EPISODE6-6【星玲奈の襲撃】
メルトキアの街がまだ穏やかな朝を迎えていた矢先——。空から不穏な影が舞い降りる。クロノレイトたちが滞在する宿営地めがけ、一団が襲いかかるように進んでくる。その先頭に立っていたのは——星玲奈だった。
「まさか……! 星玲奈がここに!?」
クロノレイトは目を見開き、思わず一歩踏み出す。彼女の背後には、衆生解放戦線の下っ端たちが控え、一斉に構えを取っている。星玲奈は真っ直ぐにレイトを見据えながら、凛と声を上げる。
「申し訳ない……。だけど、ここで立ち止まってもらうわ」
「どうして……! お前が率いて来るなんて!」
「命令だから。それに——」彼女は一瞬、瞳を揺らがせるものの、すぐに強く引き締める。
「私は今、衆生解放戦線の一員として、この地の平和を崩す役目を負っている」レゾルとジャンヌが前に出て、レイトの両脇に立つ。
「彼女が敵として現れた以上、こちらも手を抜けないわ」ジャンヌは秩序の光を帯びながら告げる。
「だが、倒すのが目的じゃない。話を聞かせることが先だ」レゾルが冷静に状況を見極める。クロノレイトは拳を握りしめ、胸の痛みを抑えながらも真っ直ぐに星玲奈を見つめる。
「話そう。ちゃんと話せば、分かり合えるはずだ!」だが星玲奈は手で合図を送り、背後の部下たちに進軍を命じる。
「行け! ためらうな!」こうして——予期せぬ襲撃! 星玲奈が率いる一団! 物語、愛する人と刃を交える時——!軍団の中にはゴーレムなど古代兵器が混じってる。クロノレイトはメロダックを構える、星玲奈はスラッシュロッドを構える
襲撃の一団が眼前に迫る中、その軍勢の中から巨体がゆっくりと姿を現す——。
岩肌をそのまま身に纏ったゴーレムたちが、重い歩を響かせて進み出る。他にも朽ちかけた鋼鉄の兵、古の呪術で動く人形たち——古代兵器が混ざり込み、威圧的な気配を辺りに充満させている。
「古代兵器まで……!」クロノレイトは眉を寄せ、メロダックを強く握り構える。
「星玲奈、お前がこれらを率いているのか……!」対する星玲奈は、手に長い杖を構え直す。先端に蒼い光が宿るスラッシュロッド——一振りで空間を裂き、一撃で大地を割ると伝わる武器だ。
「レイト……ごめん」その声は震えていた。だが彼女は瞳を強く締め、ロッドの穂先を真っ直ぐに向ける。
「行け! 一斉にかかれ!」ゴーレムたちが一斉に拳を高く掲げ、地鳴りと共に迫り来る。クロノレイトはメロダックを一閃させ、聖なる光と穢れの力を刃に纏わせる。
「俺は倒したりしない……! だが、止めてみせる!」レゾルとジャンヌも左右に展開し、備えを固める。
「相手は大きい。だが的確に動けば——」
「秩序の力で動きを封じる! 無闇に傷つけるな!」こうして——古代兵器が牙をむく! メロダック対スラッシュロッド! 物語、想いと刃が交差する——!緊迫した戦場の中——星玲奈が不意に一歩踏み込み、クロノレイトの胸元まで近づく。
「星玲奈……?」彼が戸惑う一瞬、彼女はそっと唇を重ね——突然、クロノレイトの舌を強く噛みしめた。
「っ……!」鋭い痛みが走り、クロノレイトは思わず体を竦ませる。唇を離した星玲奈の瞳には、決意と哀しみが入り混じり、そのまま低く囁くように告げる。
「これで……少しは痛み、分かったでしょう」血の気配が唇に滲む。それはただの攻撃ではなく、彼女の抱える苦しみ、理不尽な選択、心が引き裂かれる思い——その痛みを彼に知らしめるかのような、残酷で痛ましい行為だった。
「俺は……星玲奈、お前を傷つけたくないのに……」クロノレイトは唇の痛みを抑えながらも、彼女を責めることなく、ただ真っ直ぐに見つめ返す。星玲奈は顔を背け、スラッシュロッドを強く握り直す。
「さあ、来なさい——私のことを倒すつもりで」こうして——痛みで伝える想い! 残酷な口づけ! 物語、心が引き裂かれる瞬間——!唇の痛みも癒えぬ中——星玲奈は一歩も退かず、そのまま間合いを詰めると、躊躇なく連続で蹴りを放つ!
ドンッ! ドンッ!
