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第19話 山波の世界へ

ついに初めて山波の世界に戻ることにした。2人とライエをどうするか?

そして、明かされるリストラの真実!ゴブリンの襲来!

山波はそれを受け入れることはできるのか!



 やはり、呪いは継続されているようだ。目覚めた山波はだからといって宿に泊まらない選択肢もない。

 そういえば1度だけ目覚めもよかった。あのときは……。

 そう、泥酔してしまったのだ。しかし子供が2人いる所で泥酔するのは恥ずかしい。

 なにか酔わずに熟睡する方法はないものか?


------


 目覚めて食事を済ませ、今日の予定を話す。


「今日は私の世界に行きます」

「「???」」


 2人には難しかったようだ。ぽか~んとしている。



『がううう(なんすか世界って)」


 ライエとは分かり合えるかもしれない。


「えっと、いざ説明すると難しいな。なんと言ったらいいんだ。つまり私の住んでいる世界に一時的に戻ろうと思う」


「「『???』」」


 さて困った。

 とりあえず宿を引き払い、車に向かう。


 確か講習では一時的に元の世界に戻っても、車は現地に力場体で存在し、本人たちはどこかにいるという安心感が深層心理? 意識下? に置かれるので、誘拐、拉致、行方不明などで探される心配はないと言っていた。

 山波にはサッパリ意味が分からないのだがとにもかくにも、こちらの世界の人たちが山波を心配しないのであるならば問題はない。

 確か条件の一つにこっちの世界の品物は持ち込めないという一文があった。ライエやメンカ&リナンは品物ではないので問題ない。と考えた山波である。腹黒い考え方である。

 あとは、山波の世界で吉田氏がサポートしてくれる事に期待することにする。


 それよりも、山波はメンカ&リナンの口数が少ないのを気にしていた。小さいうちに両親を無くしてしまったのだ。たとえ異世界であってもPTSDなどないとは限らない。なので山波の世界で何か刺激を受ければ元気になるのではないかと考えていた。

 また山波は後悔していることが1つあった。それは2人の母親の遺体を回収してお墓を作ってあげられなかったことだ。もっとも、母親のふりをしていた山賊の女を母親と思っていたのでそれは決して山波の責任ではないのだが。


 車を停めている場所に着いたとき、見慣れているエルフがそこにいた。


「アークさんなんで?」

「ふふふ、今日は昨日のような失敗はしないわ。今日はどうするの?」

「あ~~」


(参ったな、アークトゥルスさんを向こうに連れて行っていいものか?そうだ!)


「え~。アークトゥルスさんのお母さんってもしかして、女王様だったりします?」

「あ~、う~」

「それを教えてもらわないと今日の予定として、アークさんに付いてきてもらうのは困るのです」

「え?なぜ?」

「秘密です」

「……。そうです女王をしてます」


 アークトゥルスが、真っ赤になり小さな声でいった。

 自分の母親が女王だと恥ずかしいのだろうか?


「というと、アークさんは王女なのですね?」

「え?いえ?はい?そうです」

「いくつか聞いていいですか?」

「ええ」

「まず一つ。なんで恥ずかしがっているのです?」

「そ、それは……。ママが女王なのに私がこんなだから」

「それは、恥ずかしいことですかねぇ。人はそれぞれの道を歩む権利がありますから気にすることはないですよ」

「そ、そうですか」

「で、次に」

「は、はい」

「アークトゥルスさん!!」

「はひ」

「あなたは、別の世界に行きたいと思いますか?」

「え?別の世界?」

「ええ、私はこの世界の人間ではないのですが一度元の世界に戻る予定です。もちろん明日には戻ってくるつもりです。今日の予定は向こうの世界で過ごすつもりだったのです」

「え、本当に?行きます。ぜひ行かせてください」


(この軽さ本当にいいのだろうか?」


「わかりました。ただ、今回の件を女王様に魔法で伝えるのは止めてもらえますか?」

「止めます。私が他の世界に行ったことを知ったら、きっと……」


 両腕で自分を抱くようにしながら震えている。


「本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「そうですか、わかりました。それではひとつ約束してください。向こうでは私の指示に従うと。できますか?」

