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優輝side王宮から学園へ

魔導演習後、王宮の私室。



優輝の周りには、転移後も変わらず彼を囲む三人の少女たちの姿があった。



「ねえ優輝くん。……本当にお兄ちゃんがいない世界って、最高に心地いいね。あんな陰気で口うるさいやつ、もう最初からいなかったことにしちゃおう? 私のたった一人の『お兄様』は、優輝くんだけだよ」


 燐火は優輝の腕に頬を寄せ、うっとりと呟いた。 


あの日、召喚の光に包まれて以来、彼女は実の兄である琥珀の姿を一度も見ていない。


王女レーアから「魔力が低すぎて転移に耐えられず死んだ」と聞かされた時、彼女が抱いたのは悲しみではなく、解放感だった。


 現実世界にいた頃、自分に細々と世話を焼き、優輝たちから「いらない苦労」を背負わされていた地味な兄。


そんなものは、この輝かしい異世界には不必要。

彼女の中では、琥珀は既に「死んだ」のではなく「消去」された存在だった。



「ふふ……麗香様もそう思いません? 勇者様の隣に、あんな不釣り合いなのがいなくて本当に良かった」

 柿沢可憐が、毒を孕んだ甘い声で同意する。



「当然ですわ。優輝様の輝きを曇らせるノイズなど、この世界には不要。……さあ勇者様、三日後には学園での生活が始まりますわ。準備はよろしいかしら?」 


吉祥院麗香が扇を優雅に畳み、優輝を見つめた。


「はは、みんな。……まあ、琥珀には悪いことしたけどさ。アイツがいなくなった分、これからは俺がお前を全力で楽しませてやるよ、燐火。任せておけ!」


 優輝はどこまでも天然に、かつての友を「死んだ過去」として処理しながら、燐火の頭を優しく撫でる。


彼にとっても琥珀は、自分の凄さを引き立てるための「脇役」に過ぎなかったのだ。



 ――そして三日後。 豪華な馬車は、王宮の重苦しい空気から解き放たれるように学園の正門をくぐった。


「見て! 勇者様よ! それに、あの方たちは……!」 


窓の外から響く生徒たちの熱狂的な歓声。


優輝は満足げにそれに応え、燐火は「兄という重荷」から解放された自由を噛みしめるように、勝ち誇った笑みを浮かべていた。 



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