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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第71話:その白竜は試練を省略する。~引き継がれた絆~

【前回までのあらすじ】

 白竜シャヴォンヌが眠るガスピ湖へ向かう出立の朝。

 覇王アンドレアの口から、長きにわたる泥沼の戦争の「真実」が語られた。


 平和を望んだ妹エレノアの死。そして、その死を利用してアンデッド兵を操り、連邦を支配したディネルースの黒い野望。覇王は世界を敵に回してでも、その巨悪を討とうとしていたのだ。


 覇王の無念と亡き妹への想いを背負い、ロイは決死の覚悟で湖へ降り立つ。

 ガスピ湖の湖畔に降り立つと、その白竜は待っていた。


 鱗の一枚一枚が真珠のように輝き、その瞳はサファイアのように深く澄んでいる。優美でありながら、周囲の空気を支配する圧倒的な威圧感。まさに「貴婦人」と呼ぶに相応しい佇まいだった。


 声ではなく、直接脳内に響く美しい思念で、シャヴォンヌが語りかける。

『……久しぶりですね、カーラ。そして、ロイ』


「えっ?」

 カーラが驚きの声を上げる。

「お久しぶりです、シャヴォンヌ……彼をご存知なんですか?」


 ロイも思念にドギマギしつつ、慌てて頭を下げた。

「ど、どうして知っているんですか? 僕は初めてお会いするはずですが……」


 シャヴォンヌは静かに瞬きをした。

『貴方には、既に別の世界線で会っています』


「別の世界線……」

 カーラがハッとする。

「未来から来たという魔王が言っていました。未来ではロイがシャヴォンヌと契約していたと」


『その通りです』

「シャヴォンヌも未来から来たのですか?」


『そうではありません。ですが、高位の竜は時空の(ことわり)を超えて記憶を共有するのです』

 そう言うと、シャヴォンヌが静かに顔を寄せた。


 サファイアの瞳が、ロイの魂の奥底まで射抜くように見つめる。

『……どうやら貴方は、あの時のままのようですね』


 思念の声に、懐かしさと慈愛が滲む。

『非情になれず、裏切れず、安寧にも浸れない。貴方は不器用で、愚直なほどに人間らしい人』


 ロイは固まって動けない。その言葉は、かつて試練の中で突きつけられた自分の「弱さ」であり、同時に肯定された「強さ」でもあった。


 シャヴォンヌがゆっくりと頭を垂れた。

『……良いでしょう、ロイ。貴方のその魂の在り方、再び私が背負いましょう』


「ちょっと待ってください!」

 カーラが慌てて声を上げた。

「試練はどうしたのですか! 契約の儀式は?」


 シャヴォンヌがカーラに流し目を送る。

『試練なら、前の世界線でやっています。魂の色が変わっていない以上、二度は不要です』


 そう言うと、シャヴォンヌはロイに向き直り、厳かに宣言した。

『我が名はシャヴォンヌ。今日より私が、貴方の翼となります』


 ロイがおずおずと手を伸ばし、白竜の鼻先に触れる。

 カッ!

 眩い光が二人を包み込んだ。契約の証である紋章が、ロイの右手の甲に焼き付けられる。


「よく分からないけど……ありがとう、シャヴォンヌ」

 ロイが微笑むと、シャヴォンヌはカーラの方を向いた。

『我が主は帝国に仇をなす者ではありません。……その物騒な物を主に向けることがないよう、お願いしますね』


 カーラの顔が引き攣る。彼女の手は、無意識のうちに「強酸」が塗布された二振りの短剣に伸びていたのだ。

「仰っていることが分からないのですが……」


『密命……そう言えば分かりますか?』


「……ッ」

 カーラが息を呑む。

 ――シャヴォンヌとの契約が、帝国に害する結果になると判断した場合は、その場で斬れ。

 それが、覇王から下されていた裏の命令だった。


 だが、ロイはキョトンとして首を傾げた。

「密命? カーラさん、僕の付き添いだけじゃなくて、他にも仕事があったんですね。四天王って大変だなぁ……」


 そのあまりの純粋さと鈍感さに、カーラは脱力し、短剣から手を離した。

「……はぁ。本当に、あんたって奴は」


 彼女は呆れつつも、どこか安堵した表情でシャヴォンヌに一礼した。

「参りました。覇王様にはその旨、お伝えいたします。『新たな兄弟を歓迎する』と」


 湖面に風が吹き抜け、新たな竜騎士の誕生を祝福した。


    ◇

 

