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第3話 異世界で最初の村

ドラゴン(ヘラトリックス)と別れた山波。

ようやく最初の村に到着する。村の宿屋に泊って見た山波の夢が山波の運命を……。

夢に翻弄されてしまうのか。一体山波とは。



 ヘラトリックス(ドラゴン)とまさかの遭遇をして、ここが地球ではないことを確認した。

 遊園地に行く前ドキドキで、遊園地に入ってからワクワクに切り替わる子供の気分だろう。それが年齢を重ねた山波であっても。

 車が走っている道は1本しかなく、これまで横道も存在しない。さらに、今のところドラゴン以外の人?にも馬車にも遭遇していない。

 あの車がこちらに来たことがあるのであれば、それはさほど昔ではない。山波はもっと話をしてみたかった事を少しだけ後悔していた。


 途中、食事休憩をしたが、結局その先でも風景はほとんど変わらなかった。


 車はカーナビに取り込んだ地図の上では既に村を越えているのだが、それは山波が設定した縮尺が正しくないことを示していた。だが、それはやむを得ないことである。何しろ地図には縮尺の目安になるものが何も載っていなかったのである。さらにGPSが頭上に存在しないのだから正しい走行を示せというのは酷である。


 車はそのような風景の街道を1時間程走っていたが、やがて目の前が開けてきた。

 森は無くなり、畑が広がっている。低木が並木のように並んでいる。さらにその向こうには3mくらいの木の塀があり、塀の中に櫓が見える。


「ついに村に到着か」


 講習を受けた場所からメーターでは240kmを越えていた。一旦車を停めて地図の縮尺を合わせる。

 地球のような仔細までわかるしっかりした地図ではないからあくまで参考にしかならない。しかし、山波は予想よりずいぶん距離が離れていると感じていた。

 また、ここに来るまでに出会ったのはドラゴンだけで、その目的も酒という予想外の理由であった。つまり現地の人には会っていないということになる。



※作者注:後に山波は、酒についてはドワーフというさらなる異世界定番の存在を記憶の外に置き忘れていた。と記している。




 車を再度発進させ、村の門に向かっていった。

 この世界では車は多少目立つものの、そのまま村や町に入っても殆ど問題はない。


 車を門の手前で停車させ、車を降りた山波は門番のところまで歩いて向かった。



「こんな村に珍しいな、旅人か?」

「ええ、そのようなものです」

「そうか、身分証を見せてもらえるか?」

「ええ」


 門番に首からかけていたタグを見せる。


「うん、確認した。ポルックス村へようこそ、ゴロウ。何もない村だがゆっくりしていってくれ。それにしても変わった馬車だな。魔道具か?」

「ええ、そのようなものです。ところで、このまま村の中に入っても問題ないですか?」

「ああ、暴れないようにしてくれよ。それと馬車の駐車スペースは決まっているからそこに止めてくれ」「ありがとう」


 ヘラトリックスが意味ありげに言っていた特Sについては特に何も言われず、車を村の中に進めた。

 停める場所はすぐに分かった、馬車というよりも荷車のようなものが数台停めてあり、駐車所という文字と、馬車の絵が描かれた立札もあった。


 この世界では駐車場ではなく駐車所と言っており、さらに村や町で場所は複数個所ある。

 王都などでは管理者がいる場所は有料で存在するが、ここは駐車場が無料なので管理者はいない。

 また、王都などではほぼすべての宿に駐車所は常設されている。


 山波は必要のある物のみバッグに入れ、身を守るための警棒は腰に携帯し、宿に泊まるために車から降りた。

 折角旅行に来ているのだし、初めての村なら1泊までは費用と精算できるのを利用するようにしたのである。現地の宿に泊まるのは旅の醍醐味でもある。

 車は障壁が展開されているので、駐車所に停めても荷物を盗まれたりする心配はない。

 ただ、駐車所から宿まで歩くのは面倒ではある。それもものは考えようで、折角の初めての場所なのだから歩くのも一興と言えた。


 村の中の中央通りと思われる通りを中心に向かって歩く。時折すれ違う人が山波を見るが、それはこの村にいる人間ではないということで多少の珍しさがあったことと、場違いな服装、荷物などを持っているので目立つのは当然であった。ここでのTPOを考えていれば、服装などに気を使うこともできたであろう。