「できます。約束します」


 一抹の不安が残る返事ではあるが、これ以上時間を費やしても無駄だろう。


「では、車に乗ってください」


 アークトゥルスが車に乗り込み終わってから、ゲートをつなげる。

 車は周囲の様子が変化して、山波の自宅である駐車場に戻ってきた。


 山波は3人と1匹には一旦車に待機してもらい。家の中に入って行った。家の中の淀んだ空気に包まれた山波は、ブレーカーを上げ、部屋の窓という窓を開けて空気の入れ替えを行った。

 初秋のさわやかな空気が家の中に籠っていた空気と入れ替わる。山波を包んでいた淀んだ空気もさわやかな空気に代わっていった。


 山波は車に戻り、3人と1匹を家の中に迎え入れた。もちろんライエの足裏を拭くのは忘れてはいない。もちろん3人には靴を脱いでもらっている。

 その後、3人と1匹にはトイレの使い方、水道の使い方などを教え、ここでの生活に困らないようにしてもらう。


 それが終わると、3人と1匹を畳みのある部屋に案内し寛いでもらうことにした。


「はぁいいにおい~草の臭いがする」

「ほんとう」

『がうう(いいすね)』

「……」


 それぞれ、メンカ、リナン、ライエ、アークトゥルスの反応である。

 座布団と座椅子を押入れからだし、それぞれに座らせる。


「ちょっとだけ待ってていてくれ」


 子供2人とライエは何とか問題ないようだが、アークトゥルスはきょろきょろして落ち着かない様子である。


 その間に山波は吉田氏に連絡する。


「もしもし、山波ですが。吉田さんですか?」

「はい、吉田です。こちらに戻られましたか?」

「ええ、それで吉田さんに相談したいことが」

「わかりました。これから向かいます」


 吉田氏は山波が電話をしてから30分ほどで山波の家にやってきた。


「流石に早いですね。どうぞお上がり下さい」

「お邪魔したします」


 そこで初めて3人と1匹を見た吉田氏は、


「フ、フレイムウルフとそちらは獣人の子供ですか、それにアークトゥルス様!なんでこちらに」


 指で口を押えるようにしていたがすでに遅い。


「てへへ、ママには内緒にしてよ。お願い」


 頭の上で手を合わせ、頼み込んでいる。


「わ、わかりました、それにしても連れてきてしまいましたかぁ」

「ええ、条件には品物はダメだったんですが、まあ品物ではないので」

「まあ、連れてきてしまったものは仕方がないです。で、どうするのです?」

「ん~。子供たちは尻尾を隠して耳を帽子で隠せば何とかなるのではないかと思うのですが、ライエ、あ、フレイムウルフの名前ですね。は、どうしたものかと。この大きさの犬ってこの世界にはいないですし、アークの耳はまあ髪の毛で隠すか何かで何となるでしょう」

「そうですね。なら、フレイムウルフは体を小さくしてもらってはいかがでしょう? たしか従魔の首輪は体を小さくできるはずです」

「おお、そんな能力も」

「ただ。1回小さくすると1日元には戻らないので滅多にやらないですが」

「なるほど、一応今日と明日は小さいままでいてほしいので問題ないですね」

「それと2人には私が魔法をかけて耳と尻尾が分からないようにしましょう。アークトゥルス様はかつらが必要でしょうかね、あちょっと待ってください」


 吉田氏はどこかに電話を掛けた。

「もしもし、ああ、私だ。うん。アークトゥルス様がこっちに。それで、そう頼む持ってきてくれ。いや、私の魔法はアークトゥルス様に掛けられないんだ。頼んだよ」


(吉田さんって魔法を使えるのか)


