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19.街へ④

 受付嬢がそう言って裏方の人に瓶ごと渡しました。何やら上皿天秤で重さを測っているようです。暫く作業を見守っていると後ろの方が大分焦れている様子。


 さっきから何気に小突かれてます。くっそ~。やり返したいけどすっげ~ムキムキなんだよ。仕方ないので脇に避けて順番を譲ってしまったよ。


 そいつはジロリと俺を睨んだけど、もちろん目を合わせません。獣だって目を合わせると襲ってくるよね?


 カウンターに肘をついて何やらがなりたててる。別の受付嬢が来て対応してるみたいだけど、ビシッと怒られてた。


 くくく。ザマァミロ。降格してしまえ! もちろん心の中でしか思って無いよ。おっかないからね。


「はーい。お待たせしました。凄いですね。品質も上々ですし、かなり量もありましたよ。ってどうしてそんな端に行かれてるのですか?」


 そんな不思議そうに見られても色々あったんですよ。おっかない方に小突かれてましてね!


「い、いえ。みなさんお待ちでしたので邪魔にならないようにしていただけです。それで、どうでした?」


「はい。ちょっと量が足りませんでしたけど、オマケしておきますね。乾燥と粉末処理も加味してです。ルカの粉末が4500リューム、マカの粉末が7200リュームです」


「おお、お? 多いんですか? いま一つ分かりませんけど」


「ええ。Fランク昇格に十分ですよ。おめでとうございます」


 おお! そうか、昇格するのにちょっと足らないって事だったのね。そこはオマケしてくれたんだ。ラッキー。


 俺の冒険者証の裏に焼き印を追加してくれました。これでFランクです。見習いです。


「それではFランクになりましたので依頼もしくは換金は3日に一度が義務になりますので注意して下さい。それではまたのお越しをお待ち致しております」


 受け付けを離れて、また長イスに座り込む。さっきから依頼が放置されたままなのが気になっていたんだ。そうだよ。村の依頼ですよ。


 俺でもFランクってことはEでも厳しいんじゃないかな~。Eランクに上がるには狩猟が出来ないといけないらしいけど、ブラウンベアじゃなくてもいいだろうしな。


 ――あっ。依頼受けてくれる人だ! って俺と大差ない恰好なんですけど。まあ、俺より、装備は充実してるけどさ。


 やっぱり、揉めてるよ受付で。Fがどうたらとか言ってるから、Eの方じゃないんだな。自己責任ですからねと違約金が発生しますよとか注意されてる。


 ちょっと心配だな。顔出しちゃ不味いかな? そろそろと寄って行くと、受付嬢さんが気が付いた。


「こちらの方が依頼主さんの代理の方です」


「どうも、こんにちは。村長の依頼で持ち込んだだけですけど、一応近接遭遇までしました」


「ああ、問題無い。俺達はブラウンベアを斃した事があるから、心配しなさんなって」


 さっさと受付を済ませて出て行ってしまった。


「一応、彼らなら大丈夫だとは思うんですけど、1匹とは限りませんから……」


「確認はしてませんけど、俺が遭遇した時は1匹でしたね。姿も見てませんし、確証はありません」


 一応不測の事態も在り得るとして受付嬢さんは、Eランクに受けてほしそうだったみたい。そうだよな。あの時の迫力から言って、簡単じゃなさそうだったもんな。


 冒険者ギルドで依頼の受付まで確認したから、俺は自分の事を優先することにした。まずは装備! ナイフぐらい買いたい。


 鍛冶屋を目指して歩いて行くと、店の前でカラコロンと扉から出て来たおっさんが伸びをした。


 なんとなく目が合ったのは偶然じゃなくて俺が目指していた鍛冶屋さんだったからだ。直接販売もしている鍛冶屋さんで色々融通が効くらしいと教わって来たんだ。


「おい、そこのエルフ! ちょっと来い」


 あれ~? 俺なんかした? 腕とか凄くゴツイんですけど。


「お、俺ですかね?」


「お前以外いないだろうが! その背中の槍見せて見ろ!」


 なんかすごい剣幕なんですけど、思わず従ってしまいました。別に見せるのくらい問題無いよ。怖いからとかじゃないから!


「見たこと無い作りだな。穂先は一般的か……しかしクズ鉄だな。石附は黒曜石か? 削り出したのか。 柄はククリの木に皮を巻いてる? この繊維は何だ?」


「えーと、チルの蔦を煮出して取った繊維を編んだものだよ」


「お前が自分で作ったのか? どこで教わった!」


「……エルフ独自の物だよ。簡易的だけどね」


「エルフ特有の作りか……なるほど見たこと無い訳だな。ククリの木……か。いいかもしれんな。チルの蔓……膠で固めてあるからありなのか?」


 なんだよ。作りが見たこと無いから気になっただけかよ。全部知識の泉さんからだよ。きっとエルフの常識だよ。


「ああ、悪かったな。見たこと無い槍だったから気になっちまってな。本来はもっとしっかりした作りになるはずだろう? ちゃんとした職人が作ればと言う但し書きが付くけどな。がははは~」


 ああ、そうですよ。素人が本を見ながら作った様なものですよ。本当はもっと色々あるんだろうけど知識の泉も万能じゃないんだよ。ごく一般的な知識しかないんだよ。


「……買い物に来たんだけどいいか?」


「おお、客だったのか。すまんな。まあ、見てってくれ」

本日2回目の更新です。平成最後の更新となります。


令和でもよろしくお願いいたします。

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