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第5話 遺跡の守護者と、スクロールがもたらした『魔力』の目覚め

難破船で見つけたマジックアイテムのコンパスが指し示す通り、ジャングルの奥深くに進むと、蔦に覆われた巨大な石造りの『古代遺跡』が姿を現した。


「……随分と立派な建物だが、歓迎ムードじゃなさそうだな」


入り口を抜けた巨大な広間。そこに足を踏み入れた瞬間、地響きと共に巨大な石の塊が立ち上がった。


全身に幾何学模様の光を走らせた、見上げるほど巨大な四つ腕の『守護ゴーレム』だ。侵入者を排除するための防衛システムらしい。


『ガガ……ギギギギギギ!!』


ゴーレムが四本の巨大な石の腕を振り上げ、俺を叩き潰そうと迫る。


だが、ドラゴンを真っ二つにした今の俺にとって、ただ大きくて硬いだけの的など脅威でもなんでもなかった。


「ちょっと硬そうだな。なら――」


ダンッ!と床を蹴る。俺の姿は完全にブレて消失し、次の瞬間にはゴーレムの頭上に跳び上がっていた。


漆黒の剣を上段から振り下ろす。我流剣術の極致と、ハイヒューマンの規格外の腕力が合わさった一撃は、鋼より硬いゴーレムの巨体をまるで豆腐のように縦に両断した。


轟音と共に崩れ落ちる瓦礫の山。


その奥の部屋に、仰々しい装飾が施された一つの巨大な宝箱と、淡く光る石舞台のような『転送陣』が鎮座していた。


「よしよし。お宝と脱出ルートのセットだ」


ガチャリ、と重い蓋を持ち上げた瞬間だった。


プシュウウウッ!!という音と共に、宝箱の内側から濃密な紫色のガスが勢いよく噴き出した。


「うおっ!?」


完全に不意打ちだった。ガスをモロに吸い込み、視界が紫に染まる。


難破船の連中がここまで辿り着けていたとしても、おそらくこのトラップで全滅していただろう。だが俺の『状態異常完全無効』スキルは、この古代の即死トラップすら「ちょっとホコリっぽい空気」程度にしか変換しなかった。


ガスが晴れた宝箱の中には、羊皮紙で作られた二つの巻物スクロールが収められていた。


「これが魔法のスクロールってやつか? 広げて読むのか……?」


不思議に思いながら、俺が素手でその巻物に触れた瞬間。


スクロールは突如として光の粒子に変換され、俺の腕を伝って体の中へと吸い込まれていった。


『スキル:【時空間魔法】【鑑定】を習得しました』


頭の中に直接響く無機質な声。それと同時に、俺の体の中に「新しい血管」が開通したような、不思議な感覚が走った。


へその下あたりから温かいエネルギーが湧き上がり、全身を巡っていく。今まで剣を振るう筋肉しか知らなかった俺の脳に、「これが魔力だ」という感覚と、スキルの具体的な使い方が直接インストールされたのだ。


「……なるほど。これが魔力ってやつか。意外と簡単に扱えそうだな」


俺は早速、湧き上がる魔力を目に集めるイメージで、懐から出した『世界地図』に新スキル【鑑定】を使ってみる。


すると、先ほどまでミミズの這ったような謎の記号だった文字が、スラスラと読めるようになった。


「えーっと……俺がいるこの島は『絶対禁忌領域・竜の巣』。で、この地図に描かれたバツ印の果実は……伝説の霊薬『仙桃せんとう』。一口食べれば不老の命と最強の肉体を得る……」


地図の文字を読み上げた俺は、思わず天を仰いだ。


「マジかよ。俺、ただの腹ごなしに伝説のアイテム丸かじりしちゃったぞ」


嫌な予感がして、恐る恐る自分自身に【鑑定】を使ってみる。


【名前】九郎

【年齢】25歳(肉体年齢:20歳)

【職業】遭難者

【称号】絶対禁忌の生存者

【状態】健康

(※以下、自己鑑定による隠蔽解除)

【種族】ハイヒューマン(人間の最上位種/不老)

【スキル】状態異常完全無効、不眠耐性、疲労耐性、時空間魔法、鑑定、我流剣術(極)


「……人間、やめてるじゃねえか」


15年のサバイバルと仙桃の力で、種族ごと進化してしまっていたらしい。


だが、今の俺はこんなことでパニックになるほどガキじゃない。


「まあいい。丈夫なのは良いことだ」


もう一つのスキル【時空間魔法】。


空間を切り裂くように魔力を練ると、そこに真っ黒な亜空間の穴が開いた。試しにドラゴンの素材やサバイバル道具を放り込んで【鑑定】すると、内部は『時間経過:停止』の状態になっていた。超絶チート収納だ。


「最高だな、これ。ブラック企業時代に欲しかったぜ」


必要なものを全て収納し終えた俺は、いよいよ『転送陣』の前に立った。


魔力を流し込めば起動できることは、今の俺には直感でわかる。


「地図によれば、海を越えた先、『人間たちの生活圏』に繋がってるはずだ」


15年ぶりの人間社会。俺は胸を高鳴らせながら、転送陣の光の中へと足を踏み入れた。


――しかし、この転送陣の接続先が、人類未踏破の超高難易度ダンジョンの『最下層』だということを、俺はまだ知る由もなかった。







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