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第39話 至高の伝説武具と、鳴り響く凶兆の鐘

ガルドの温泉宿で最高の夜を過ごした翌朝。


俺たちは胸を高鳴らせながら、再び天才鍛冶師ドランの工房の扉を叩いた。


「おお! 来たな、規格外の客ども!!」


扉を開けると、そこには全身をすすだらけにしながらも、ギラギラとした目を輝かせるドランの姿があった。


徹夜でハンマーを振るっていたはずなのに、その顔には疲労よりも、職人としての底知れぬ達成感が満ち溢れている。


「できたぜ……。俺の鍛冶師人生、いや、ガルドの歴史に名を残す『最高傑作』たちがな!」


ドランが誇らしげに指差した作業台の上。


そこには、鈍くも圧倒的な魔力の光を放つ、四人分の真新しい武具が並べられていた。


「す、すごいです……! 見ているだけで、武器から伝わってくる魔力の圧が……っ」


「ええ。長年弓を握ってきたけれど、こんなに恐ろしくて美しい武器、エルフの里でも見たことがないわ」


レイアとシルヴィアが、息を呑んでそれぞれの武器を見つめる。


俺は視線を細め、自身の持つ【鑑定】のスキルを発動して、作業台に並んだ武具のステータスを読み取った。


「さて、どれほどのモンに仕上がったか……って、おい」


脳内に浮かび上がった詳細な情報を見て、俺は思わず息を呑んだ。


「クロウさん? どうかしたんですか?」


「いや……レイア、お前が今まで使ってた剣って凄腕の職人が打った『ユニーク級』だったよな?」


「はい! 私の魔力にぴったり合う、お気に入りの剣でした」


「……ドラン。あんた、とんでもないモンを打ちやがったな」


俺はドランと仲間たちに向けて、鑑定結果を告げた。


「ここにある全員の武器と防具……全部、ユニーク級のさらに上の階級。人の手で打てる最高峰、**『伝説級レジェンド』**に到達してるぞ」


「「「……えっ!?」」」


俺の言葉に、レイア、セツナ、シルヴィアの三人が一斉に硬直した。


無理もない。伝説級など、おとぎ話の英雄が歴史に名を残すレベルの代物だ。それを、一晩で四つも作り上げたというのだから。


「がはははっ! 当たり前だ!! 冥界の黒鋼に深層竜の骨……これだけの伝説の素材を贅沢に使って、俺のハンマーで叩き上げたんだ! 伝説級にならねえほうがおかしいってもんよ!!」


ドランが腹を抱えて豪快に笑う。俺は改めて、それぞれの武器を仲間たちに手渡しながら詳細を確認した。


【名称】伝説級:冥竜の魔法剣

【効果】極大の魔力伝導率。不壊属性。所有者の魔力を刃に変換し、切れ味が無限に上昇する。


【名称】伝説級:血竜の暗殺短剣(双剣)

【効果】超軽量化。装甲貫通。かすり傷からでも、素材となったワイバーン特有の猛毒を対象に流し込む。


【名称】伝説級:星砕きの竜弓

【効果】張力自動調整。使用者の魔力を用いた『魔力矢』の自動生成。射出された矢の威力を三倍に増幅する。


「そ、そんな……! ユニーク級でも凄いのに、伝説級の武器なんて……私、手が震えちゃいます……っ」


「ご主人様、この短剣、すっごく手に馴染みます! 早く素振りしてみたいです!」


「ふふっ、これならどんな硬い魔物の装甲でも、正面から撃ち抜けそうね」


三人がそれぞれの武器を手に取り、嬉しさと興奮で顔を紅潮させている。


そして、最後に作業台に残されていたのは――俺のオーダーした武具だ。


「さあリーダー、お前さんの分だ! 『神話級ミシック』の服の邪魔にならねえように極限まで軽量化した防具と……どんな攻撃でも絶対に砕けねえ、俺の魂の傑作だ!!」


ドランがドンッ! と音を立てて持ち上げたのは、漆黒の金属で打たれた急所用の防具と、竜骨が複雑に絡み合った身の丈ほどもある巨大な大剣。


そして、その大剣の背にガシャリとパーツを合体させることで、そのまま『超巨大な大盾』としても使えるという、ロマンの塊のような武器だった。


【名称】伝説級:深淵の剣盾アビス・バスター

【効果】超重量。大剣と大盾への瞬時可変機構。物理・魔法攻撃の極大軽減および反射。


【名称】伝説級:黒鋼の急所当て

【効果】超軽量。急所(心臓・首・関節)への物理ダメージを完全に無効化。


「……最高だ。これなら、仲間を守る巨大なタンクとしても、前衛の矛としても完璧に立ち回れる。あんたに頼んで本当に良かったよ、ドラン。……約束通り、余った深層素材の端材は全部あんたにやるよ」


