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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第83話:その魔王は未来の腹心に覇道を託す。~交わる大陸と島の軌跡~

【前回までのあらすじ】

 エスペル島へと向かう夜の飛行艇『アルゴス』。


 船内では、ヘギルとララノアの元へ訪れたマクマリスは、かつての「敗北の世界線」で自爆した二人の天才に対し、「意地でも生き残れ」と静かな決意を告げる。


 憧れのコーヒー『ミッドナイトブレンド』の香りに包まれながら、種族を超えた奇妙で温かい連帯感が三人の間に生まれるのだった――。

 アレフ王国の王城にある『円卓の間』。

 かつて魔族、エスペル島の五カ国間の争いを鎮め、盟約を結んだ神聖なこの部屋に、再び島の指導者たちが集結していた。


 上座に立つのは、漆黒のマントを身に纏った魔王マクマリス。


 彼が重厚な声で沈黙を破った。

「報告する。……帝国と連邦は、機械生命体を倒すまでの『休戦条約』を正式に締結した。長きにわたり戦争を続けていた両国は、今や我々の頼もしい友軍だ」


「おおっ……!」

 円卓を囲む王たちの間から、大きなどよめきと深い安堵の吐息が漏れた。不可能と思われていた大陸の二大勢力の和解。それだけでも、マクマリスの功績は計り知れない。


 マクマリスは手でざわめきを制し、淡々と続ける。

「現在、大陸の鉄鋼共和国では、機械生命体用に考案した新型の武器や装甲の量産を進めている。順次、この島にも納品する予定だが……その代わりに、各国には生産に必要な資源や人材の協力をお願いしたい」


「もちろんだ。島の総力を挙げて協力いたしましょう」

 アレフドリア十五世が深く頷き、他の王たちも同意を示した。


 王たちの了承を確認したマクマリスは、視線をアレフドリア十五世へと向けた。

「アレフドリア王。今回、ロイ王子の姿が見えず、心配かとは思うが……」


「うむ……。顔を見せぬから、大陸で何かあったのではないかと、案じておったところだ」

 老王の顔に、父親としての不安がよぎる。


「安心してくれ。ロイ王子は大陸で、神話の古竜・シャヴォンヌと契約を果たし、見事『ドラゴンライダー』となった」


「なんとっ!?」

 円卓の間に、先ほど以上の激しいざわめきが起きた。伝説の竜騎士の誕生は、島にとって最大の吉報である。


「それは、誠か……」

 アレフドリア十五世の声が震えた。


「事実だ。現在、ロイ王子は大陸に残り、さらなる成長のためにオウカの剣聖や、帝国の四天王から直接修行を積んでいる。顔を見れるのはしばらく先になるが、元気にしているから安心してくれ」


「おお……そうか。元気で、そして強くなっているのであれば、それで良い……!」

 老王は目頭を押さえ、深く感謝の意を示した。


 場が和んだのを見計らい、マクマリスは次々と具体的な指示を飛ばし始めた。

「クリアの長老よ。シルフは大陸で『雷属性付与(エンチャント)』の高度な技術を習得した。クリアのエルフたちは彼女からその術を学び、エスぺル島全軍の武器に雷の魔力を込められるようにせよ」


