EPISODE6-10【作戦開始】
射手(亥)月30日——夜の帳が最も深く街を包む時間。サグラダ・ファミリアの聖堂裏口、木製の扉がきしむように開き、クロノレイトが姿を現す。周囲に気配がないことを確かめ、闇に紛れるように一歩外へ踏み出す。胸元のブバルディア製ブローチ——キャッツアイが冷たく光るその証を、彼は静かに手で覆う。
「さようなら、偽りのしるし」指先に力を込め——本物のブローチをそっと壊した。石が外れ、金属の枠が軋む音が夜に吸い込まれる。代わりに取り出したのは、細工を施した精巧なダミー。見た目には本物と寸分違わぬ輝きを放つが、その輝きには力が宿っていない。彼はそれを元の位置にしっかりと留め直す。
「これで誰にも気づかれずに……」
本物の証はもう胸にはない。だが身につけたダミーは、周囲の目を欺き続ける。もし振り返って探されても、輝きがそこにある限り、まだ彼が「同胞」であるかのように見え続ける。
「さあ、本当の作戦の始まりだ」
彼はダミーの輝きを胸に、真っ直ぐ北東の方向を見据える。星玲奈、ウプアト、そして待つ仲間たち——全てが一つになる時が来た。こうして——偽りの輝きを胸に! 本物の証を脱ぎ捨て! 物語、決意の夜が動き出す——!夜闇に包まれた道を、クロノレイトは北東へと歩み続ける。足早に——だが心は重く、振り返りたい気持ちを必死に抑えながら。胸の内で、そっと囁くように思いを馳せる。
「(星玲奈、ごめん……君を置いていくことになる。だが、君が俺に向けてくれた感情が本物だったって、ちゃんと分かった。それだけでもう、十分なんだ)」言葉にはできない謝罪と感謝が込められている。彼女の涙も、決意も、本心で向き合ってくれた瞬間も——すべて心に刻んで。
「(さあ、行こう。仲間と合流するんだ)」一度だけサグラダ・ファミリアの方角を見上げると、顔を上げ、瞳に新たな決意を宿して歩を進める。離れていても想いは繋がっている——そう信じて。こうして——置いていくけれど想いは繋がっている! 感謝を胸に合流へ! 物語、新たな一歩を踏み出す——!観光街の宿——扉が静かに開き、クロノレイトが姿を現す。
陸郎が真っ先に駆け寄り、安堵の笑みを浮かべる。
「やっと、合流したか」
クロノレイトは頷き、周囲の仲間たちを見渡す。
「ああ。儀式の日が近い。今、攻め込もう」
張り詰めた空気が一瞬、部屋を包む。
「儀式……?」那奈が問い返す。
「ああ。ドネイターたちが最も重視している式——それが間もなく執り行われる。その瞬間こそ、内部が最も手薄になるチャンスだ」
レゾルが地図を広げる。
「ならば一気に突入する。星玲奈さん、ウプアト、そして儀式の核心——全てを同時に抑える」
「俺が先導する」クロノレイトが前に出る。
「内部の構造、警備の配置——全て把握している。俺が道を開く」斗愛が刀を握り締める。
「覚悟はできてる。ボクたちはずっと待っていたんだ」
「行くぞ」クロノレイトの瞳に決意が燃え上がる。
「全員を救い、真実を取り戻すために——」こうして——ついに決行の時! 一丸となって進軍! 物語、最終決戦の火蓋が切られる——!サグラダ・ファミリアの荘厳な門の前——。
一行が足を踏み入れた瞬間、重厚な影が立ちはだかった。ウプアトが既に門の前に佇み、じっとクロノレイトを見据えている。
「やはり、お前、最初から衆生解放側ではなかったな」低く、しかしはっきりとした声が響く。クロノレイトは一瞬足を止めるも、隠さない。
「ああ。そうだ。俺が望むのは、誰もが笑って生きられる世界だ。力で縛る世界じゃない」
「ふむ……」ウプアトは腕を組み、微かに頷く。
「だがなぜ、俺を連れ出そうとした? 利用するだけなら、別のやり方もあっただろう」
「お前が利用される存在じゃないって知っていたからだ」クロノレイトは真っ直ぐ応える。
「お前自身の心で、答えを選べるはずだ」ウプアトは沈黙し——やがてゆっくりと道を開く。
「……面白い。ならば見せてみろ。お前の言う『本当の道』とやらを」
「ウプアト……!」
「俺はまだ認めたわけじゃない」彼は不機嫌そうに眉を顰める。
「だが、一方的に潰すのは気に入らない。ついて行く。それだけだ」こうして——ウプアトが道を開く! 力ではなく心で響かせて! 物語、共に進む新たな道——!門の前で、言葉より先に拳が動く——。
カチッ!