「おおおおっ! ありがてえ!! 俺の工房の……いや、ドラン家の永遠の家宝にするぜ!!」


ドランが感涙しながら残りの素材に抱きつくのを見届け、俺たちは大満足で鍛冶工房を後にした。


「す、すごいです……。これだけ大きくて重そうなのに、少し魔力を流しただけで、まるで羽みたいに軽く感じます」


活気あふれるガルドの街を歩きながら、レイアは腰に帯びた新しい愛剣の柄をそっと撫でていた。


全員が、人の手で打てる最高峰『伝説級』の武具を装備している。道ゆく冒険者やドワーフの戦士たちが、俺たちの武器から微かに漏れ出る規格外の魔力の圧に気づき、ぎょっとして道を空けていくほどだった。


「さて、最高の武器と防具が手に入ったとなれば……やることは一つだな」


「ええ。これだけ素晴らしい武器、早く実戦で試してみたいわ。身体がうずうずするのなんて、何十年ぶりかしら」


シルヴィアの言葉に、俺は頷く。


「ここから徒歩一時間くらいの場所に、ドワーフたちが管理している『火山ダンジョン』があったよな。観光も兼ねて、そこの中層あたりで軽く『試し斬り』でもしてくるか」


「はいっ! 私も早く、この剣で思い切り魔物を斬ってみたいです!」


レイアがウキウキとした声で同意した、まさにその時だった。


――ガァァァァァァァァァンッ!!!

――ガァァァァァンッ!! ガァァァァァァンッ!!!


突如として、ガルドの街全体を揺るがすほどの、けたたましく重々しい鐘の音が鳴り響いた。


「え……? な、なんですか、この鐘の音……っ!?」


セツナが狼の耳を塞いで、ビクッと肩を震わせる。


ただの時報ではない。腹の底に響くような、焦燥感に駆られる不吉な音。


それまで活気に満ちていた街の空気が、一瞬にして凍りつき――直後、爆発したような悲鳴と怒号が沸き起こった。


「おい、嘘だろ……!? 『赤の警鐘』だ!!」


「まさか、スタンピードか!? どこのダンジョンからだ!!」


武器を手に取ったドワーフの戦士たちや冒険者たちが、血相を変えて街の広場へと走り出していく。


混乱する群衆の中を、拡声の魔道具を手にしたギルドの職員が、顔を真っ青にして走り抜けながら叫んだ。


「緊急事態!! 緊急事態です!! 街から東へ一時間の『火山ダンジョン』にて、大規模なスタンピード(魔物大氾濫)が発生!!」


「「「なっ……!?」」」


「現在、数千を超える魔物の大群が、ダンジョンから溢れ出し、このガルドの街へ向かって猛進中!! 冒険者および戦士階級の者は、至急、東の防衛線へ集結せよ!! 繰り返す――!!」


職員の絶叫が、広場に木霊する。


数千の魔物の大群。それが街に到達すれば、いくら強固なドワーフの国とはいえ、甚大な被害は免れない。まさに国を揺るがす大災害だ。


逃げ惑う一般市民と、決死の覚悟で武器を構える戦士たちで街中がパニックに陥る中。


俺たち四人は、ピタリと足を止めたまま、顔を見合わせた。


「……火山ダンジョン。俺たちがちょうど『試し斬り』に行こうとしていた場所だな」


俺の呟きに、レイアが腰の伝説級の剣に手をかけ、ふっと凛々しい笑みを浮かべた。


「ええ。向こうから来てくれるなんて、わざわざ歩く手間が省けましたね」


「ふふっ。しかも、的の数には全く困らないみたいだし?」


「ご主人様! 私、一番乗りで暴れてもいいですか!?」


シルヴィアが優雅に弓を引き絞る動作をし、セツナが好戦的に牙を覗かせる。


誰一人として、数千の魔物の大軍を前にして怯える者はいない。それどころか、手に入れたばかりの最強の武具の性能を試せる最高の舞台サンドバッグが用意されたことに、皆の士気は最高潮に達していた。


「よし。ガルドの街に美味い飯と温泉の恩もある。少しばかり、派手に掃除してやるか」


俺は背中のアビス・バスターの柄を握りしめ、獰猛な笑みを浮かべた。


凶兆の鐘が鳴り響く中、最強の武具を手にした俺たちは、魔物の大群が押し寄せる東の防衛線へと向かって、一直線に駆け出した。


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