「承知いたしました。ただちに取り掛からせましょう」

 クリア長老が深く頷く。


「ゴンドラ王国には、この設計図を渡す」

 マクマリスが羊皮紙の束をテーブルに滑らせた。

「未来の……いや、大陸の天才職人が作った特注の『魔力吸収斧』のデータだ。これを複製し、ドワーフ兵全員に配備してくれ」


 ゴンドラ王が設計図を受け取り、その精緻な回路図に目を丸くした。

「こ、これは凄い……! 我が国の技術を遥かに超えておる。これほどの物を描く職人に、ぜひ一度お会いしてみたいものだな」


「そうか。その願いは、すぐに叶うぞ」

 マクマリスが薄く笑い、扉の方へと視線を向けた。

「入ってこい」


 重厚な扉が開き、マクマリスが大陸から連れ帰った三人の人物が円卓の間へと足を踏み入れた。


「紹介しよう。ドワーフ鉄鋼共和国の長、ヘギル殿。ネクロゴンドの長、アルフィリオン殿。そして、連邦議長の秘書官を務めるララノア殿だ」


 エレノア連邦共和国の有力者たちの突然の登場に、島の王たちは息を呑み、室内の空気が一気に張り詰めた。

 だが、その緊張を真っ先に打ち破ったのは、コック帽のような帽子を被り、葉巻をくわえたヘギルだった。


「ガハハハ! ゴンドラ王。その斧を考案したのは、なんと未来の俺だ!」

 ヘギルが金歯を見せて笑い飛ばす。


「お、お主だったのか……! なんて奇抜な格好をしたドワーフだと思っていたが……」


「あんたのところのガガンって奴にも、似たようなことを言われたけどよ。今回は商売抜きで、命がけの仕事をしに来てやったからな! 同族同士、よろしく頼むぜ!」

 ヘギルの屈託のない豪快な笑いに、ゴンドラ王も思わず破顔した。


 続いて、知的な眼鏡をかけたララノアが一歩前に進み出た。

 彼女は完璧な所作でドレスの裾をつまみ、優雅に会釈をする。

「連邦議長秘書官のララノアと申します。我が連邦の持つ魔導工学の知識が、少しでも皆様の防衛の助けとなれば幸いです。今後とも、お見知りおきくださいませ」


 その洗練された外交術と理知的な微笑みに、王たちは「おお……」と感嘆のため息を漏らし、彼女への警戒心を解いた。

 しかし、最後に口を開いた男が、再び場を凍りつかせた。


「……この島にも、墓地があるはずだ」

 青白い肌をしたダークエルフ、アルフィリオンが、生気のない瞳で王たちを見回した。

「私は来たる決戦に向けて、良質な『(むくろ)』を収集している。使っていない死体を提供してくれるのであれば、ぜひご協力いただきたい」


「なっ……!?」

「死体だと!?」

 円卓の間に、戦慄と嫌悪のざわめきが広がった。死者を冒涜する行為は、どの国でも忌避(きひ)される。


 マクマリスがすかさず補足を入れた。

「アルフィリオン殿は、大陸屈指の死霊術の使い手でな。生者の盾となる『アンデッド兵』の作成を進めているのだ。倫理的な面から、色々と忌避する思いはあるだろうが……圧倒的な物量を持つ機械生命体との戦いにおいて、彼らは絶対に『恐怖』を感じず、疲労も知らない必要な戦力だ。……どうか、大局を見てご理解いただきたい」


 重苦しい沈黙が辺りを包んだ。

 死者の尊厳か、生者の未来か。


 暫しの葛藤の後、静寂を破ったのは砂漠の民、ドーザの代表だった。

「……分かった。我が国の戦士たちの骸を提供しよう。生ある者たちを救うためだ、彼らも納得するだろう」


「それは助かる。彼らの生前の力を、有効に使わせていただこう。……他の国はどうだ?」

 アルフィリオンが淡々と問う。


「……アレフの騎士たちの骸も、使ってくれ。背に腹は代えられん」

 アレフドリア十五世が苦渋の決断を下す。

「我々ガイアス王国も、実験中の事故で亡くなった者たちの骸を提供しよう」


 しかし、土と自然の摂理を重んじるゴンドラ王とクリアの長老は、下を向いたまま協力は拒んだ。

「……まぁいい。これだけ協力していただければ、十分な数が揃う」

 アルフィリオンはそれ以上追及しなかった。


 マクマリスは、科学の国・ガイアス王に向き直った。

「ガイアス王。こちらのヘギル殿と『技術提携』を結んでくれ。お互いの足りない部分を補完し合えば、両国の技術力は飛躍的に向上するはずだ」


「うむ、了解した。異存はない」

 ガイアス王が力強く頷く。


「それと、例の海底を探索するための『潜水艇』の進捗はどうか?」

 マクマリスが問うと、ガイアス王は途端に申し訳なさそうに顔を曇らせた。

「それが……深海の水圧に耐えうる素材が見つからず、未だに頭を抱えていてな。装甲がひしゃげてしまうのだ。すまぬ……」


「謝る必要はない」

 マクマリスが自信に満ちた笑みを浮かべる。

「実は、潜水艇の装甲に使うための『耐圧素材』を用意してある。我々が乗ってきたアルゴスで、大陸のガスピ湖底から運び込んだ特殊鉱石を使うのだ」


「ガスピ湖の鉱石? そ、その鉱石で水圧の問題が解決すると!?」

「その通りだ。こちらのヘギル殿の目利きと助力によるものだ」


 ガイアス王が感極まったように目を丸くした。

「なんと……! 大陸の技術と素材、そしてヘギル殿たちの頭脳があれば、百人力ではないか!」


「もう一つ。開発を進めている魔導鎧(パワードスーツ)の出力制御について、ヘギル殿とララノア殿がガイアス王に相談があるそうだ。時間を作って、彼らの話を聞いてやってくれないか」


「もちろんだとも! こちらからも、大陸の技術について聞きたいことは山ほどある。ぜひお願いしたい!」

 ガイアス王は、技術者としての好奇心を隠しきれない様子で身を乗り出した。


 全ての指示と手配を終え、マクマリスはバサリとマントを翻して立ち上がった。

「私はアルフィリオン殿と共に、これからしばらく『魔界』へ戻る。……大一番の前に、やらねばならん『準備』があるものでな」


 マクマリスの言葉に、先代魔王ガングダードの復活という真の意図を知るララノアとヘギルだけが、微かに表情を引き締めた。


「魔王殿が不在の間、何かあった時はどうすれば?」

 アレフドリア十五世が尋ねると、マクマリスは傍らに立つ美しい秘書官へと視線を向けた。

「何かあった時は、こちらのララノア殿に話をしてくれ。彼女の頭脳と判断力は、私が保証する。実質的な島の防衛指揮は、彼女に一任する」


 島の王たちの前で、マクマリスは絶大な信頼を口にした。

 そして、マクマリスはララノアの目を真っ直ぐに見つめた。

「……後のことは頼むぞ、ララノア」


 ララノアは眼鏡の奥の瞳をわずかに揺らしたが、すぐにふっと柔らかな笑みを浮かべ、完璧な淑女の礼(カーテシー)で応じた。

「お任せを、魔王様。貴方が帰還されるまで、この島の計画は、私が完璧に管理してお見せしますわ」


 それは、未来の秘書官と魔王が、時を超えて確かな主従の絆を結んだ瞬間だった。

【次回の予告】

「『マクマリスの期待』という『借り物の志』では、鉄は斬れない!」


 舞台はオウカの竹林。剣聖・源流から「普通の剣で鉄塊を斬れ」という試練を与えられたロイは、全く歯が立たず刃をボロボロにしていく。


 「マクマリスの期待に応えたい」と焦るロイに対し、源流は「誰かに言われたからという『借り物の志』では何も斬れない」と冷酷に修行の打ち切りを宣告してしまう!


 己の未熟さに打ちのめされ、あてもなくハーフリング領へと流れ着いたロイ。タフリン王の温かいスープと、「武器を持たない彼らなりの戦い方」に触れた時、立ち止まった王子の心に新たな光が宿るのか――?


 借り物の志と、ハーフリングの食卓。

 第84話は、明日の21時40分更新です!


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