ウプアトの拳とクロノレイトの拳が真っ直ぐにぶつかり合い、鋭い衝突音が夜に響く。
「っ!」
「ふん、本気か!」
一撃、また一撃——。攻撃は敵意からではなく、確かめ合うように繰り出される。受け止め、弾き、応える。力の強さではなく、意志の強さをぶつけ合うかのように。
「まだまだ甘い!」ウプアトが蹴りを入れる。
「そっちこそ!」クロノレイトはそれを受け流し、逆に間合いを詰める。打ち合うたび、互いの心が通じていく。
——お前の覚悟、その程度か?
——いや、まだまだこれからだ!
ガツン! 最後の一撃が互いの拳に届いたとき、二人は同時に笑みを浮かべる。
「……やっと分かった」ウプアトが拳をそのままに告げる。
「お前の力には、誰かを守ろうとする芯がある。それが今までの連中とは違う」クロノレイトも力を緩め、その拳を固く握り返す。
「ならば共に行こう。俺たちの手で、未来を変えるんだ」こうして——拳で語り合う絆! 力と力が心で繋がる時! 物語、ウプアトが仲間に加わる——!ウプアトは真剣な面持ちで告げる。
「レイト、お前は知ってるだろうが幹部は星玲奈、アハト、チェイモン、ストロフィア、鈴丸、そしてオーガストの6人がいる」指を折りながら続ける。
「それぞれの陣を守ってる。だが、守ってる陣は破壊不能なのだけどね」クロノレイトは眉を寄せる。
「破壊不能……? ならばどうする?」
ウプアトは聖堂の正面を指し示し、答える。
「そして、それぞれに向かうには聖堂前に現れる7つの時空の扉から行かなくてはならない」一同が一斉に聖堂の方を見る。そこには今までなかった6つの輝く扉が浮かび上がり、それぞれ異なる色の光を放っている。
「各扉が一人の幹部の守る陣へ通じている」ウプアトが説明する。
「陣そのものは壊せない。だが——守る幹部の心を動かし、陣の役目を終えさせることならできるかもしれない」クロノレイトは仲間たちを見渡し、決意を込めて言う。
「ならば手分けして向かう。一人ひとりと向き合い、本当の想いを伝えるんだ」こうして——6つの扉が開かれる! 破壊不能な陣に挑む! 物語、それぞれの道が分かれる時——!クロノレイトが一同を見据え、一つひとつ確かめるように声をかける。
「みんな作戦はわかるよな」
地図と6つの扉を指し示し、担当を明確に告げる。
「俺は星玲奈のところに向かう」続けて各組を指名していく。
「鈴丸はリジェ、シャウト、アザミ、アネモネ」
「ストロフィアはカグラ、デューク」
「チェイモンは与太郎と斗愛」
「オーガストはゼロとアルカ」
「アハトは陸郎と那奈で対応だ」
それぞれの名が呼ばれるたび、該当する者が一歩前に出て、決意を込めて頷く。
「それぞれの扉から、それぞれの相手のもとへ」クロノレイトは力強く締める。
「力で壊すのではなく、心を通わせて陣を解く。絶対に生きて、この場所で再会しよう」
「おう!」「任せてください!」「必ず!」 声が一つになり、聖堂前の空気が引き締まる。6つの時空の扉が微かに輝き始め、それぞれの道が開かれるのを待っている——。こうして——各組が決定! 心をつなぐ任務! 物語、それぞれの扉へ踏み出す時——!ウプアトが思い出したように声を上げ、補足する。