 ベッドのマークその上にフォークとスプーンがクロスしたマーク看板が山波の目に入ってきた。

 ベッドだけは宿のみ、フォークとスプーンのクロスのマークは食事処やレストランであり、その両方が看板に描かれているのは宿泊と食事も可能という意味である。


「こんにちは~」


 その宿に入った山波は受付のようなところで声を掛けた。


「は~~い」


 奥から女性の声が聞こえ、暫く待っているとややふっくらとした女性が現れた。


「宿泊をお願いしたいのですが、一人部屋で1泊お願いできますか?」

「ええ、1泊銀貨2枚になります。夜と朝の食事がセットで銅貨40枚になります」

「では食事もセットでおねがいします」


 山波は銀貨2枚と銅貨40枚をトレイに乗せた。

 こちらの世界ではチップという考えかなかったのは幸いである。


(貨幣は数えるのが面倒だな)


 貨幣は重いし、場所をとる。


「ありがとうございます。これが部屋のカギになります。2階の端の21号室です」

「ありがとう、ところで食事の時間は決まっていますか?」

「17時から20時までが夕食の時間、朝の7時から9時までが朝食の時間、退室は10時までにおねがいします」

「わかりました、どうもありがとう」


 鍵を受け取り、2階の部屋に向かう。


 時間については講習では地球と同じ24時間ということになるため地球の時計がそのまま使用できる。ただし、時計上では1日こちらの時間の方が2分ほど先に進むため、1ヶ月で1時間の差が出る。

 つまり、1ヶ月に1度1時間、時計を進めるか、半月に30分進めれば地球の時計は問題なく使えるということになる。

 ただし、日付については地球と異なるため同じようには使えない。あくまで時間だけ微妙に使えるということである。


 夕飯はあと1時間程で食べたられる時間になる。それまで今日あったことを記録する。




 夕食を終えた山波は部屋に戻りゆったりとした時間を過ごしている。マグカップに入ったコーヒー ――ステンレスボトルに入れて持ってきている―― をテーブルの横に置き、その香りを堪能することで気分がゆったりとしている。指先はノートパソコンを操作し、ドラゴンと一緒に写っている写真データをPCに取り込み、それを眺めている。ドライブレコーダーの動画に映っているドラゴンは怪獣映画の主役を張れるだけの迫力が十分あった。


(そいえば、講習では冒険者ギルドというところに行ってみると旅行がさらに楽しくなると言っていたな。地球にはいない種族も集まっているということなんだよな。明日行ってみるか。)



 ドラゴンの動画を十分堪能してから、ノートパソコンの電源を切り、ベッドに入った。

 この世界の室内用の明かりはランプ石というローソクよりも明るい物を使用している。

 それでも、ノートパソコンの明るさよりは暗い為、山波はその明かるさを気にすることなく眠ることができた。




-------------------



 ここは広い宮殿のような場所だ。元々はとても優雅で美しい宮殿であったことだろう。しかしその面影は今はない。

 壁のあちらこちらは崩れ、倒れている柱もある。床は抉られている場所もある。天井も一部崩落している。優雅さがわかるのは崩れていない壁面の画や、倒れている柱の一部にある彫刻などが理由である。

 床の赤いじゅうたんも優雅さに拍車をかけていたかもしれない。


 そんな宮殿の床に横たわっている人物がいる。腹部に禍々しく見える剣が刺さっており、別の影がその剣を抜こうとしている。が、抜く事ができないようだ。

 刺さっている本人は既に苦痛の顔をしていない。いや、苦痛どころが微笑みさえ感じる顔である。黒髪で黒目。日本の街並みを歩いていたら、誰も振り向くことがない普通の顔だ。

 剣を抜こうとしている影に光が当たる。わずかな光であるが、いままで見たこともない美しい女性であることがわかる。金髪で毛の先はやや透明である。耳が長いことも特徴と言えるが、ここでは不思議ではない。その眼からは涙がしたたり落ちている。



「△○※ってよ」

「*+@%いや∂§‡※ズすまんな。回復魔法もポーションも効かないようだ。だがもう邪神はいない。あとのことはお前に全てまかせるよ」

「何、勝手な事言っているの、一緒に生活しようって言ったのに……」

「約束を守れずにすまない」



 横たわっていた人物は指にはめた指輪を外し、女性の手にそれを握らせる

 握らせた後、その手が女性の頬を撫でる。


「いつか再び会える日までまっていてくれ。本当にすまない」

「○△※◆ぅ---------------」


 スローモーションのように、音もなく静かにその手が床に落ちていく。


 暫くすると、その肉体が光に包まれ消えていった。



-------------------


落ち着きそうですので、チェックが終わったものから順次UPしていこうと思います。

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