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28.襲撃

 オルタ姉さんに事情を説明して家の中から出て来た。村の広場に冒険者一行が見える。俺は得意げに姉さんを見ていると『お手柄お手柄』と言って俺の頭をなでて来る。


「本当に『女神の園』じゃないかい。こりゃ驚いた。幹部が総出じゃないか!? あの3人はスペルユーザーだろ? ってお前の同胞か! だからこんなところまで出張って来たんだな」


「まあ、そうらしいな。この一件が片付いて街に戻ったら何とかしてあいつらから逃げないといけない! あ、そうだ置いてった俺の弓、持ち帰らないといけないんだった。裏にある?」


「なんだい、なんだい。あれ、持って帰るのかい? ん? ちょっと見ないうちに装備が良くなってるね?」


「ああ、街の鍛冶屋のおやじが俺の作った武器が珍しいってんで交換してくれたんだよ。エルブンボウが出来るかもしれないとか言ってあれも交換した」


「……大丈夫なのかい? エルブンボウを易々と渡しちまって、同胞の秘伝とかじゃないのかい?」


「そこは良く分かんないけど、俺のはなんちゃってエルブンボウだから問題ないと思う」


 俺が姉さんと話しながら家の裏手に回る。置きっ放しにした壊れたなんちゃってエルブンボウを回収に来たのだ。ついでに乾燥していたシーナの原木も回収しておく。


 姉さんは俺とは別に村の広場の方へ向って行き、避難するかしないかの確認に行ったようだ。そりゃあ、手間が全然違うから確認するよ。


 ここにある薬剤やら器具やらを持ち出して避難するのは容易じゃないからな。家の裏手に回ったことで俺は広場から見えない位置に居る。


 俺が見えるのは直ぐ傍にある森だ。オルタ姉さんの家はどうしたって匂いが出るから村の外れににあるんだ。つまり村の中で一番匂うのがここってことだ。


 次いで猟師の所だけど元旦那が猟師だったから、匂いの元ワンツーがここになる。そりゃあ、村外れに追いやられるのも仕方ない。


 ガサゴソと森から音がしたので何気に振り返ってしまった。……そして目が合っちゃったよ。1対の金色に輝く獰猛な目だ。獣だって目を合わせちゃいけないのに! バッチり合ってしまった。


 そいつは突然、仁王立ちになって、両腕を振り回したと思ったら逆茂木やら柵やらを一気に粉砕してしまった。バキベキガガガンと物凄い音がしたと思ったら俺目掛けて全力疾走だ。


 俺? もちろん硬直して動けないよ。ちょーおっかねぇ。熊と会ったってこんなにビビらないと思う。すげぇ迫力だ。これが魔獣か!


 のろのろと俺の体が反応し出したが、敵はもう目の前だ。やっと俺の体が反転して逃げようとしているが膝が笑っちゃっていてどうにも素早い動きとは言い難い。


 背中に猛烈な熱を感じたと思ったら、今までが嘘だったかの様に物凄い勢いで前に吹き飛んだ。そのまま顔面、いや、体全体が姉さんの家の壁に激突する。


 もちろん俺の意思じゃない。痛いとかそんな事を思う暇すらなく、壁にぶち当たって跳ね返り、数回地面をバウンドした俺。何が何やら分からない!


 しかしまだ俺は意識を保っている。どうしたらいいか分からないけど、逃げなきゃいけないとずっと思っている。うつ伏せだった体を起して、逃げようとした俺の体にまたしても灼熱の衝撃が走った。


 今度は脇腹だ! 何も感じないが、腹にズブリと何かが喰い込む感触はある。そのまま体ごと持と上げられて左右に大きく振り回される。


 そして地面に叩きつけられた。どうにか両腕で頭を庇い、致命傷は免れたが、その勢いのままゴロゴロと転がって、どうにか敵と距離をとることが出来た。


 くそ! 頑丈な体が恨めしい。意識でも失う事が出来れば楽なのに……。現実はそうそう簡単に意識を失うとか出来ないよ。


 ――くっ! 体が言う事を効かない。仰向けに寝転がったままもぞもぞと動こうとしているだけだ。このままじゃ生きたまま喰われる!


 いくらなんでもそれは嫌だ。せめて殺してから喰ってくれ! 出来れば喰わない方向がいいが、そこまで俺でも楽観的にはなれない。


「た、助けて……」


 呟いた俺の方が驚いてるよ。そうだよな、こんな弱々しく助けを呼ぶなんて思ってもみなかったよ。でも死にたくないんだよ。なんでか分からないけど、生きたいんだよ。


 助けて! シルエラ、マーシャ、シャーラ、カウル、リュカ、キャララ。誰でも良いから助けて! ゆっくりポイズングリズリーが俺に近づいて来る。


 アイツきっと俺の腹から喰う気だ! 柔らかい内臓から喰う気だ。ヤダヤダヤダ。こっちくんな。もう声も出ない。脇腹や背中からは命の源がどんどん流れだしてる。


 腕も変な方向に曲がっていて良く動かせない。顔はどうなってるかなんて分からない。もうダメか……。遠くから皆の声が聞こえて来たけど、喰われる方が早いかも。


 その時遠くから3本の火の矢が立て続けにポイズングリズリーに着弾した。ドン! ドン! ドン! 一発一発の威力が大きい。着弾するたびにポイズングリズリーが後退していく。


 走り込んで来たリュカとキャララの斬撃がポイズングリズリーに叩きこまれ、あっさりとポイズングリズリーは討伐された。

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