「そういや、ゼロトキもいるが、アイツは聖堂でドネイターと共にいるから今は対応することはできんか」
その言葉に一同は頷き、状況を整理する。
「なるほど」クロノレイトは唇を引き締める。「今回の6つの扉の先にはいない——ということか」
「ああ」ウプアトは腕を組んで続ける。「だから当面は、そちらに気を取られる必要はない。だが忘れるな。最終的には、聖堂でドネイター・ゼロトキの両方と対峙することになる」レゾルが地図に印を加える。
「ならば我々は、各扉の任務を果たした後、全員で聖堂に集結する。そこで最後の戦いに備える」
「了解」クロノレイトは6つの輝く扉を見据え、決意を固める。
「まずは目の前の一つ一つを確実に。そして最後は共に——」こうして——ゼロトキ&ドネイターは聖堂に! 後続の最終決戦へ! 物語、各々の道が始まる——!一同はそれぞれの相手に対応する六つの扉の前に立ち、それぞれの道へと足を踏み入れる。
クロノレイトは星玲奈の待つ方へ——。
「行くぞ、必ず迎えに行く」リジェたちは鈴丸の陣へ、カグラとデュークはストロフィアのもとへ。与太郎と斗愛はチェイモンへ、ゼロとアルカはオーガストへ。陸郎と那奈はアハトへ——。六方に伸びる廊下はそれぞれ異なる光を帯び、その先にはそれぞれの試練が待ち受けている。誰一人として同じ道はなく、だが全員の想いは一つ——この戦いを終わらせ、みんなで笑って明日を迎えること。
「絶対に生きて戻ろう」
「聖堂で会おう」短く交わした言葉を胸に、それぞれが一歩を踏み出す。扉が背後で静かに閉まり、それぞれの旅が始まった——。こうして——六つの道、それぞれの決意! 心で向き合う闘い! 物語、章ごとにそれぞれの物語が紡がれる——!聖堂の最深部——誰もいないはずの空間で、ドネイターが扉の先の気配を感じ取り、低く呟く。
「やはり、レイトは裏切ったか……いや、違うか。ただ潜入してただけか」独り言のようなその声に、驚きはなく、むしろ納得に近い響きがある。背後に佇むゼロトキが静かに口を開く。
「最初から、そのつもりだったのですね。あの『覚悟』の演説も、偽の証も、全部……」
「ああ」ドネイターはゆっくりと頷き、窓の外の闇を見つめる。
「ブローチがダミーにすり替えられているのに気づいた時、確信した。本物の輝きは、力だけではない——心が伴って初めて宿るものだから」
「見抜いていながら、なぜ放っておいたのです?」ゼロトキが問う。ドネイターは唇の端をわずかに上げる。
「確かめたかったんだ。彼が内部から何を変えようとするのか。そして……星玲奈がどちらを選ぶのかも」
「試していた、ということですか」
「そうだ。この戦いの行く末を決めるのは、力ではなく——彼らの心の選択なのかもしれない」ゼロトキも沈黙のうちに頷き、六つの光がそれぞれに輝き始める聖堂の方角を見やる。
「ならば我々は、ここで待つのですね。最終の時が来るまで——」ドネイターは厳かに告げる。
「ああ。全ての答えが出る時、真の決戦が始まる」こうして——見抜かれていた潜入! だからこその試練! 物語、聖堂で最終決戦の時を待つ——!




