18.街へ③
自分の今後のことも気になるが、依頼を出した村のことも気懸りだった。ちょっとの間とはいえお世話になったので、情も湧くと言うものだ。
「Eランクでブラウンベアとか斃せるのかな? とりあえず俺には無理そうだけど、俺ってどのくらいのランクなんだろう?」
そう思ったら、まだギルド登録もしていない事に気付く。慌ててもう一度受付に並び直す。目の前には俺の1.5倍はあるんじゃないかと言う雄の獣人族の冒険者が並んでいる。
めちゃくちゃ強そうだ。その脇にも雌の冒険者(獣人)が居て、こちらももちろん恐ろしく強そうである。俺の後ろに並んだ人族の冒険者は、本当に人間か疑いたいくらいの巨漢だし、その向こうには龍人族(?)らしい戦士も居る。
依頼を出す事に気が急いていたので、改めて周囲を見回すと皆さん強そうです。スペルユーザーは一見少ない、やはり貴重なのだろう。
これなら村も安心かな? ……あっちの方に居るのは俺と大差ないぞ? 非常ーに弱そうだ。やっぱりランクの差は大きいのか?
俺の番になったので新規登録をお願いする。そう言うと受付嬢が俺の事を上から下までゆっくりと観察して溜息をこぼす。
「冒険者は大変危険な職業ですよ? 毎日毎日死人が出ます。それでも登録しますか?」
「……えーと。俺には向いていない? ですかね?」
「……言え、そう言う訳ではないのですが。それ槍ですよね?」
俺が背中に括り付けている槍を受付嬢が指差して言う。うん、槍だね。それも自作の槍だね。
「……そうですが問題が?」
「と言う事はエルフのスペルユーザーではなく軽戦士ですよね? 非力なエルフなのですからせめてスペルユーザーじゃないと生き残れませんよ?」
「……今後覚えようかと思っていますが、先立つものが無いとと思いまして」
「里に戻られて魔法を覚えてからまたいらした方が良いと思いますよ? 獣でも結構強いですから」
「……さ、採取で暮らしを立てようかな、なんて? はは……ははは」
受付嬢が首を横に振り、無理だよっと無言のうちに知らしめようとしているかのようだ。
「ちょっと無謀ですね。採取地でも獣は出ますし、簡単に採取できるものは安いです。採取で暮らしを立てるにはもっと奥の方に出かけられるような方じゃないと……当然そういう方は獣なんてものともしません」
「で、でも一応登録だけはしておきたい……かな?」
「……分かりました。登録料は3000リュームです。こちらに必要な事項を書いて下さい。読めますよね? 字は書けますか?」
「大丈夫です」
小粒銀を30個渡して、うん。知識の泉さんカモーン。よし。問題無い。このミミズがのたくっている様なのとかカクカクしたのとかが文字か~。良く俺、こんなの書けるな?
「はい。これで登録完了です。こちらがNとFランクの冒険者証です」
そう言って渡されたのが木片に焼き印が押され、紐が通してあるだけの粗末なものだった。え~、俺の想像していたのと大分違うな。
「これですか? こんなんでいいんですか?」
「今、ご説明いたしますね。冒険者証はランクによってその素材、機能など異なっています。登録したて、Nランクとまだ見習いのFランクの方達は直ぐに死んでしまいますので高価な素材は使えないんですよ」
……直ぐ死んじゃう? と言う事は冒険者証も無くなっちゃうから勿体ない? と言いたいのかな? 確かに勿体ないけど、これ木片だよ? その辺に落ちてるよね?
「冒険者の方は依頼もしくは換金の度に1割の税の徴収が自動的にされます。その税金があるので入門の時の税金が免除されている訳です。ここまではいいですか?」
「あ、はい」
「冒険者の方は収入による税のみですので、人頭税や苦役などの他の税金が無い代わりに強制依頼や義務討伐があります。またランクによって常に依頼を受ける、換金をするなどをしませんと除籍処分または税金逃れなどの対象として捕縛されますので注意して下さい」
「ちなみに俺の場合は……」
「はい。登録したてですのでNランクです。Nランクの場合、強制依頼がまず発生致しますので速やかに達成して下さい。ルカ草、1000束です。マカ草での代替納入も可能です。その場合500束に減免されます」
「き、厳しいですね」
「ええ。でも期限が切られていませんから心配しなくても大丈夫ですよ。その代わり毎日10束以上の納品が必要ですからね」
それって期限切られてるのと変わらないじゃんか! およそ100日、毎日取って来いって事ですよね! 確かにそれしか出来ないけどさ。
「あ、あのですね。これ事前に集めてたんですけど、買い取ってもらえますか?」
そうです。オルタ姉さんの所でご厄介になっている間に集めていたものです。オルタ姉さんが乾燥して粉末にまでしてくれたルカとマカです。
「??? 何でしょうこの粉末……。――あっ! でも、うーん。これってルカとマカの粉末ですよね? どなたが作ったのですか?」
「第3開拓村拠点の薬師、オルタさんです。そこでお世話になって居ましたので採って来たものを持ち運びし易い様にしてくれました」
「ああ、オルタ師ですか。それなら問題ないですね。うん。葉脈も取り除かれていますし、品質も上々ですよ。ちょっと重さを図りますからお待ちください」