「それじゃ、子供2人に私が魔法を掛けます」

「吉田さんって魔法を使えるんですね?」

「大した魔法ではありません。最大2日間しか効果のないな魔法です」

「わかりました、それなら是非お願いします。それでライエの方は?」

「では、首輪に触れて体の大きさを想像しチェンジと言ってください」

「ライエこっちおいで」

『がうう(なんすか)』

「いまがら体の大きさを小さくするから驚かないように、1日こちらにいる間だけだから」


(まあ、私がいれば日数は関係ないだろう)


『がう~(えっ、流石にいやっす)』

「でも、その体の大きさだと一緒に行動できないぞ、この家で留守番してくれるならそれでもいいけど」

『がう(それも嫌っす)』

「だろ?もう諦めなさい」

『がうう(はぁ~~)』


 山波は首輪に触れながら中型犬より小さめの犬を想像しながらチェンジと言った。

 すると、ライエの体は小さくなり、中型犬よりやや小さめのサイズに変わった。

「おお、ライエすっごくかわいいぞ。こりゃ街で人気者になるにちがいない」

『がうう(ほんとっすか?)』

「ああ、2人もそう思うよな?」

 と山波が2人に声を掛けたとき、吉田氏は何やら唱え終わり2人の体を緑色の膜が一瞬覆うと、2人の耳と尻尾がそれぞれ薄くなり認識できなくなった。


「おお、こちらもすごいな」


 山波は2人を撫でる。しかし、手で触るとそこに耳は存在し尻尾も存在していた。


「認識阻害されるだけで、耳や尻尾が無くなるわけではありません」

「なるほど。やっぱり帽子は必要だな。後尻尾も隠せるようにしないと」


「おねえちゃん、耳消えた!」

「リナンも耳消えてるよ」

「触るとあるのに不思議ぃ~」

「ライエも小っちゃくなっちゃった」

『がうう(うわ、乗らないで欲しいっす)』

「ほらほら、2人ともお行儀よくしないとね。ライエが可哀そうだぞ」

「「ライエぇ~ごめんね」」

『がうがう(もんだいないっす)』

 ライエが2人の頬を交互に舐め、それによってきゃっきゃ言っている。


 その時、インターホンが鳴った。

「ん?だれだろう」

 インターホンの画面を見ると、兼松氏だった。

「え?兼松さん?なんで?」

 玄関のドアを開けてる。


「いや~。ご無沙汰しています。山波さん」

「なんて兼松さんが?私の家に?」

「ああ、アークトゥルス様のかつらを、こちらではウィッグというのを用意してきました」

「なんで、アークの事を?」

「まあ、玄関前ではなんですし、入れてもらえませんかねえ」

「あ、ど、どうぞ」


 和室に入ってきた兼松氏は


「本当にアークトゥルス様がいらっしゃるとは。女王様怒りますよ?」

「ママには内緒にしてぇ」


 山波が聞いた話では、結局兼松氏も向こうの世界の関係者であったということだ。

 山波を辞めさせるためにリストラの話を持ちかけ、それに山波が乗っかった。

 結局リストラされたのは山波だけで他には誰一人リストラをされていなかった。何しろリストラ自体フェイクのようなものだ。

 だが、+αの退職金をもらったことは事実で来年の税関係が諸々大変なことになるが問題があるとするとその程度だろう。そう山波は考えていた。

 山波にしてみればいいように踊らされてしまった感があるが、本人がそれで満足しているのだから怒りも湧かない。

 さらに、異世界旅行キャンペーンなるものも山波限定であり、キャンピングカーを買わなければ他の方法で異世界旅行が当選したことにしていたらしい。

 ピンポイントで山波を狙い撃ちだったのだ。

 だが、山波は知らない世界に行って不思議体験ができ、今のところ後悔はない。


「なるほど、そういうわけですか。でもなぜ私なのです?」

「そうですね。今はまだ確定ではないのでそこは伏せておきたいですね。それにいろいろ仕込んでいたことが……」

「なんでしょうね、でも今は十分楽しめていますので後悔はないですし怒りも湧かないです、でも、この子供たちは向こうの世界で賊に狙われ母親が殺されています。まさかと思いますがそれは仕込ではないですよね?」

