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優輝side 少女たちとバルコニーにて


豪華な王宮の一室。バルコニーの下では、民衆が「救世主」の誕生に狂喜乱舞している。



「すごいな……。俺、本当に求められてるんだな」

 優輝は自分の手のひらから溢れる全属性の魔光を見つめ、どこまでも無邪気に笑った。


 その背後から、甘い香りを漂わせてレーア王女が近づき、彼の腕を絡めとる。


『ええ、もちろんですわ。あなたこそが、この大陸を救う希望……いえ、私の、たった一人の騎士なのですから』


「レーア様……」 

優輝が感動に瞳を潤ませる中、部屋のあちこちから、彼を独占しようとする乙女たちの熱い視線と声が飛んだ。


「ちょっとレーア様、抜け駆けは感心しませんわ! 優輝様の隣は、この吉祥院麗香こそが相応しいのですから!」 

扇を叩きつけ、プライドの高い麗香が割って入る。

その瞳は優輝の「全属性」というステータスに狂信的なまでの恋心を抱いている。



「あーあ、麗香様はおばさんくさーい。お兄様、そんな人より私のことだけ見てればいいんだよ? ね?」 優輝のもう片方の腕に、胸を押し当てるようにして抱きついたのは燐火だ。 


彼女は優輝に夢中になるあまり、兄である琥珀のことなど、とうの昔に記憶のゴミ箱へ捨て去っていた。



「……ふふ、争ってばかりでは優輝様が困ってしまいますよ? それより、今日もまた魔法の訓練おしおきをしてくださるのでしょう……? 私、優輝様の魔力に打たれるのが、何よりも楽しみなんです」

 柿沢可憐が、うっとりと頬を染めながら優輝の足元に膝を突いた。



「はは、みんな。俺を取り合わなくても大丈夫だって。俺には、お前たち全員を守る義務がある。……俺についてくれば、絶対に幸せにしてやるからさ!」 



優輝は三人を引き寄せ、輝くばかりの笑顔を向けた。その「天然」ゆえの無自覚な傲慢さに、少女たちはますます熱狂の渦に飲み込まれていく。



(……フフ、単純な男。そして、それ以上に御しやすい女たち) 


レーアは冷徹にその光景を眺めていた。

この「天然の勇者」と「盲目的な狂信者」の群れ。



これならば、魔王討伐という大義名分の裏で、大陸全土を支配する駒として完璧に機能する。




「そういえば、一緒にいたはずの琥珀たちの行方はわかったのか?」 


ふと思い出したように優輝が尋ねる。

燐火は、実の兄の名を聞いても「え、誰だっけそんな人」と鼻で笑うだけだった。


『……残念ながら、あの方たちは魔力が低すぎたせいで、転移の衝撃に耐えられず……』

「……そっか。アイツら、運がなかったんだな。琥珀には悪いけど、俺がアイツらの分までこの世界を救ってやるよ! 燐火、お前もお兄さんのことは忘れて、これからは俺を本当の兄貴……いや、それ以上の存在だと思って頼っていいんだぜ?」


「……っ! 優輝くん、大好き! 本当にお兄ちゃんなんて、いなくて正解だったよ!」 



眩い光を放つ全属性の魔法。 それは救いの光か、あるいは破滅の引き金か。 


自分の背後で、欲望と冷酷さを隠そうともしない女たちの瞳に気づかないまま。 優輝は、彼自身の正義という名の暴走を開始するのだった。


 ――そして翌日。 その「英雄」の姿は、巨大な魔導水晶を介した映像――『魔導ビジョン』によって、ローズマリン学園の隅々にまで届けられていた。

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