急所を狙った鋭い蹴りが次々とクロノレイトに襲いかかる。
「ぐっ……!」耐え難い痛みが走り、クロノレイトは思わず身を屈め、膝をつきそうになる。それでも彼女を責める言葉は出てこない。ただ、彼女の瞳に揺れる苦しみが見えるから——。
「星玲奈……なぜ、ここまで……」荒れる呼吸の中、問いかける声は震えていた。星玲奈は蹴りを止めず、まっすぐな瞳で彼を見下ろしながら告げる。
「甘い顔をしていたら、本気になれないでしょう? レイト……私を倒すと決めたのなら、心を鬼にしなさい」
「俺は……倒したりなんかしない! お前を救うんだ!」痛みをこらえ、クロノレイトは顔を上げる。その瞳には、変わらぬ想いが燃えていた。星玲奈は一瞬、動きを止める。だがすぐにまたロッドを構え直し、冷たく言い放つ。
「ならば、私の攻撃を全部受け止めてみなさい。それができるのなら——ね」こうして——容赦なき連続攻撃! 痛みの奥にある想い! 物語、試される絆——!痛みに耐えてなお立ち上がるクロノレイトの姿を前に、星玲奈は唇をきつく結ぶ。
「しぶといわね」そうつぶやくと、彼女は素早く回り込み、鋭い一撃を放つ——!
ドンッ!
まっすぐに蹴りがクロノレイトの鼻に入り、鮮血が飛び散る。
「がはっ……!」彼が一瞬くらりと体を揺らした隙を逃さず、星玲奈は宙に跳び、踵落としを脳天に叩きつける!
ガツン!
衝撃が全身に走り、クロノレイトは地面に片手をつき、崩れ落ちそうになる。視界がかすみ、息も荒くなる——。
「レイト!」ジャンヌが駆け出そうとするのを、レゾルが手で制する。
「待て。今は——本人が受け止めようとしている」クロノレイトは血を拭いながら、それでもゆっくりと頭を上げる。
「星玲奈……まだ、俺のことを覚えていてくれる……なら」言葉は途切れつつも、瞳の光は消えない。星玲奈は踵を返すように立ち、手にしたスラッシュロッドを強く握りしめる。その瞳の奥には、怒りとは別のものがきらめいている——。
「立てるものなら……立ち上がりなさい」こうして——追い討ちの一撃! 痛みの中で消えぬ想い! 物語、耐え抜く先に答えが——!息も絶え絶えのクロノレイトに、星玲奈は容赦なく迫る。
「っ……!」鋭い掌底がみぞおちに一発、また一発と叩き込まれる。
ズンッ、ズンッ!
臓腑が軋むような衝撃が連続して襲い、クロノレイトは体を折り、苦しそうに肩を震わせる。息を吸うことさえままならず、唇から血が一筋伝う。
「……なぜ、星玲奈」絞り出すような声が漏れる。それでも彼は、彼女を憎むことができない。星玲奈は手を休めることなく、さらに続ける。
「甘えているからよ。これで目を覚ましなさい」だがその声は、自分自身に言い聞かせるように震えている。本当は痛ましくて仕方ない——それが態度の端々に滲み出ている。クロノレイトは拳を握りしめ、みぞおちの痛みを堪えながら、ゆっくりと頭を上げる。
「目は……覚めてるよ。だから、お前の本心が見える……」星玲奈は一瞬、動きを止める。だがすぐにまた顔を強く引き締め、次の構えを取る。
「ならば……立ってみなさい。そうすれば続きを受けてあげる」こうして——容赦なき追撃! 痛みの向こうにある真実! 物語、耐え抜く心が試される——!みぞおちの痛みがまだ残る中、星玲奈は一歩間合いを詰め——真っ直ぐに拳を伸ばし、クロノレイトの喉元を捉えた。
グッ……!
鋭い圧迫が呼吸を奪う。声も出ず、息も詰まり、クロノレイトは肩を大きく震わせ、手で彼女の腕に触れる。
「っ……はぁ……」苦しそうな息遣いが漏れる。それでも彼は、彼女をはねのけようとはしない。星玲奈は拳を喉元に押しつけたまま、瞳を揺らがせる。
「……どうして、抵抗しないの」声は低く、怒りとも哀しみともつかない。
「倒せる力があるでしょう。なのに、いつまでも受け止めてばかりで……」
クロノレイトは息を整えながら、かすれた声で答える。
「抵抗したら……お前との絆が、途切れてしまう気がするんだ……」
「俺は、お前を傷つけたくない。連れ戻したいだけなんだ……」その言葉に、星玲奈の拳の力が一瞬、緩む。だがすぐにまた強く握りしめ、顔をそむける。
「……バカね」そう呟く声は、震えていた。こうして——喉元を捉える拳! 苦しみの中で揺れる想い! 物語、心が迫り詰める瞬間——!ついにクロノレイトは力尽き、地面に崩れ落ちる——。だが星玲奈はそのままにはせず、一歩踏み出し、急所を執拗に踏みつける。
グッ、グッ……!
