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声の為にあるなら 【短編集】  作者: 八坂 わう
2/5

天上に帰った悪魔

丘の上にある古い教会は、孤児院を兼ねた小さな教会だ。

そこには5人程の子供達が暮らしてる。

風の強い日だった。一人のシスターが教会から出てくる。一人の子供を追って。

教会から出てきたのは一人の少年だった。

「悪い気配だ…」

少年は眉間にしわを寄せ、背の高い草ばかりが目立つ丘を睨んだ。

あたかもそこに何かが現れるかのように。

「中へ入りなさい。迷子になるわ」

追いついたシスターが少年を捕まえた。しかし少年は動かない。

その時だった。ごうっという激しい風が吹いて少年達の髪や服をはためかせる。

「何…?」

シスターは目を凝らした。そこには鴉のような黒い羽を生やした大きな者がうずくまっていた。

途端にシスターが強く少年の肩を掴んで叫ぶ。

「早く中へ!」

しかし少年は微動だにしなかった。

「迎えか?」

少年はただそれだけ聞いた。

「ああ…」

黒い者は頷き、少年は悲しそうに俯いた。

「さよなら。時が来たようだ」

振り向いた少年の背中には見事な黒い羽が生えていた。

引き止めようとシスターが何か言いかけるが止められる。

「感謝している」

少年は静かに微笑んで羽ばたき、シスターの額にキスをした。

「行こう」

黒い羽達は大きく羽ばたいて天上に消えた。

「さよなら…小さな悪魔の子」

シスターの頬を伝う雫はぽとりと落ちた。

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