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17.街へ②

 大して荷物もない俺は、村長の依頼に応えて街に走ることとなる。折角採って来たシーナの木だけど姉さんの家の裏で乾燥させておく。壊れた弓も置いて行くことにした。


「シン、良くお聞き。街は物価が高い上に素材は安いよ。何か困ったら遠慮せずに戻っておいで。いいね。忘れるんじゃないよ」


「うん。オルタ姉さんお世話になりました。泉に行く約束を果たせなくてごめん。これ借りていた形見のナイフ返しておくよ。また来たら借りるかもしれないからね」


「そうかい。忘れもんは無いね。これはお昼にでも食べな。気を付けて行くんだよ」


「サンキュ。必ず冒険者ギルドに依頼は出すから、オルタ姉さん達も気を付けて」


 俺は女衆に囲まれて、別れを済ませると街に向かって走り出した。片道6刻。走って行けば4、5刻くらいか?


 早朝に出て走り始めたので昼前には着くだろう。何事もなければだけど。ブラウンベアが出たのとは反対側だからそこは大丈夫だと思うけど、他の獣は居るかもしれない。


 走り初めて2刻、俺が最初にこの世界に来た辺りだ。最初は3刻ほどかかったから俺も体力付いて来たかな? 残り半分急いで行こう。


 街までの道でちょいちょい獣は現れたが、狐や狸、鹿のような積極的にこちらを攻撃してこない奴らばかりだった。


「やっと着いた。やっぱり5刻かかったな。さて最初に並んだ門だ。今度こそ入れるだろう」


 門の前には数人の人間が並んでいたが、直ぐに俺の番になった。


「身分証を提示しろ!」


 衛兵は思った通り横柄だったよ。多分身分差とかがあるんだろうな。ちくしょう。ちょっとイラッとくるな。まあ、身分差なんて無かった日本から来たんだ。しょうが無いだろう。


「第3開拓村拠点、村長のウォルトの依頼で代官様に緊急連絡です」


 そう、俺が居た村は名前はまだ無いが、一応識別として第3、つまり少なくても他に後2つ開拓村拠点があるんだ。


 村長に渡された木簡を提示して衛兵に渡す。もちろん衛兵は検分して本物か確かめるけど、こんなの偽造してまで街に入ろうとする奴はいない。


「確認した。このまままっすぐに行けば領主代行の館に着く。そのまま行くように!」


 俺は木簡を受け取って言われた通り、そのまま門をくぐって真っ直ぐ進む。中央広場を過ぎて少し行ったところで目的の領主代行の館があった。


 ここまでの道は主要道路だろうけど、思ったより賑わってるな。露店や屋台もそれなりに出ているし、商店もちらほらある。


 領主代行の館の門の前には当然また門衛がいる。先ほどと同じ事を繰り返して木簡を渡すと今度は木簡を持って奥に入って行く。


 当然俺は門の外で待機だ。暫く待つと官服を着たやや若い文官風の男を伴って門衛の一人が戻って来た。


「あなたが第3開拓村拠点からの伝令ですか。事情は把握しました。この後の指示は村長から受けていますか?」


「はい。代官様の判断次第ですが、恐らく冒険者協会で依頼を出す事になるのではないかと……」


「はい。その通りです。では一緒に行きましょうか」


 こうして若い文官風の男に従って冒険者協会を目指す事になった。


「あなたは冒険者ですか? またなんで第3開拓村拠点に?」


「え~と。冒険者になる予定でしたが、諸事情で無一文になりまして、村でご厄介になって居ました」


「ふむ。諸事情ですか。……なるほど。命があっただけマシですね」


 どうやら勝手に諸事情を理解してくれたらしい。助かると言えば助かるんだが、モヤッとするな。間抜けを見るような目が特に!


 冒険者協会に着いたが、これ……は、思ったより盛況だな。人種(?)、種族(?)の坩堝だ。えらい人数の冒険者が居る。


 久しぶりの知識の泉情報、冒険者の稼ぎは魔物がメインでありそれが豊富に居るのは開発が済んだ中央より辺境が多いためらしい。


 中央に残るような冒険者は指名依頼だけを受ける高ランク冒険者か、街の中だけの依頼を熟す木端冒険者のどちらからしい。


 一攫千金を目指す冒険者は辺境に来るか迷宮に潜るらしい。迷宮は難易度が高いので、まずは辺境で腕を磨くと。


 文官風の男の権威は結構凄いらしい。簡単に手続きが済んで行く。依頼料の段階でやっぱり文官風の男は10000リュームしか出さない。そのまま俺に視線を寄越すので後はお前が出せってことだろう。


 村長から預かった20000リュームを追加で出して合計30000リュームの依頼料だ。一応このくらいの金額を任せて貰えるくらいには信用されていたんだな。


「依頼料は30000リュームでよろしいですか?」


 受付嬢が確認してきた。ギルドの受付嬢は美人が多いと言うのは偏見だ。もちろん多い事は多いよ。受付はその組織の看板だから出来る限り良い方がいいのは地球でもここでも変わらない。


 お客さんが受ける印象がケタ違いがだからな。それに女子の方が人数が多いこともある。街中での仕事にほとんど危険はないため、女子率が高くなる。


「はい。どのランクの冒険者が集まりそうですか?」


「そうですね。おそらくEランクになると思いますよ?」


 手続きも無事完了して、文官風の男も去って行った。俺はギルドの脇に置いてある長椅子に崩れるように座り、肩を落とすのであった。

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