力が激しく反発・共鳴し、重く不吉な音がラボ中に響き渡る。彼の体は赤黒いオーラに包まれ、瞳は深紅に染まり、もはや自分では抑えきれない様子。その時、扉の前にアザミが姿を現す。紫の瞳で状況を一目見抜き、低く告げる。
「どうやらスターヴァンプの因子が暴走してるな」星玲奈は驚きつつもレイトキから離れず、手を差し伸べる。
「レイ! しっかりして! 私だよ、せーちゃんだよ!」だがレイトキの意識は混濁し、赤い瞳は星玲奈を捉えながらも、その姿を敵として認識し始めている。オーラはさらに濃くなり、周囲の装置が次々と過負荷で停止していく。アザミは一歩踏み込み、冷静に分析する。
「吸血鬼の吸血衝動、アザトースの混沌、ウボサスラの深淵、妖精霊の不可思議さ——それらが一斉に暴れだした。融合した因子が統制を失い、それぞれの本能が表に出てきている。このままでは、彼自身が飲み込まれる」
「そんな…! レイ、耐えて!」星玲奈は涙を浮かべながら呼びかける。
「絶対に負けないで! 私が側にいるから!」レイトキは苦しみながらも、その言葉にわずかに反応する。だが次の瞬間、彼は咆哮と共に鋭い爪を星玲奈に向けて振り上げる——!アザミは即座に身構え、剣を抜く。
「こうなれば仕方ない。止めるしかない——星玲奈、下がれ! 今の彼は誰にも止められない!」こうして——スターヴァンプ因子が完全に暴走し、レイトキが制御不能に! 目の前にいるのは愛する星玲奈なのに、襲いかかろうとする自分自身——。アザミも介入し、緊迫の戦闘が始まる!暴走したレイトキの体からは、赤黒い触手のようなものが次々と伸び、周囲を覆い始めていた。アザミは即座に振動ブレードを抜き、一閃する。
「消えろ!」振動する刃が触手を鮮やかに切り落とす。だが——切り落とされた先端が床に落ちる間もなく、一瞬で元の形に再生し、さらに数を増やして伸びてくる!
「なんだ、これは…! まったく減らないのか!」アザミは驚きを込めて叫ぶ。切断面からは傷跡すら残さず、新たな触手が湧き出すように再生し続ける。まるで時間を巻き戻すかのように、ノーラグで完全に回復してしまうのだ。星玲奈はその様子を見て、ハッとする。
「まさか… 再生の歯車の力まで…! レイの中の不死鳥や再生因子が、暴走したスターヴァンプと共鳴して、どんな損傷も即座に回復させてるの!?」レイトキは苦しそうに呻きながらも、赤い瞳はまったくの闇に染まったまま。触手はさらに増え、アザミと星玲奈の両方を包囲するように迫ってくる。アザミは歯を食いしばり、再び剣を構える。
「切っても無駄なら… 力ずくで抑え込むしかないのか! だが、これほどの再生力があるとは… どうすれば止められる!?」こうして——レイトキの触手はいくら切っても即座に再生し、アザミを窮地に立たせる! スターヴァンプの暴走に再生の力が重なり、まさに無敵の状態になったレイトキ。果たして二人は彼を止めることができるのか——!星玲奈は一歩も引かず、暴走するレイトキの正面に立ち、声を限りに叫ぶ。
「レイ、戻ってこい! 君を待ってるものがいること分からないの?」その声は、命令でも脅しでもない——心からの願いそのもの。赤黒いオーラと触手が彼女を飲み込まんと迫る中、彼女は瞳に涙を浮かべながらも、真っ直ぐにレイトキを見つめ続ける。
「君が守りたかったもの、一緒に目指した未来、そして——私が、ずっと君の側にいるってこと、忘れないで!」レイトキの動きが一瞬、止まる。赤く輝いていた瞳がわずかに揺らぎ、触手の勢いも鈍る。星玲奈の声が、混沌の彼の心に届いたのだ。
「せー… ちゃん…?」かすかな、本来の彼の声が漏れる。だが闇はまだ彼を離さず、再びオーラが濃くなろうとする。星玲奈はその瞬間、一歩前へ踏み出し、両手を広げて彼を受け止めるように告げる。
「そうだよ、私だよ。レイ、戻ってきて。私は絶対に君を離さない。どんなに闇が深くても、私が君の光になるから!」アザミは剣を構えたまま、その光景を見て息を呑む。
「…声が届いたのか。あれほどの暴走状態でも、彼女の言葉だけが唯一、彼の心に届くとは…」こうして——星玲奈の一途な想いが、闇に飲まれかけたレイトキの心を呼び覚ます! まだ完全ではないが、確かに彼の中の光が蘇り始めている。果たして彼女の想いだけで、暴走を完全に止めることができるのか——!暴走したレイトキはそのままラボの扉を突き破り、外へと飛び出してしまう。赤黒いオーラを纏ったまま、まるで何者かに導かれるように夜の街へと歩み出す。
