27.第3開拓拠点村
エロフ達の魔の手から逃れるため、俺は魔物についての話題を振ってみた。そこで知った驚愕の新事実! ポイズングリズリーは下級の魔物だってこと。
俺をあんなにビビらせたポイズングリズリーが弱い魔物の部類なんだって。でも熊よりは強いらしい。良かった。熊にも勝てないからって、良くないよ!
それにはどうやらキャラレベが関係してるらしい。キャラレベと言うのは肉体の総合的な強さの指標で技、ここではスキルと言うの強さとは別物なんだって。
スキルにもレベルがあって、鍛えればそのスキルもどんどん上がっていく。魔法もそうだ。レベル1の魔法の強さは同じだけどレベル1とレベル2では違うらしい。
「ああ、大体分かって来た。自分自身も技も鍛えないと強くならないってことだな」
「当り前じゃん。ベテランと駆け出しが同じな訳ないじゃん」
それはそうと魔の手から逃れるために話題を提供したと言うのになぜこんな街道の真っただ中で俺はズボンを脱がされているんだ!
「ふぅ~。幼子の面倒を見るのは大変だな。さあ、もう大丈夫だろう。ズボンを履きなさい。……まだか」
さっきからシルエラが会話に加わらないのは、俺の世話をしていたからだ。しなくてもいいって言ってるんだけど、さわさわ触るから体が反応するんだよ。
そうするとまあ、お世話される訳なんだ。多分そのさわさわを止めない限りエンドレスだと思うんだが、気付いているだろうか? このエロフたちは!
この後小一時間ほど絞られてやっと解放された。うん。一巡したんだよ。御者のリュカも含めてな! 何か対策を立てないとこのままでは……。
やっと村が見えて来た。助かった。本当に助かった。これがもっと遠い所だったらと思うと震えが来そうだ。
「さあ、そろそろ到着する。シンも少しの間、我慢しなさい」
俺! 俺のせいなの! くっそ、ああ、分かったよ! 多少の刺激程度じゃびくともしないくらいになってやるさ。……無理だろ?
馬車のまま村に乗り入れ、広場の中央で止まる。シルエラを始めとした『女神の園』のメンバーが次々と馬車を降りる。そこに村の住人から声が掛った。
「お前達は冒険者か? 依頼を受けて来てくれたのか?」
「村長!? 久しぶりって程じゃないが、無事でなに寄りだ。この人たちはあの後、緊急クエストに昇格したポイズングリズリーの討伐依頼を受けてくれた冒険者だ」
「――? シンか!? 戻って来たのか。またなんで戻って来た! ここは危険だぞ。昨日も冒険者が2人死んだぞ!」
「あー、村長か? ちょっとすまんが2人死んだと言ったか。こちらで把握しているのは、3人なんだがどう言う事か説明してほしい。ああ、申しおくれた。わたしはクラン『女神の園』のクランマスター、シルエラだ」
「!!! 『女神の園』のクランマスターが来てくれたのか!? そいつは助かった。もうここもお終いかと思っていたところだったんだ。ああ、すまん。後1人のことだったな。毒にやられながらも帰り着いた奴がいたんだ。うちの薬師が解毒して助かったから2人だ」
「なるほど。それは朗報だ。良い薬師が居るんだな」
「まあ、それもそいつ、シンが素材を集めてくれたおかげなんだがな」
「ふふふ。なに、同胞を保護してくれたからの奇跡だろう。そして同胞を保護してくれたからこそ私達がここに居る。情けは人のためならずとは良く言ったものさ」
「違いねぇ。わっはっは」
村長とシルエラが到着早々に何やら話し込んでいる。俺はそれを横目に村を見回すと俺が居た頃より柵が強化されていた。
強化と言っても多少柵の密度が増して居たり逆茂木が追加されていたりする程度だが、しないよりはマシだろうと思われる程度だ。
さらに村中総出で警戒に当たっており、男衆が木槍を片手に村中に立って森を見張って居たり、女衆は既に荷物をまとめ退避準備中だ。
本当に村を捨てる直前と言うところだったようだ。そりゃ、そうだろう。討伐に来た冒険者が鎧袖一触、返り討ちにあって半壊して逃げ帰って行ったんだ。
さらに敵の正体がブラウンベアじゃなく魔物、ポイズングリズリーと分かってしまったんだからな。ブラウンベアでさえ村を捨てる必要があるかもと思っていた処にそれ以上の脅威が居たのだから。
俺は皆の元を離れ、村外れに建っていたオルタ姉さんの家を目指そうと思って行動を開始した。そんな俺の行動を見て居たのか、リュカにガッツリ襟首を掴まれ行動を阻止されてしまった。
「――っつ! な、なんだ? リュカ、離してくれ。知り合いの様子を見に行きたいんだ。村の中だから大丈夫だ」
「――危険!」
「なんだよ。リュカ? あっちに見えるのがオルタ姉さんの家なんだよ。直ぐそこだろ? こんな狭い村の中なんだから見える範囲だよ」
「……気を付ける」
「ああ、森に入ったりしないさ。オルタ姉さんの家に行くだけだ。うん」
ようやっとリュカが俺の襟首を離す。すると俺はまた捕まったら堪らないと猛然と走りだしてオルタ姉さんの家に向かった。
「オルタ姉さん! 無事か? 俺、俺! シンだ!」
薬剤庫から慌てた様に出て来たのはオルタ姉さん。びっくりして出て来たようだが、大量の薬剤を抱えている。退避のために薬剤を整理中だったようだ。
「シン! 何で戻って来た! あたしらも直ぐに避難する所さ。こんなところに来たってなんも役にたちゃしないだろう」
「冒険者を連れて来たんだよ。ポイズングリズリーを物ともしないほどの腕前の冒険者だ。ちょっとお節介で肉食系だけど腕は確からしい。ポイズングリズリー程度なら何匹来ようが安心だぞ」
「何言ってんだい。30000リューム程度じゃ、そんな冒険者は来てくれやしないよ」
「それが先に失敗しただろ? あれで冒険者協会の尻に火が付いたんだよ。緊急クエストになって報酬も倍増以上だ。そうしたらクラン『女神の園』が受注してくれた」
「『女神の園』だって! 上位クランじゃないか!? 幾ら緊急クエストになったからってそれでも足らないだろう?」
「……うんまあ、そうらしいけど、俺が居たからね。クランマスター直直にお出ましだよ。あっちで村長と話してるよ」
「……そうか。『女神の園』のクランマスターはエルフか。そうだったな、ぷっ。なんだシン、早々に同胞のエルフに確保されたのか?」
「……否定は出来ないが保護したいらしい。それも困っているんだよ。何か知恵を貸してくれ。あっと、話が逸れた。そんなことだからもう退避しなくても大丈夫だよ」




