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声の為にあるなら 【短編集】  作者: 八坂 わう
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チョコレートの心臓

お城に住む小さな男の子の姿をした魔王には心臓がなかった。

それ故に彼は不死身であり、死ぬことがない。しかし死なない魔王は心臓を持つ人間にいつも憧れていた。

脈打つ鼓動の力強い音が好きだった。

でもそれは本当に生きているものだけの特権であり、魔王はそれが羨ましかった。

ある日魔王は襲った村から腕利きのパティシエを連れて来て言った。

「おい君、僕にチョコレートの心臓を作ってくれ」

パティシエが後で聞くと、魔王はチョコレートケーキしか食べられないのだと言った。

パティシエは最高のチョコレートケーキを作った。

心臓の形の、今にもどくん、どくんと唸りだしそうなほどの力作だった。

魔王はそれに魔法をかけ、パティシエの目の前でその心臓を生きた心臓にした。

魔王は喜んで箱にしまい、「僕の心臓ができた」と満足気にパティシエを家に帰したという。

しかしその話を聞いた討伐隊がたちまち城に攻め入り、魔王のところまでやって来た。

「やめろ!!」

喚き散らす魔王を押しのけて討伐隊の隊長が箱を開き、剣で心臓を突き刺した。

するとたちまち魔王は灰になり、霞となって消えてしまった。

「魔王を討ち取ったぞ!」

下卑た笑い声の主は上機嫌にケーキを切り分け、あろうことかそれを食べてしまった。

それを知った魔王の心臓を作ったパティシエだけが、ただ一人、彼の死を悲しんだという。

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