アザミは慌てて後を追いながら、焦りを込めて叫ぶ。
「マズイぞ、これは! 外に出たらたくさんの被害が出る! 俺の目的にも支障が出る!」自分の復讐のためにも、無関係な人々が巻き込まれるわけにはいかない——その想いが、彼の焦りを強めている。星玲奈もレイトキの後を追い、必死に呼びかけながら走る。
「レイ! 待って! どこに行くの!」
レイトキは止まることなく、マタラシティの街並みへと進んでいく。周囲の建物の明かりが、彼の赤い瞳に不吉に映り込む。このままでは、街中で力が暴走し、大惨事になるのは時間の問題だ。アザミは走りながら拳を握り締める。
「俺は… 俺は誰かを守るために戦ってるんじゃない… だけど、これじゃあ… これじゃあまるで…!」自分の行いが、無実の人々を危険に晒すことになる——そのことに彼は初めて強い罪悪感を感じ始めている。復讐のための計画が、逆に自分の望まない被害を生もうとしているのだ。
星玲奈はレイトキに少しでも近づこうと、全力で走る。
「レイ、お願い! 目を覚まして! あなたが望む世界は、こんなんじゃないでしょ!」こうして——暴走したレイトキが街へと出て、大きな危機が迫る! アザミも星玲奈も、それぞれの想いを胸に彼を追いかける。果たして間に合うのか? そしてレイトキは自分自身を取り戻せるのか——!街路に飛び出したレイトキの赤黒い触手が、真っ先に側を走っていたアザミに襲いかかる。回避しようとしたアザミだったが、触手の勢いはあまりにも強く——
「っ、まさか…!」触手がアザミの右腕を掴み、そのまま凄まじい力で引きちぎる!
ズチャッ!!
鮮血が飛び散り、アザミは苦痛の叫びを上げて膝をつく。
「ぐぁあああーーっ!!」地面には引きちぎられた腕が落ち、肩口からは大量の血が流れ出す。あまりの痛みに体が震え、呼吸も荒れ狂う。それでも彼は歯を食いしばり、レイトキを見上げる。
「くっ… 再生する間もなく… か…! これほどまでに力が暴走してるとは…!」星玲奈はその惨劇を目の当たりにし、顔面蒼白になる。
「アザミさん! 大丈夫!? これ以上被害が出る前に、何とかしなきゃ…!」レイトキはそのまま無表情に次の標的へと触手を伸ばそうとしている。街の人々の悲鳴が遠くから聞こえ始め、一刻も猶予はない。アザミは傷口を押さえながら、怒りとも悔しさとも違う感情を込めて呟く。
「俺が… 俺が止めなきゃ… これ以上、誰も傷つけさせない…!」こうして——暴走の余波でアザミの腕が引きちぎられ、事態は最悪の展開に! 痛みと血の中、それでも立ち上がろうとするアザミ。果たして三人はこの危機を乗り越え、レイトキを取り戻すことができるのか——!赤い髪に赤メッシュのノバラが疾風のように現れ、血を流し倒れかかるアザミを瞬時に抱え上げる。
「アザミ様! これ以上は危険です! 今は退きましょう!」アザミは痛みに顔を歪めながらも、レイトキの方を振り返り、歯を食いしばる。
「ま、待て…! 俺は… 俺はまだ…! このまま逃げるわけには…!」
「戦うには力が足りません! 今は一旦、体制を立て直すのです!」ノバラは彼の言葉を遮り、そのまま素早く後退していく。「再生の処置を施し、次の手を考えましょう——さあ、行きます!」星玲奈はその光景を見て、声を上げようとするが、暴走するレイトキの触手が再び迫り、それどころではなくなる。彼女はレイトキを見つめ、瞳に決意を宿す。
「アザミさん… ノバラさん… お二人とも、どうぞ無事に…。私は… 私が何としてでも、レイを止める!」こうして——ノバラが負傷したアザミを連れ、一時撤退! 戦線から離脱したアザミの無事を祈りつつ、星玲奈は一人、暴走するレイトキと対峙することに。果たして彼女は、レイトキを救い出すことができるのか——!星玲奈は瞳に怒りと決意を込め、声を張り上げて叫ぶ。
「いい加減にしろ!」手首の火星の惑星記号が真っ赤に輝き、炎の力が彼女の拳に集束する。そして彼女はためらうことなく、全力の一撃を暴走するレイトキの胸元に叩き込む!