「それは偶然です。本当に。山波さんはゴブリンから村を助けるというところはシナリオだったのですが、まさか山賊に出くわすとは思ってもいませんでした」


「えっ。ゴブリンってまさかの仕込み?」


 アークトゥルスが驚いたようにいった。


「ああ、アークトゥルス様もいらっしゃったんですね。そうです。あれは村人も含めて、まあゴブリン本人たちは知りませんが、そういう風にシナリオを作りました。女王様の命令で」

「ママが」


「まあ、存分異世界を楽しんでもらおうとしたからです」


(なんというか、ぶっちゃけているな)


「では、この子供たちは王都で面倒見てもらえるのでしょうか?」

「はい、それは女王様に連絡しますのでしっかり手配してもらいます」

「そっか、それならば安心して王都まで連れて行ける。そういえば最初に出会ったスレイプバッファローやこのフレイムウルフも仕込みですか?」


 ライエが『ん?よんだ?』というような顔をしてこちらを見た。


「いえいえ、それは全くの驚きで。なんといってもあのスレイプバッファローがあんなに懐くなんて。しかも初見で」

「本当に驚きです」


 吉田氏と兼松氏がそれぞれがそう言い切った。


「ライエは、なんで私の後を付いて来ようとしたんだ?」

『がうう(なんか付いて行かないといけない気がしたっす)』

「なんだそれは」

『がうん(野生の感、っすかね)』

「野生の感ねぇ。そういえスレイプバッファローも、付いていきたいって言ってんだよな?」

『がううん(その通りっす)』

「それは本当ですか?凄いですね。人間に懐くだけでなく一緒に行動しようとするとは。不思議な事もありますね」


 吉田氏が本当に不思議だという顔をしている。


「それに青ドラゴンも、あれはまあ、酒が飲みたかっただけか」

「ははは、早速、青ドラゴンに会いましたか。こちらの世界の酒をせがまれましたでしょ?」

「ええ」

「女王様から青ドラゴンにこちらの酒を与えないように我々は通達が来ていますからね。余程嬉しかったんだろうな」

「え、日本酒を売ってしまいましたけど。よかったんですか?」

「はい、山波さんは何をしようと免除されてます。良心に則って行動していただければ問題ないでしょう。このように子供たちを保護していただけましたし」

「それならいいのですが。もしかして、これから先の旅も仕込みはあるんですか?」

「その辺は私たちが言うわけにはいかないので」

「なるほど」


(あるということだろう)


 そこまで話し、山波は子供たちが暇を持て余しているのを見て、飲み物を出してあげようと台所に向かったが、冷蔵庫にはなにも入っていなかった。

 ブレーカーを落として行ったくらいなので当然と言えば当然である。そこで車まで戻りジュースを取ってきて出してあげた。

 山波は2人にBDを観てもらおうとよさそうなものを子供向けの映画をコレクションから探していたがどれがいいのか悩んでいた。するとライエが『がうう(これなんっすか?)』とジャングルブックを前足で踏んだ。

 ちょうとBDの表紙が狼と人が額同士をつけている絵である。

「丁度いいな。これにするか」

 山波はBDに円盤をセットするとモニターをつけて2人と1匹が見やすいように座布団に座椅子を正面に向くように位置を替えた。

 言葉が分からなくても問題はないだろう。子供というのは雰囲気を理解できるものだ。


 2人と1匹が映画を見ている間、別の部屋で吉田氏と一緒に経費の精算を行った。

 しかし、アークトゥルスも精算には興味がないようで、子供たちを一緒に映画を見に和室に向かった。


少し長くなりました。

お盆休みの暇つぶしにどうぞ。

校正

一部女王が王女になっていました。

見落としが多く申し訳ありません。

子供たちを一緒に映画を見に和室に向かった。->子供たちと一緒に映画を見るために和室に向かった。

「いくつか聞いていいですか? ->「いくつか聞いていいですか?」

吉田と兼松がそれぞれがそう->吉田氏と兼松氏がそれぞれがそう  


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