 帝都アンドレアの広大な演習場では、土煙がもうもうと舞い上がっていた。


 帝国と連邦の兵士たちが合同で、機械生命体との決戦に向けた激しい訓練を行っている。かつては血で血を洗う敵同士だった両陣営が、共に汗を流す史上初の光景。演習場の外周には、歴史的瞬間をカメラに収めようと、多数の報道陣が詰めかけていた。


「ほらほらほら! 腰が入ってねえぞ!」

 グラウンドの中央で、帝国四天王の一人であり陸戦部隊総隊長を務めるウルスヌスの怒号が響き渡った。

「そんな情けない姿を連邦のひ弱なお坊ちゃん兵に見せて、恥ずかしくねえのか! 帝国の誇りを見せろ!」


 その光景を、木陰から見学していたエスペル島使節団のガガンは、隣にいるアレフ兵とドーザの戦士に話しかけた。

「帝国の訓練はなかなか激しいな。アレフやドーザじゃ、ここまではやらないんじゃないか?」


「力こそが正義の国らしい、凄まじい熱気ですな」

 ドーザの戦士が圧倒されたように頷く。


 アレフ兵も苦笑いしながら続いた。

「訓練で毎回ここまでやってたら、本番までに体を壊してしまいそうです。……しかし、あの巨躯(きょく)の熊の獣人、相当強いんでしょうね」


「ああ。あのデカさで動きも速い」

 ガガンが腕を組むと、アレフ兵が声を潜めて言った。

「噂では、戦場で腕を切り落とされても、もう片方の腕で笑って殴り返してきたとか……」


「何っ!? とんでもない奴だな!」

「まあ、今両腕がありますし、噂の一人歩きでしょうけど。でも、そんな恐ろしい噂が立つほどですから、相当の手練れだと思いますよ」


 そこに、連邦の代表格であるオウカの長・源流を伴って、覇王アンドレアが視察にやってきた。

「誰かと思えば、エスペル島の使節団の面々じゃないか。どうだ、我が国の演習場は?」


 ガガンたちが慌てて立ち上がり、頭を下げる。


「この設備を見るだけで、いかに軍事に力を入れているかが一目瞭然です」

 アレフ兵が答えると、アンドレアは満足げに頷いた。

「我が国の評価基準は『強いかどうか』、それだけだからな。力ある者が上に立つ。単純明快だ」


「……力だけでなく、内面も評価すべきだ」

 源流が、冷や水を浴びせるように静かに言い放った。


 アンドレアが眉を寄せる。

「内面なんて、どうやって比べるんだ? 目に見えないのに、比べようがないだろうが」


「やりようはいくらでもある。力だけで評価するから、あのような『脳筋』が隊長になる。奴ではろくな指示もできまい」

 源流の辛辣な言葉に、アンドレアは顎をさすった。

「まあ、確かにあいつは突っ込むことしかできないが、それがあいつの良さでもある」


「下につく者たちが不便極まりない」

 一歩も引かない源流に、アンドレアはニヤリと笑った。

「んー。じゃあお前、あいつと手合わせしてみるか? 俺は何も考えずに奴を四天王にしたわけじゃないってことが、身をもって分かるはずだ」


「よかろう。四天王の実力、いかほどのものか確かめてくれる」


 こうして、急遽グラウンドの中央が空けられ、帝国四天王ウルスヌスと、連邦オウカの剣豪・源流の試合が行われることになった。

【次回の予告】

「大陸最強の『硬度』vs『切れ味』! 勝負の行方は――!?」


 帝都の演習場に轟く、局地的な地震と衝撃波。

 筋肉に魔力を練り込み、オリハルコン並みの硬度を誇るウルスヌスの「金剛体」の前に、源流の必殺技『無想・九頭龍』すらも傷一つ付けられない!


「硬えのよ。俺に傷をつけられたのは覇王様だけだ」


 ニヤリと笑う剛腕の熊に対し、連邦最強のサムライは静かに息を吐き――本気の一閃を放つ!

 舞い散る血しぶき。地に落ちた巨大な鎚と、ウルスヌスの右腕。

 勝負ありか!? と誰もが思ったその瞬間――!


 剛毅ごうきなる盾と、斬鉄の剣。 

 第72話は、明日の21時40分更新です!


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