ドゴォッ!!
火星の力が込められた拳は、赤黒いオーラを打ち破り、レイトキの体を強く弾き飛ばす。触手も一斉にしぼみ、彼はよろめきながら地面に膝をつく。
「っ…!」星玲奈は息を荒げながらも、彼から一歩も引かずに立つ。
「目を覚ませ、レイ! あなたが望むものは、こんな暴れ方で手に入るものじゃない! 私たちが目指したのは、誰もが笑って暮らせる世界だったでしょ!」レイトキは赤い瞳のままだが、その拳の衝撃と声が、混沌の彼の心に確かに届いている。体は小さく震え、触手の勢いも明らかに弱まっていく。
「せー… ちゃん… 痛い… ごめん…」
かすかな意識の声が漏れる。それを聞いた星玲奈は、再び彼に駆け寄り、そっと抱きしめる。
「うん… 戻ってきてくれて… ありがとう。もう大丈夫、私が絶対に側にいるから」こうして——星玲奈の火星の拳が、暴走するレイトキに一撃を与え、そして彼の心を呼び戻す! 怒りも、悲しみも、愛の力が全てを受け止め、二人は再び絆を確かめ合う。だが事態はまだ終息していない——!レイトキは胸元を押さえ、激しく咳き込み始める。
「ごほっ… はぁ… ごほぉっ!」次の瞬間、鮮やかな赤い血が口から溢れ出し、地面に滴る。
「っ…! レイ!」星玲奈は彼を支えながらも、その光景に息を呑み、顔色が一瞬で青ざめる。レイトキは血を吐きながら、意識が朦朧とし、体の力が抜けていく。赤黒いオーラは徐々に消えていくが、それは力が制御されたのではなく、彼の体が限界を迎えた証だった。
「せーちゃん… 俺… また… やっちまった…」
「そんなこと言わないで! 何も考えないで! 今は休んで!」星玲奈は彼の背中をさすりながら、自分の服でそっと口元の血を拭う。涙が溢れそうになるのを必死に堪え、彼を強く抱きしめる。
「大丈夫だよ、絶対に大丈夫。すぐに手当てするから… 待っててね」レイトキは苦しそうに呼吸をしながらも、彼女の温もりに応えるように、かすかに手を握りしめる。
「ごめん… 心配… かけた…」こうして——暴走は収まったものの、レイトキは吐血し、深刻なダメージを負ってしまう! スターヴァンプ因子の暴走は、彼自身の体に深刻な代償を残した。果たして無事に回復するのか? そしてこの暴走の背後には、何が潜んでいるのか——!星玲奈はレイトキを肩に抱え、力の限りマタラ支部へと急ぐ。彼の体は重く、呼吸も荒く、時折血を吐く様子に、彼女の胸は痛みで締め付けられる。
「レイ、もう少しだから… 頑張って…!」支部の医務治療室に駆け込むと、最新の医療機器が整った空間。彼女はレイトキを慎重にベッドに横たえ、すぐさま制御盤の前へ。手際よくスイッチを入れ、モニターを起動させる。
「生体データ、異常あり! 因子の暴走による過負荷、内臓への損傷、出血も確認…!」彼女は慌てず手順を踏み、治療プログラムを選択。輸液と止血、組織修復のラインを接続し、除細動や安定化措置も同時にセットする。
「治療開始… レイ、すぐに楽になるからね。私が絶対に治すから…!」
機械の低い稼働音が響きだし、光のラインがレイトキの体を包む。星玲奈はその傍らに座り込み、彼の冷たい手を両手で包み込み、見守り続ける。こうして——レイトキは医務治療室で緊急治療を受けることに! 暴走の代償は大きく、回復への道のりは陳しい。彼は無事に目を覚ますのか——!