重い圧が何度も繰り返し襲い、耐え難い痛みが全身を貫く。クロノレイトは歯を食いしばり、肩を激しく震わせながらも、声を上げて訴えることさえできない。
「……どう? 痛いでしょう」星玲奈の声は冷たく響くが、踏みしめる足元は、本当は踏みつぶしたくないという心の葛藤で微かに震えている。
「これくらいの痛み……私が毎日感じている痛みに比べたら、まだ軽いものよ」彼女は目を細め、涙を堪えるように言う。
「私の心は、これ以上にずっと、ずっと痛んでいるの。レイト……それを分かってほしい」クロノレイトは地面に手をつき、血の気配を浮かべながら、かすかに口を開く。
「……分かってるよ。星玲奈が苦しんでるの……俺は知ってる。だから俺は……お前を救うために、何度でも立ち上がる」その言葉に、星玲奈は一瞬足を止める。だがすぐにまた踏みしめ、涙を抑えて告げる。
「なら……立ってみなさい。それが本当なら」こうして——地に倒れてなお! 踏まれても消えぬ想い! 物語、痛みが絆を試し続ける——!痛みに耐え、ゆっくりと——だが確かにクロノレイトは立ち上がる。血が滲み、体は痛むにもかかわらず、瞳の光は消えていない。
一歩、また一歩と距離を詰め——その手は、思わず星玲奈の胸元を鷲掴みにしていた。
「っ……!」
星玲奈は息を呑み、体を硬くする。突然の行為に驚きながらも、彼の手をはねのけることはない。
クロノレイト自身も我に返り、手の力が抜けかかる。
「すまない……俺……」
だがその手を離すことなく、真っ直ぐに彼女を見つめる。
「痛い……全部、受け止める。だけどな、星玲奈」
声は震えながらも、強く心に響く。
「お前がどれほど苦しんでいるか、俺には全部わかってるつもりだ。だからって……自分を壊すようなことをしないでくれ」
「俺がお前を守る。絶対に……一人にしない」掴んだ手は、いつしか優しく肩を抱くように変わり——彼女を閉じ込めようとする闇から引き離そうとするかのように。星玲奈は瞳を潤ませ、その手に触れる。
「……バカ。そんなこと言われたら、ますます離れられなくなるじゃない」こうして——掴んだ手が絆に変わる! 真っ直ぐな想いが胸に届く! 物語、心が触れ合う瞬間——!星玲奈の瞳に溢れそうな想いが浮かんだその瞬間——周囲から漆黒の靄が湧き上がり、彼女の全身を優しく包み込んでいく。
「星玲奈……!」クロノレイトが手を伸ばすものの、黒い靄は次第に濃く厚くなり、彼女の姿を少しずつ奪っていく。
「待ってくれ……! まだ話は終わってない!」手を掴もうとした指先は、靄に遮られて空を切る。星玲奈の輪郭がぼやけ、声も届かなくなり——やがて完全に姿が消え失せた。辺りにはもう彼女の姿はなく、ただ不穏な気配だけが遠ざかっていく。レゾルが駆け寄り、周囲を確かめる。
「転移……か。追おうにも、行き先が掴めない」ジャンヌも秩序の光を辿るが、手がかりは途切れていた。
「闇の力で痕跡を隠されているわ。今は追いつけない……」クロノレイトは手のひらを見つめ、唇を噛み締める。
「また、行かせてしまった……。だけど……」顔を上げ、瞳に再び決意を灯す。
「絶対に取り戻す。今度は逃がさない。グラナディアまで——必ず辿り着いてみせる」こうして——黒き靄に包まれて消えた星玲奈! 残された想いと約束! 物語、グラナディアへの道が続く——!グラナディア——転移前のスペインにあたる地、サグラダ・ファミリアの静かな一室。ステンドグラスから差し込む光が、床に優しく模様を描いている。その中心に、姿を消した星玲奈が一人佇んでいた。誰もいない空間で、彼女は胸の奥から絞り出すように呟く。
「レイト、ワタシはどうすれば…」声は震え、切なさに満ちている。自分がしたこと——彼を傷つけ、痛めつけ、それでも離れがたくて、結局は黒い靄に紛れて逃げてきた。
「あんなに傷つけたのに……それでも私を救おうとしてくれるなんて……」
手のひらを胸に押し当て、溢れそうな想いを抑えきれず、瞳から涙がこぼれ落ちる。
「どうしたらいいの? レイトの想いに応えたい……だけど、今の私は……」
自分が歩むべき道、選ぶべき答え——それが分からず、心が千々に乱れる。
「このままでは、彼を巻き込んで壊してしまう……それだけは嫌なのに……」
窓の外に広がる空を見上げ、遠く離れた彼の名を、再び口にする。
「レイト……」こうして——サグラダ・ファミリアにて! 揺れ動く星玲奈の心! 物語、答えを求めて——!




